シロアリ対策の基本は駆除

シロアリ対策の基本は駆除です。予防でもなければ「バリアの構築」でもありません。駆除技術があるからこそ過不足のない適切な予防措置が実施できるのです。

駆除技術はシロアリとのやりとりの中からのみ生まれる

駆除技術はどんなに知識を習得しても得られません。が、仙人の修行のように「凡人に得られない」ものでもありません。多少の適性はあっても、ほとんど誰で も駆除現場で一定期間真剣で前向きにシロアリに接することで技術は得られます。この点では他の分野・産業でも同じですが、どういうわけかシロアリ対策の世 界では、ごく当然の実践的技術習得ではなく、マニュアル的な資格取得ばかりがもてはやされます。
技術とはやり方や手段ではなく、判断力を意味するのです。

薬剤や手段は技術者の判断なしには生きない

駆除現場では万全の処置をしたつもりでも被害が再発したり、シロアリが生き残ることもあります。また、思うとおりの処置ができないことも往々にしてあります。
そうした場合には、さまざまな判断が下されます。たとえば、「翌年の羽アリの位置を確かめてから処理する」とか、「とりあえず部分的に被害を抑えながら根 本的な処置を日延べする」など多種多様な判断です。そして、そうした個々の場面に適用できる性質の薬剤や手段が選択されます。
そういうときには、オールマイティーの薬剤よりも、むしろ部分的、一時的、一側面的に効果が明らかな薬剤のほうが適している場合もあります。
また、いかなる研究機関によって試験データが付与された薬剤でも、現場の要求に応えられない薬剤はシロアリ薬剤としては失格なのです。

「薬剤があるからバリアになる」
現場では通用しないこともある


シロアリと毒性物質とはつねに拮抗しあっています。毒性物質がシロアリよりも強いときはシロアリは侵入できません。逆に、シロアリのほうが強いときは毒性物質をかじりながらも突破します。
これは、つねに化学物質で自らを防御している生木とシロアリの関係にも似ています。
また、こうしたことはほとんどすべてのシロアリでも同様です。
さらにこのことは、薬剤バリアのみならず、一部の物理バリアについてもいえるのです。

右の家(および同時期に建った数棟)では、5年間にわたって毎年土壌処理が繰り返されましが、そのたびに処理土壌はいとも簡単に突破され、ついに工務店は大改修を余儀なくされました。すなわち、薬剤処理はまったくバリアになっていなかったのです。
しっかり塗ったはずなのに
さんざん薬剤を散布した挙句、いなくなったのはシロアリ業者のほうだった
防蟻剤が確実に処理してある浴室の壁に平気で蟻道を伸ばしたイエシロアリ。
もちろん土壌処理もしてあります。
(築5年の民家)


駆除経験のない人によって開発された「防蟻資材」は無意味なものが多い。

とくに最近は薬剤に頼らないでシロアリ対策を行う傾向が強くなっているので、建築関係の雑誌には「シロアリ対策」をうたった資材が数多く見られるようになりました。
しかし、駆除経験がない人によって開発されたものの中には、あきれるようなものが目立ちます。
こうした資材は、たしかに理屈上ではシロアリはそこを突破しにくいものとなっていますが、ベタ基礎で点検可能な床下に設置してもほとんど無意味に近く、実 際はそうした資材を敷きこむことのできない土間部分から侵入されるのです。もちろん売る側は設置した部分以外は責任を持たなくてもいいのでしょう が、シロアリ対策はあくまで家全体が対象です。「シロアリ対策用」と信じて設置した人にとってはいい迷惑です。
たとえば、床下全体に炭の液を塗り、炭の袋を敷き詰め、ヒバの土台に防蟻板とプラ束を使用しても、玄関ポーチや断熱材などから侵入するシロアリにはなんらかかわりのないことなのです。
つまり、資材は技術者の判断があってはじめて生きるものです。