俗論を常識だと思っているあなた

もう、そろそろ俗論ときっぱり手を切るべきです







築十年のヤマトシロアリ
防湿コンクリートで
芯まで薬剤漬けの「防蟻土台」
風通しは抜群で乾燥状態

この家の町内では
他にも同じ現象が起きている
これは湿気の過多よりも
シロアリの活性と
防湿コンの密閉性が
大きな要因となっている


シロアリがいるのは
湿気ではなく
歴史的経緯

ヤマトシロアリは
ほとんどの土地につきもので
それが建築によって
分断され、適応したものが
現存するシロアリ
イエシロアリは
直下または付近に
巣があるから生息する
--- どちらも
湿気が原因で発生しない



上の写真は内側の容器内の
ヤマトシロアリが
蟻道を垂らしたところ

右手には湿らせた餌があるが
蟻道と一体化したシロアリは
餌に向かわない
垂直に進んだ後に
左右に分かれ
一端が餌に達した時
シロアリは餌を確認し
その後、
餌に向かう蟻道ができた
すなわち、シロアリは
餌に向かって進むのでなく
環境の形に応じて進む
もちろん、蟻道から離れた
裸のシロアリ個体は
一目散に餌に向かった


炭を材料とした蟻道

炭が敷かれた床下にできた
ヤマトシロアリの「黒い蟻道」
むしろ、炭の水分保持能力は
シロアリには好都合だ
この家ではほかにも
多数の炭の泥線があった
「マイナスイオン」など
シロアリには何の影響もない


調湿剤の蟻道もある

ゼオライトの調湿剤を敷くと
シロアリはそれを利用した
つまりシロアリにとって
調湿剤はただの石ころ


換気扇も嫌わない

床下換気扇をつけても
それだけで
シロアリ対策にならない


ヒバ材なら大丈夫?

ヤマトシロアリによる
ヒバ材の被害
ヒノキチオールの有無など
シロアリにはどうでもよいのだ
触れたからかじった
ただ、それだけだ
かじる前からヒバだとわかるのは
高等動物の論理である


炭を嫌う?

炭に群がるヤマトシロアリ
「炭はシロアリを寄せ付けない」
などとなどというのは
インチキもはなはだしい
(写真提供・星野伊三雄氏)



炭化コルクの被害
被害を受けないかもしれない
と、過去には言われたが
やはりかじられる。



ヤマトシロアリの羽アリでも
走光性は明らか


網戸に挟まったまま死んだ
ヤマトシロアリの羽アリ
光(太陽光)に向かって
群飛したからこそ
こうした死に方をする



天井裏に作られた
ヤマトシロアリの蟻道

天井裏に作られた
ヤマトシロアリの蟻土

蟻土や蟻道を取り除くと
そこは明らかに濡れていた
もともとここは乾燥していて
シロアリの水源はない
ヤマトシロアリ以外に
誰が水を運べようか




換気扇は回っていても
湿気はまったく取れていない

カビや湿気があっても
木材の強度が健全なら
それでいいではないか



それほど珍しくない
ヤマトシロアリのきれいな加害

「ヤマトシロアリの
加害跡はきたない」
と平気で解説する本もある
そういう本を書く人は
本当に調べたのだろうか
ついでにいえば、
イエシロアリだって
食い跡がきたないものもいる



かなり発達した気泡状の
ヤマトシロアリの巣
(柱の下部が加工された)
「特別の巣をもたない」
などという人は
これをどう説明するのだろう
ようするに
コロニーの規模によっては
ヤマトシロアリでも
立派な巣を作るのだ


食べるのは
「通過のため」?

内部が食い荒らされた断熱材

陽に透かすと
活動状態がよくわかる
現場によっては断熱材中に
巣の構造ができ
幼虫や継承生殖虫もみられる
「たまたま通過されるだけ」
などという人は、
これをどう説明するのだろう。


ヤマトシロアリは
生木を食べない?

上はヒノキ科の立ち木に
侵入したヤマトシロアリ
(樹皮を剥いだところ)

シロアリと樹木は
化学物質を介して
せめぎあっている。
樹木の化学物質が弱まるか
シロアリの勢力が上回れば
シロアリは樹木に侵入加害する
ヤマトシロアリが
生木に侵入しにくいのは
コロニーの性格が分散型なので
樹木の化学物質を上回る
大規模集団になりにくいし、
小集団なら
あえてその材にこだわらずに
他の植物遺体でも生活可能な
ことが主な原因。


従来の薬剤処理は
巣を駆除できなかった?

