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つ」とお思いですか。
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昆虫は体を小さくして数を増やすことによって生きる生物です。すなわち、数多くの個体(個々の虫)の死を当然のこととして予定しなが
ら、生き延びた個体に
よって種を維持しているのです。とくに、シロアリなどの社会性昆虫ではこの傾向が顕著であり、個体の死を恐れません。むしろコロニーや種
全体にとっては、 個体の死は生き残るための手段(あるいは情報源)にすらなっています。
統合生物であるシロアリは、つねに集団として新しい個体を生産する能力(生殖能力)を持ちながら活動しています。 だから駆除とは、コロニー全体を死滅させるか、個体の生産を完全に止めさせ、統合生物としてのシロアリを死滅させることなのです。どれだけ多量の シロアリ個体を殺しても、繁殖能力が残ってしまえば駆除とは言えず、しばらくすると再びコロニーは再生します。 また、予防的に薬剤を処理した場合でも、殺虫がすなわち侵入阻止という意味ではなく、多量の死体をかき分けるように蟻道ができることも 往々にしてあるのです。だから、殺虫力さえあればどんな物質でも薬剤として適しているというわけではないのです。 逆に、居住者の体質など特殊な事情を考慮してふつう薬剤として使用されないもの(例えば石鹸液など)を使用して駆除に成功した場合、そ の物質は薬剤とし て利用できたことになります。しかしそれは技術者の判断が基礎にあるからできたことであって、その物質が一般的に薬剤として利用できるわ けではありませ ん。
駆除にあたって、建物を自由に破壊してもいいのなら別ですが、実際はできるだけ建物に傷をつけずに処理することが要求されます。 もちろん、シロアリのほうから「さあ、薬剤を振りかけてください」とすすんで整列してくるわけでもありません。 すなわち普通の現場では、建物の構造など諸条件により、人間は常にシロアリのすべての個体に同時に薬剤を施すことはできないし、 多くの場合、処理時にはほんのわずかな数の個体にしか施薬できないのが普通です。
殺虫剤としての薬剤はすべて毒性を備えています。ということは、すべての薬剤は使用法を誤ればどれも人間生活を危険な状態にします。 「安全な薬剤」という のはありえません。天然由来のものも含めて、人間が自身のために生み出した殺虫剤を「危険なもの」と「安全なもの」に分類するのは愚かな ことです。また、 毒性データや主成分の性質だけが安全性の基準でもありません。 シロアリの生息状況に合わない薬剤を「安全だから」といって大量散布すれば、必ず目標以外の生き物に影響します。今現在問題がないから といって大量散布を 放置すれば、その薬剤は必ず将来社会的な批判を浴びて使用できなくなります。そして、「より安全」な薬剤になればなるほど、シロアリの生 息状況に合わなく なり、よりいっそうの大量使用が求められ、悪循環となるのです。 逆に、シロアリの生息状況に合った薬剤・剤形なら、薬剤使用量を必要最低限に抑えることもでき、「安全な薬剤」の大量散布よりもはるか に目標外への影響を削減できるのです。 つまり、シロアリ対策の各場面での最適な薬剤の選択肢を失わないよう、個性ある薬剤を守る必要があり、それこそがシロアリ対策での薬剤 処理の安全性確保の条件なのです。そしてその第一歩は、マニュアル式の大量散布、大量設置をやめることにほかなりません。
シロアリ対策はシロアリの全滅を行うことではありません。生態系を維持しながら、人間が駆除を通じてシロアリとやりとりすることです。 目標となるシロアリコロニー以外は殺してはならないのです。 もちろん、場合によっては一定のエリアのシロアリの生息を空白にすることを否定するわけではありませんが、いつでもどこでも同じ対応を するのでなく、その場所、その被害に具体的な診断を行い、最適な方策の採用こそ本来の駆除のあり方です。 とくに、ヤマトシロアリのような分散型のシロアリでは、多くの場合家屋の外のシロアリコロニーは家屋の被害に関与していません。つま り、まだ駆除対象となっていないシロアリであり、被害に関与していない以上、むしろ敷地内の土壌生物として生息が許容されるべきです。 ヤマトシロアリの被害現場のほとんどは、家屋の一部分に被害があるだけであって、個別にそこを処理すればすむし、現にそういう対応で問 題は起きていません。ましてや蟻道が露出する床下の被害では非常に単純な形で駆除できます。 集権型のイエシロアリの場合でも、巣系(巣のつながり)が明らかな場合は、わずかな処理で根本的駆除は可能です。 しかし現状としては、「目前の駅にタクシーで遠回りする」ような「革命的防除システム」がもてはやされる傾向もあります。 |
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