こうした間違った主張は
ベイトシステム推進者が
さかんに主張。
しかし実際は、
従来の薬剤処理でも
生態を把握した技術者なら
イエシロアリでも
ヤマトシロアリでも
「追い出すだけ」ではなく
普通に巣を駆除してきた。
駆除できなかったのは
マニュアル式の大量散布
に頼った業者だけ。
アメリカなどでは従来
こうした大量散布しかなく、
「薬剤バリア」という
考えしかなかった。
そしてアメリカの主張が
そのまま翻訳されて
「巣を駆除できなかった」
などといわれる。
日本のシロアリ駆除への
知識がわずかでもあれば
こんな主張にはならない。


「シロアリの消毒」
というのはまちがい

消毒というのは
人間の免疫を補助するために
おもに細菌などの
微生物をコントロール
することです。
目に見えないものが対象だから
処理はある一定範囲を
薬剤や熱で処理するのです。
これに対してシロアリ対策は
薬剤を使用するといっても
シロアリの生態を利用して
彼らの一部のコロニーを殺し
種としてのシロアリと
対話するのです。
つまり、シロアリがいないか
被害の可能性のないところには
薬剤を処理しないのです。
「白蟻の消毒」などというのは
薬剤の大量散布と
シロアリ対策への無理解
を意味するだけ

けっしてシロアリ対策を
意味しません。
すなわち、シロアリ駆除業は
「消毒業」ではないのです。

さらにいうなら、
自然とやりとりする
シロアリ駆除は、
基本生活に関わる
第一次の生産活動であって
サービス業ではありません。
ただし、
薬剤散布請負業や、
床下産業などは
確実にサービス業です。


適度な湿気は
ありがたいもの

生き物はもともと
湿気の中から生まれ出た
乾燥の中から生まれない
適度な湿気は
人間にも、生物や木材にも
必要な要素。
多くの生き物にとって
湿気の維持は
食べることよりも大切。

木材が腐るというが
湿気があれば腐るのでなく
微生物がいるから腐る。
そこに腐朽菌がいなければ
あるいは低密度なら
木材は腐らない。
逆にそういう微生物は
空気の浄化など
有用な機能もある。
要はバランス。

もうそろそろ
乾燥至上信仰から
卒業すべきでは?

床下が乾いていればシロアリがわかない?

なんの根拠もない思い込みです。とくに住宅関係者の中にこうした思い込みが多いようで、 「湿気のない構造」とか「湿気を吸い取る物質」あるいは「湿気を抑える対策」がシロアリ対策だとかたくかたく信仰しているようです。しかし、シロアリが乾 燥を嫌うなどということはまったくありません。
シロアリの侵入の契機はなによりもシロアリがいるかどうかであり、家屋の構造が侵入に適した形状であるかどうかが最も重要となります。また、生物バランスや振動なども大きな位置を占めています。
「乾いてさえいれば大丈夫」という単純思考を根拠に「シロアリに強い家」が宣伝されたり、床下換気扇をはじめとする床下グッズがはばをきかせているのです。
一部には木材の含水率とシロアリの侵入についての論議もありますが、シロアリがつねに適応 しながら侵入する事を考えればまったく無意味な論議だといえます。つまり、木材が湿っているか乾いているか、シロアリはかじるまでわからないし、かじりだ したときにはそこに適応しているのです。そもそも、ヤマトシロアリによる含水率ゼロの物質(発泡系断熱材など)の被害もそれほど珍しくないのです。
また、一部の研究者では蟻道と一体化した自然のシロアリではなく、裸の個体を使った湿度実験によって、実際の習性とはかなりかけ離れた結論を導き出す傾向もあります。
「15℃以下、40℃以上でシロアリの活動が停止する」などというのもこうした中から生まれた間違った結論です。さらに床の高さと被害の数についての統計をシロアリの侵入の可能性にすりかえた議論も観察に基づかない思考方法の産物です。統計や試験結果をそのまま生態だと思い込むのは間違いです。
どうもシロアリを考える場合、ナチュラルヒストリーの立場が希薄になりがちで、現場の観察から離れた議論が横行しているようです。

隣でシロアリ駆除するとこちらに逃げてくる?

そんなことはありません。
日本に広く生息するヤマトシロアリ属のシロアリは、一つのコロニーの規模が小さく、その行 動範囲は(特殊な条件を除けば)数十センチから数メートルで、隣の敷地のシロアリはこちらに家があることすら知りません。それどころか、こちらの家の床下 で活動するヤマトシロアリですら頭上に家があることを加害しない限り知らないのです。
だいたい、駆除してコロニーを死滅させたのですから、こちらに来るというのも変な話しです。
また、一部にヤマトシロアリの行動範囲を数十メートルとする見解もありますが、これはヤマ トシロアリとイエシロアリの行動タイプの違いを無視した統計的な見解であって、事実とは一致しません。ヤマトシロアリ属においては、個体が混じりあうこと を根拠にひとつのコロニーだとみなすのは現場から遊離した議論です。
ヤマトシロアリ地域で、羽アリが自分の敷地から群飛すると「近所に迷惑が掛かる」と思って しまう人もいますが、これも間違った思い込みです。なぜなら、羽アリの生存率=営巣率は極めて低く、ほとんどのものが他の生物の餌になってしまいます。そ のうえ、羽アリの群飛は多くの場合同一地域では同一時刻に進行するのであって、自分の敷地以外でも群飛しているのです。むしろ、自分の敷地から羽アリを群 飛させたことによって、生態系の栄養バランスに大きく貢献したと思えばよいのです。
イエシロアリの地域では、巣を駆除できれば(すなわち駆除に成功すれば)全滅するし、失敗すれば薬剤がどれだけ撒かれたとしても隣から逃げない(巣の移動はあるが巣系の移動はない)のです。
同様に、庭先の切り株や花壇にシロアリがいる場合でも、ヤマトシロアリなら そのまま放置しても何一つ問題はありません。そこのシロアリはそこに適応しているのであって、わざわざ家に向かう必然性はないし、万が一家屋の基礎に到達 しても床下にもぐりこむきっかけはほとんどありません。だから庭に埋めるタイプの高額なシロアリのチェックツールは意味がないのです。(シロアリを観察し たい人は別ですが)
ただし、基礎外周に断熱材が貼り付けてある場合は一定の対策が必要です。また、イエシロアリでは庭にシロアリがいる場合は、巣の探知や継続的な監視が必要です。

床下全体に薬剤処理しないとシロアリが移動する?

シロアリ駆除はシロアリを死滅させるのですから、死んだものが移動するわけがありません。
イエシロアリでは巣系(巣のネットワーク)全体が一つのシロアリ集団ですから、これを駆除 すれば全体が死滅します。それは床下全体の薬剤処理を必ずしも意味しません。駆除のための投薬点は限られていて、多くの場合駆除では床下全体に薬剤処理は 不要となります(とくに予防を必要とする場合は別)。
ヤマトシロアリではコロニーを一つ一つ駆除していくことになりますが、シロアリのコロニーは一つの家屋では生息に偏りがあり、満遍なく生息することはまれです。したがって、ヤマトシロアリでも床下全体に処理しなければならないわけではありません。
全体を処理するというのは、一度の薬剤処理で数年間の保証書を発行するといういわゆる「シ ロアリ防除」の考え方であって、生態に基づくシロアリ対策では必要のないことです。実際、コロニーの駆除だけで全体に薬剤処理しない対策が始まってから 10年以上になりますが、薬剤散布していない部分にシロアリが発生して「モグラたたき」のようになっているということはありません。

床下の木材が腐るとシロアリを誘引する?

これもまちがいです。
たしかに統計的にいうなら床下でシロアリの活動が見られる確率は湿った床下の方が多いといえます。しかし、そのこととシロアリが家屋に侵入したり被害を引き起こしたりすることとは別です。
とくに、ヤマトシロアリの被害が「木材の腐朽と同時に起きる」などといわれてきましたが、そんなことはまったくありません。
シロアリは腐っていない木材を主に食料とするのであって、家屋内での生態においては腐ってしまったものをあまり好みません。そのうえ、蟻道や泥線の内部といったシロアリの生息域ではカビは抑制されうまく管理されているのです。
実際、床下の土台などをみると、褐色腐朽などで腐ってしまっている部分にシロアリの蟻道が多いとか集まっているなどとは、どれだけひいきめに見てもいえません。そして、同じ家屋の床下でも、水や土と直接する場所を除けば、むしろ腐朽の進行していない材にこそシロアリ被害や蟻道が目立つのです。
一部の本には木材不朽菌から抽出したある種の物質がシロアリを誘引すると書いてあります が、その根拠となっている実験をみてみると、蟻道や泥線を伴う自然のシロアリではなく、裸にされて敏感になっているシロアリ個体を使用しているのであっ て、これでは実験として成立していません。何度もいいますが、裸のシロアリはいないし、試験結果は試験結果であって、現実の家屋内の行動とは異なるので す。試験によってある種の腐朽菌の成分にシロアリが強く誘引されることが明白だとしても、試験結果をそのまま家屋被害に置き換えてはならないのです。
最近もアメリカのある学者は「シロアリの蟻道は腐っていない木材には見向きもしないのに、 腐っている木材には強く誘引された」といっていますが、これこそ現場を見ていない議論で、実際に飼育しているシロアリの蟻道は、腐っていない新しい木でも 数センチに近づけば木のほうに曲がってくるものです。実験室と異なり実際の多様で雑多な生息環境においては、ことさら特定の腐った木にだけ反応するわけで はないのです。
シロアリが家屋に侵入する決定的条件としては、まず十分な密度のシロアリがいるということです。いくら腐っても湿ってもシロアリがいなければ被害は生まれません。腐った木の内部や湿気のある土壌に「発生」するものではないのです。
もしも家屋の直下にシロアリがいるなら、湿気や腐りよりむしろ、床下温度や気密性が高かったり、他の生物の影響や振動がないというようなことのほうがシロアリを誘引するのです。
とくに、世界で最も北に住むヤマトシロアリ属は、冬場の高温域の分布にもっとも敏感なシロアリであるので、床下温度の高い家はヤマトシロアリを「呼び寄せる」ことになるのです。

床下にカビがあるのは異常?

一般的には異常ではありません。またシロアリを発生させるわけでもありません。しかし、生活空間までカビ臭いとか、床下全体がカビで覆われるほどだと何か対策が必要かもしれません。
ただし、そうした対策は「カビ取り剤を散布する」とか「換気扇をつける」「乾燥剤を撒く」 などといった安易な方法でなく、建築士や工務店とともに住環境の一部として構造的・材料的な対策が必要で、場合によっては床板合板をムク材に換えるとか床 下にビニールを敷くだけでいい場合もあります。
気をつけなければならないのは、一定範囲にカビがあるだけで異常であるかのようにいい、カビの毒性を部分的に誇張して脅す床下産業の説明です。彼らはただ床下機器や資材を売りたいだけなのです。
これまで「床下環境対策」の名の下にいかに不必要なものを消費者は押し付けられてきたかを思い返す必要があります。
たとえば築20年の家の場合、たとえカビがあったとしても、20年間何もなく過ごしてきたのなら、ここ数年でいきなりカビのために何か起きるわけではないので、定期的な点検を繰り返すだけで充分といえます。
しかも、カビというのは木材腐朽菌とは別の生き物であって、木材を腐らせるものではありません。ただ木材の表面に生息するだけです。
カビによる健康被害があるとするなら、それは床下のカビではなく、室内のクロスや化粧合板などの表面に生息するものや食品に生息するものです。
したがって、カビ対策が本当に必要な場合は、床下ではなく居住空間全体の調査が必要となります。

シロアリはコンクリートを溶かす?

シロアリは原始的な生物であって、人間のように好き嫌いはないうえに、高等生物のように食べ物を選り好みするわけでもありません。
シロアリは「触れたものをかじる」という遺伝的なプログラムによって行動しているのであ り、栄養になるとかならないとかいった判断をしていません。たとえ毒物に接触してもそれをかじり続け、コロニー全体の活動に影響しないかぎり、食べては死 ぬという行動を繰り返すのです。だから、コンクリートでも金属でも当然食べるのです。そしてそれは個体圧の低い平板な部分ではなく、どうしても個体が滞る 谷部や亀裂部ほど食べられるのです。
そしてどちらかというと軟らかなものほど食べられやすいのです。だからウレタンフォームなどの断熱材がよく食べられるのです。
ついでにいっておきますが、よく「シロアリはコンクリートを溶かす物質を分泌する」などという表現がありますが、そんなことはまったくなく、コンクリートに穴を開ける際にも大顎でかじって穴を開けるのです。
一部の本には「シロアリが蟻酸を分泌する」と書いてあるものもありますが、これはまったくの間違いです。世界のシロアリで蟻酸を分泌するものはいません。
また、一部の人は「通過するためにコンクリートに穴をあける」といいますが、シロアリはなんらかの見通しをもって行動する生き物ではありません。だからあくまで触れたものの形が決定的であって、その向うに木があるとかないとかというような判断をしません。

銅はシロアリを寄せ付けない?

誰がいいだしたのか知らないけれども、まったくの迷信です。一部の建築士はいまだにこの迷 信にとらわれているようですが、一度でいいから銅板のうえに敏感な裸のシロアリを放置してみればわかります。紙の上の行動とまったく同じです。ましてや蟻 道と一体となった自然界のシロアリではいわずもがなです。
実際、銅板を巻き付けた玄関の柱がかなりの被害に遭っていて、むしろ「銅板さえななければ こんな被害にならなかったのに」と思うことのほうが多いし、銅そのものの被害すらあるのです。だからこういう迷信にとらわれている建築士というのは現場を まったく知らない人だといえます。
ついでに言うなら、古代建築には柱の下部に銅板が巻かれたものがよく見られますが、これはすべて礎石の上にのせられたものであって、銅板によってシロアリの被害がないのでなく、礎石の上に乗っていることのほうが重要な意味をもっているのです。

炭や木酢液あるいはヒバ油でシロアリ駆除ができる?

まったくできないというわけではありません。シロアリに精通した技術者がシロアリの生息のしかたや生態に基づいて使用する範囲では駆除の一手段(あくまで部分的)にすることもできます。
しかし、よくいわれるようなやり方ではまったく駆除できません。また、こうしたものは千年 以上にわたるシロアリ対策の歴史に駆除手段としては一度として登場した事実はないし、さらに、これらが「シロアリに効く」としている現代の試験はすべて裸 のシロアリ個体を使用したものであって、自然界の統合生物としてのシロアリへの効果については根拠をもっていません。
炭についていうなら、シロアリは炭をまったく嫌いません。そのうえ炭にはほとんど毒性もあ りません。だからシロアリは炭をかじっても平気です。また、「炭が湿気を取るからシロアリが住みにくい」というのはまったく都合のよい思い込みで、前項で 述べたとおりシロアリは湿気や乾燥に左右されません。現実にも炭の敷かれた床下ですでに被害が出ています。
「炭から発生する遠赤外線が水分と結合してマイナスイオンを生み出し、これをシロアリが嫌 う」という説もあちこちで聞かれますが、これもまともな根拠が示されないまま、想像のようなものが一人歩きしているだけです。また、「マイナスイオン」と いう用語が、実在する陰イオンとは異なる怪しげな用語として使用されていることも目立ちます。
また、床下の割合低いところへ炭を敷くことにより、いっそう床下の空間が狭くなり、シロアリの侵入が容易になるという逆効果も現実にはよく見られます。
木酢液やヒバ油ですが、これらは直接裸のシロアリ個体に接触させればシロアリ個体は死亡し ます。これは食塩水や石鹸水でも同じです。しかし、こうした直接の刺激性こそがこれらの物質を駆除にむかないものにしているのです。社会性昆虫に対する駆 除剤は刺激的であってはだめなのです。これは駆除を考える場合のイロハです。
予防という面からいっても、蟻道と一体化した普通のシロアリは早晩こうしたもので処理され た部分を突破してしまいます。とくにイエシロアリ属では、巣の処理がない場合は、化学薬剤を毎年散布した薬剤漬けの土壌や木材でさえ通過するぐらいですか ら、いわずもがなです。もちろんかなり大量にこうした物質を使用すれば、コロニーの小さいヤマトシロアリ属にはある程度の予防もできると思いますが、臭い が化学薬剤よりも強烈な木酢液では居住者への影響を考えるなら問題があるし、ヒバ油も大量に使用すれば催奇形性があることがわかっています。
だいたいこういうものをうたい文句にしている「自然派」の業者や建築士ほどシロアリへの知識が恥ずかしいほど乏しく、化学薬剤を「自然物」に替えただけで「安全性」を強調し、相変わらず「防除」や「消毒」の立場に立って、薬剤に頼り切った大量散布を行っているのです。
-----炭についての関連ページ

ヒバやヒノキはシロアリに強い?

ヒバや一部の広葉樹はシロアリの被害程度が比較的低く、こうした材木を使用することでシロ アリ対策の一手段とすることができます。しかし、それはその木材だけのことであって、こうした木材のところでシロアリの蟻道が止まってしまうわけではない し、ましてや、まったく被害を受けないというのではありません。シロアリはそれらを加害しながら通過して床板や畳を食べます。つまり、ヒバなどの樹木の使 用はあくまでシロアリ対策の一手段に過ぎず、ヒバ材だから食べられないなどということはありません。
ヒノキは腐りにはある程度有効性がありますが、シロアリにはまったく有効でなく、むしろ被害がマツ・スギと並んでかなり目立つ樹種であり、場合によってはベイマツ以上に加害されることもあるのです。だから絶対にシロアリに強いなどと思ってはなりません。
また、現場では芯材も辺材も関係なく、芯材だから食べられなかったなどということはありません。
ヒノキがシロアリに強いという実験結果もありますが、これは単一のシロアリコロニー(それ も集権型のイエシロアリ)にマツなど他の樹種と同時に(つまり、選択可能な状態で)接触させた実験であって、たんなる嗜好の実験としては成立していても、 現実の家屋のシロアリ対策には適用できません。なぜなら、シロアリは侵入に際しては木材を選べないので、ヒバでもヒノキでも、とりあえずはその木材に適応するしかないからです。まして分散型のヤマトシロアリでは、コロニーの個性によってはマツ材よりもヒノキ材のほうが被害が大きい場合もあるのです。
一部の住宅メーカーや工務店のサイトで示されている「実験」のように、裸のシロアリ個体とヒバを接触させるというのは、シロアリを自然界の統合生物として扱っていないので、これも実験そのものが間違っています。
シロアリという下等な生物は、個体(それぞれの虫)に判断する能力を持ちません。触れたら かじるという遺伝的プログラムで行動しているのであって、どんな樹種でも、どれほど薬剤処理された木材でも、シロアリのプログラムに作用するような信号物 質を持っていない限り、とりあえずはかじられるのです。また、シロアリ個体は自分が生きるとか死ぬという意識もなく、活動の結果コロニー全体が生き残れば それでいいのです。だから、豪州ヒノキ(サイプレス)だからシロアリに食われないなどということはまったくありません。
実際の被害状況からいうなら、樹種よりもむしろその物質の硬さの方が大きく影響しているといえます。

ヤマトシロアリは水を運ばない?

これも迷信の部類に入るいいかたです。そして、「ヤマトシロアリは水を運ばない」というの は、「ヤマトシロアリは常に湿った場所に生息する」というもう一つの迷信の根拠にもなっているようです。しかし、最近ようやくこうした間違いが研究者に よって正され、イエシロアリにはあるがヤマトシロアリにはないといわれてきた体内の水嚢が発見されました。(ただそうした水嚢が水の運搬手段になっている かどうかは不明)
そもそもヤマトシロアリでもイエシロアリでも土壌性のシロアリは水源・餌場・居住区を包括 する形で蟻道や泥線でエリアを密閉し、そのなかをシロアリ個体がまるで単一の生物の血液のように循環している統合生物なのです。1頭のシロアリ個体は地下 やそれに代わる水源で水をのみ、作業をし、物質をかじるのです。あるいは、蟻道そのものが地下から湿った空気を導くパイプにもなっているのです。
だからヤマトシロアリがダンボール箱や畳などの乾燥したものを加害する場合には、必ず加害場所は濡れているのです。また、建築中の蟻道や泥線の先端は常に濡れているし、内皮構造をもつ幹線蟻道も常に濡れているのです。
ようするにイエシロアリ属もヤマトシロアリ属もまちがいなく水を遠方や高所に運ぶのです。 そして、ヤマトシロアリがイエシロアリと比べて高い場所への被害が少ないのは、一つのコロニーとして活動する個体数がイエシロアリに比べて少ないというの が最大の理由です。つまり、広いエリアを管理できる個体数がいるかどうかです。これは水平方向でも同じです。
だから、ヤマトシロアリでも偶然に個体数の大きなコロニーになった場合、長い蟻道を作った り、場合によっては「貯水施設」のある特別な巣の構造をもつこともあるのです。ただ、イエシロアリとの違いとして、分断などによるコロニーの独立性が高い ために、大集団になる可能性が低いことから、一般には活動エリアが狭いのです。
この点でも、一部の関係者は「乾燥に対する抵抗性の違い」という、主に個体の能力から解釈しようとする誤謬に陥っています。
ついでにいうなら、「イエシロアリは水を運んで木を濡らしながら食べる」などという説明が一部のサイトや本に掲載されていますが、べつに濡らしてかじっているわけではありません。そのまんまかじっているのです。
---- ヤマトシロアリの高所被害について Up!

ヤマトシロアリの羽アリは光に向かわない?

これは迷信のなかでも超一級品です。ヤマトシロアリは昼間太陽の光に向かって群飛するので す。イエシロアリのように月明かりや電灯に向かうのでなく、もっと強烈な太陽の光に向かうのです。どうしてそれなのに「光に向かわない」とか「走光性が弱 い」などといういいかたが通用するのでしょうか。
また、ヤマトシロアリでも何らかの原因で夕方群飛せざるを得ない場合や、密閉された屋内に群飛せざるを得ない時には、はっきりと電灯に向かって群飛します。
ようするに、程度の差はあるにしても、ヤマトシロアリとイエシロアリは群飛する時期が違うだけで、光に向かうということではまったく同じなのです。
だからこそ、天井裏の暗闇から群飛するヤマトシロアリの有翅虫では、一方では屋根の隙間の光に向かうし、他方では照明器具の取り付け部から見える光に向かうので、照明器具付近から這い出たように見えるのです。
もし光に向かわないというシロアリの有翅虫がいるなら是非とも教えて頂きたいものです。
このほかにもヤマトシロアリについての迷信はかなり多く、「蟻道の断面が丸い」「加害部分は汚い」「高いところは被害がない」「特定の巣がない」など根拠に乏しい作り話が専門性を要するシロアリ関係者、場合によっては一部の研究者のなかにも定着しているのです。

床下換気扇などの床下グッズはシロアリ対策に有効か?

はっきりとした具体的な目的を持って正しく利用するなら、シロアリ対策の一部とすることもできます。が、シロアリ対策と床下の環境改善とは範疇の異なるものです。
しかし、多くの場合「床下が乾くことはいいことだ」といった単純思考や、ひどい場合は「シ ロアリの予防になる」などといった根拠のない動機で設置されていることが多いのです。なかにはコンクリートの床下で換気扇がブンブンうなっていたり、ベタ 基礎に調湿剤が敷いてあったりする家もあります。屋根の上に屋根を作るようなものです。
また、家によっては換気扇を設置したために床下が腐ってしまったところもあります。つま り、湿気が極端に強い家では土地や家屋本来の事情によって湿気が生じていることが多く、もともと換気扇で湿気が取れないのです。こうした家に換気扇を設置 するとすれば少なくとも24時間連続運転が必要となるのですが、昼間だけの自動運転によって夜間は通風孔に蓋をした状態になってしまうのです。
いずれにせよ、具体的なシロアリの生息状況の把握ぬきにシロアリ対策関連機器のように考えるのは間違いであり、本質的にはシロアリ対策とは次元を異にする機器なのです。
また、「床下の湿気やカビが少ないほどいい」というのは、高温多湿に適応した日本の家屋(生物バランスを含む)では大きな考え違いです。

シロアリ駆除するとゴキブリもいなくなる?

ゴキブリの根源は床下だけに限らず台所の戸棚の裏や二階の部屋にすらあります。だからシロアリの駆除によってゴキブリはいなくなりません。
しかし、多くの場合床下に大量に薬剤散布するために、床下の昆虫類が全滅して「ゴキブリに も効いた」ように思えるだけなのです。とくに過去の仕様書どおりに油剤(99パーセント以上が揮発性のある溶剤)を使用する業者の場合は、昆虫の外骨格や 気門への影響が大きく、クモやムカデなども含め多くの生き物が死滅します。そしてその結果、床下の生態系のバランスが崩れ、ある種のカビが異常に繁殖した りするのです。
このことは決して喜ばしいことではなく、ゴキブリ対策の側からみても中途半端であるし、こういうことを肯定的にとらえることがシロアリ駆除での過剰処理の契機ともなっているのです。。
駆除の基本は”目標以外に影響を与えない”ということであり、むしろ「ゴキブリが減らない駆除」こそがシロアリ対策としては正しいのです。

外部通風孔に細かい防虫メッシュをつける意義は?

そんなものに意義はないし、つける必要もありません。ただちに撤去しましょう。
そもそも床下には多様な虫がいるべきであって、それを排除しようとすることは床下を封殺してしまうことになります。むしろ、普通の鋳物の網ですらない方がいいくらいです。また、そんなメッシュをつけても虫は必ず侵入します。
さらに、細かいメッシュにホコリが溜まれば風が通らなくなります。誰が考えたのか知らないけれど、愚かというしかありません。

ベイトシステムは環境にやさしい?

ベイト(毒餌)剤やベイト処理そのものはうまく使用すればシロアリ対策の重要な手段となり ます。昔から日本と中国には「寄せ木法」とか「誘殺法」というのがあるのです。とくにイエシロアリ属やキノコシロアリ亜科の駆除では、マニュアルではなく 技術者の診断に基づいて処理するならきわめて有効で適切な処理となります。
最近では、鹿児島の廣瀬博宣氏によって、イエシロアリの生態とうまく結びついたすぐれた誘殺法(ブリングシステム)も開発されています。
しかし、最近アメリカから導入されたベイトシステムやその亜流を一言で表すなら、駆除すべきコロニーを特定せずに、まだ「害虫」になっていないヤマトシロアリのコロニーも含めて、無差別にシロアリを殺し続けるシステムであって、家屋周囲の生態系に大きく影響します。
とくに日本のように家屋が密集している環境では、土壌生物への影響を考えれば、自宅から羽アリを出すよりはるかに近所迷惑です。
シロアリ対策とは個々のシロアリコロニーとやりとりすることであって、彼らの全滅を企てる ことではありません。庭先のヤマトシロアリは庭先の土壌を日々豊かにし、毎年幾多の生物に羽根アリという栄養分を提供しています。これをどうして「巣ごと 駆除」しなければならないのでしょうか。これからのシロアリ対策は「すべての生き物は意味があって生きている」ということが前提であるべきです。
だいたい、アメリカ式の発想はいつも「全滅」や「排除」が主体です。このシステムには、①駆除すべきコロニーとやり取りしない、②すべてマニュアルで行う、③ヤマトシロアリもイエシロアリも区別しない、という特徴があり、「防除革命」どころか、これこそまさにこれまでの薬剤大量散布の思想そのものなのです。
だからこそ、つい昨日まで有機リン系のクロルピリホスを売り込む上では世界で有数の薬剤メーカーが、そのままの体質でこのシステムの最大の推進者となりえたのです。
実際よく耳にするのは、玄関先がわずかにかじられた程度でこのシステムによって家の周囲全 体にベイトを設置してしまうという例です。ヤマトシロアリでは被害部だけ薬剤で処理すればコロニーを駆除できるし、イエシロアリでも巣系が把握できればわ ずか数グラムの薬剤で「巣ごと全滅」させられます。しかし、なかにはまったくシロアリの活動が見られない地域で「安全な予防」として漫然と行われている家 すらあります。
また、このシステムによるヤマトシロアリの公表されている駆除事例では、家屋からかなり離れたところにまでベイトステーションが設置してあります。これこそ人間の傲慢さの典型です。
さらにいうなら、このシステムを採用している業者は、「防除」業務の大部分をこの方式に転換しているのではなく、従来のマニュアル式薬剤散布業務も行っているのがほとんどですから、環境への負荷のエリアが地上だけでなく、地下にまで広げられたことをも意味します。
ようするに、化学物質の大量使用から脱した生活を求めようとするなら、こうした人間のエゴイズムからも脱皮する必要があるのです。「脱皮阻害剤だから安全だ」などと思って薬剤やシステムに頼りきった姿勢でいると、いつまでたっても大量散布思想や「防除」思想から正常に脱皮できなくなりますよ。

巣ごと駆除できる家庭用市販薬があるというが?

これもアメリカ式ベイトシステムと同じもので、それを素人にやらせるのが市販薬というわけです。
実際の有様はどうかというと、イエシロアリに対しては薬剤の設置場所がわかりやくシロアリ がアタックしやすいという点で場合によっては有効です。しかし、ヤマトシロアリ地域でよく見られるのはまったく意味のない場所にいくつも設置してあること です。これでは数千円も払って買った薬剤を捨てているようなもので、もったいない話です。
もちろん、シロアリ技術者の判断で使用するなら大きな効果をあげることもできますが、ヤマトシロアリ地域で適用できる現場はかなり限られていて、直接的なピンポイント駆除のほうがはるかに確実で無駄がありません。
今後も似たような「画期的」市販薬が「根源的に効く」とか「巣の中枢を壊滅」などという触れ込みで売り出されると思われますが、素人が使用する限りにおいては無駄な部分が増えるのは目に見えています。
実際の現場ではシロアリの蟻道がまったく見えないのに羽アリが出る(しかも築5年程度の新 居で)といった投薬点が見つからない現場が家屋の変化の中で増えています。こんな状態で居住者が「根源的に聞く」と信じて意味のない場所に投薬したとした ら、結果は詐欺にあったようなことになりかねません。
とにかくシロアリが出たら技術者に相談するのが一番の近道です。

安全な方法として熱やマイクロウエーブの利用は?

これは被害を受けている木材に熱をかけてシロアリを殺す方法です。この方法は材料の段階では利用可能ですが、既設家屋では困難です。
また、この方法は土壌と関係せず、コロニーが分散する乾材シロアリなどレイビシロアリ科のシロアリに対して行うものであって、ヤマトシロアリやイエシロアリといった土壌性のシロアリにはほとんど効果がありません。
アメリカあたりの資料では、大きなラッパ型の機械で家屋の壁に熱をかけている写真が、シロアリ駆除だといって紹介されることがありますが、これは乾材シロアリの駆除なのです。
とにかく、アメリカ式の考えは「一挙に」とか「全部」とか「効率的に」という「防除」スタイルに行き着くようです。

シロアリ薬剤は「農薬」?

一部の人々はシロアリ対策に使用する殺虫剤を「農薬」だといっていますが、これでは消費者 を欺くことになります。つまり、農薬とシロアリ薬剤の共通項(本質)は化学殺虫剤であって、一方の製剤名で他方を語るというのは、情報の発信としては不誠 実だといえるのです。さらに、そうしたことを知りながら訂正しようともしない態度も不誠実です。
また、一部のシロアリ薬剤と農薬が同じ成分だと強調することになにか意義があるのでしょうか。あるとすれば不正確で漠然とした不安を煽ることだけであって、「買ってはいけない」のような消費者への脅し以外のなにものも意味しません。
恥ずかしいのは一部の薬剤メーカーまでもが「農薬成分を含みません」などといって新薬を売り出すことです。薬剤によほど自信がないのでしょう。
薬剤というのは対象となる昆虫類の生態に合うように殺虫剤原体を加工して製剤し、独特の作用機構をもたせたものです。製剤の違いは原体以上に決定的で、 たとえばイネミズゾウムシに効果のある農薬とイエシロアリに効果のあるシロアリ薬剤とが同じ原体の場合(アドマイヤーとハチクサンの関係など)があります が、この場合、農業用のものをイエシロアリに使用してもほとんど効果がありません。また、その逆も同じです。つまり、殺虫剤原体はそれだけでは薬剤として 成立しないのです。
こういう事を理解しない人々がよく「植物の○○エキスがシロアリに効く」などといって「安 全な新薬」を宣伝するわけですが、一体こうしたエキスがたとえばヤマトシロアリコロニーのどの習性に作用するためにどんな性状をもっているのか、というこ とはまったく語られずに、裸のシロアリ個体に接触させたら「よく効いた」といったものが根拠になっているのです。こんなことで薬剤と認められるなら灯油や 石鹸液、あるいは人間のオシッコでも薬剤になってしまいます。
しかし、それはまだ薬剤とはいえないのです。毒性などどうでもいい、シロアリとやり取りする各場面でどのように使える性質を持つのか、シロアリがもだえ苦しんで死ぬのか、眠るように死ぬのかということが、薬剤としての条件なのです。
そういう意味からいうなら、ここ数年前まで薬剤メーカーが開発した「防蟻防腐剤」なるものも薬剤として確立していないものがかなりあったといえます。
また、市販のスプレー剤でシロアリの駆除ができないのは、薬剤量が少ないとか、薬剤成分が弱いということではなく、噴射の強さが駆除に向かないことと、多くが忌避性のある物質であることから駆除に向かないのです。
つまり、毒性があるから、シロアリ個体が死ぬから薬剤だというのは間違っているし、床下で農薬などまったく使いようがないのです。
だから床下に農薬が散布されるかのように書いてある本では、一様に薬剤が化学物質としての 特徴だけで語られていて、対象物(シロアリや昆虫等)とのかかわりで論じられないので、いつまでたっても薬剤の本質論に行き着かないのです。そしていつも 結論は使用の規制であり、全物質の善と悪への分類であり、シロアリ対策という人間の行為がすべて薬剤やシステムなどの物質によって語られてしまうのです。 これはまた、シロアリ対策を物質(薬剤)によって語るという点では、薬剤規制派も薬剤大量散布派も同じ思想の上にたっていることをも示しているのです。
そもそも薬剤とは(医薬品も含めて)人間が自分の生活にうまく利用できる毒性物質のことであって、うまく利用できるかどうかが最も大切なのです。

保証期間が終了したら薬剤散布すべきか?

そんなことはまったくありません。とりあえず床下を点検して、なにもなければそのままでいいのです。
イエシロアリ地域では、場合によっては薬剤が散布されていてもシロアリは侵入するし、ヤマトシロアリ地域では、定期的に点検すれば大きな被害の出る前に処理できます。
とくに最近はほとんどベタ基礎ですので、その上から薬剤を散布してもコンクリートの下の生き物には全く影響がありません。
ヤマトシロアリの場合、シロアリが家屋の地下にいたとしても、必ず家屋に侵入するとは限り ません。ヤマトシロアリは土の中から木材の所在を知ることはできないし、それに向かって行動することもありません。様々な活動の結果木材に到達するだけで す。もちろん湿気が原因で「発生」することもありません。だから、「保証が切れたら薬剤を撒かないと必ず被害にあう」と思い込むのは間違いです。
しかし、だいたい薬剤の効力や保証期間が切れたからといって薬剤散布するのは、定期的に風邪薬を飲んで風邪が予防できていると思い込むのと同じです。
それはまた、床下を常に死の世界にしておくことをも意味するのです。