それでも基礎断熱をしますか?

普通の寒さ人並みの暑さがそれほどいやですか?

ポリスチレンフォームを食い進むヤマトシロアリ

 シロアリ技術者や研究者の警告にもかかわらず、建築側の勝手な判断によって基礎断熱が推進された結果、基礎断熱に由来するシロアリ被害は、ここ数年で一挙 に露呈し、深刻な事態となっています。なかにはヤマトシロアリ地域にもかかわらず、新築後に家屋の主要部材に甚大な被害を受け、わずか5年で建て替えを余 儀なくされたという前代未聞の事態も発生しました。
 また同業者のデータ等によれば、築10年までの基礎断熱の建物だけでも約5割に何らかのシロアリの侵入が見られると推測できるのです。
 ここではそうした基礎断熱のシロアリ被害の実態とその特徴について述べます。

 --- 基礎断熱に対する1997年当時の当社の文書 ---
 --- 築10年で土台がボロボロ 認識を新たにした被害の規模 ---
 --- シロアリが断熱材を「好んで食べる」という表現について ---
 --- 基礎断熱+壁の吹付断熱による被害の拡大 --- 

ベタ基礎+外断熱
シロアリは基礎のフーチングから断熱材に侵入し、土台を加害していました。
黄色の矢印部分が基礎面で、茶色の部分がシロアリのトンネル。

一般にトンネル内の茶色の内壁構造は湿気を蓄えやすく加工され、湿っていることが多い。


ベタ基礎+外断熱
この家では基礎のほぼ全周にわたってこうした食害が見られ、被害は2階にまで及びました。
(この写真のみイエシロアリ)


布基礎+外断熱
基礎断熱から侵入したシロアリがユニットバスの天井裏の外壁の断熱材を食い荒らしたところ。
この家では1階の屋根野地板裏の断熱材まで達していました。こうした現象は従来のヤマトシロアリでは考えられません。
(写真提供・星野伊三雄氏)


土間床+外断熱
床下のない土間床構造の基礎断熱被害。(黒い線が食害トンネル)
この家では建物の一端から侵入したシロアリは、床板裏の断熱材や根太に沿って家屋を横断していました。
これもヤマトシロアリらしからぬ被害です。


土間床+外断熱
断熱材は散々食い荒らされ、幼虫さえ活動していました。(黒い部分はすべて被害)
幼虫の存在は、ここが単なる活動部分ではなく、生息部分となっていることを示しています。

ちなみにこの写真の家は1年前からアメリカ式ベイトシステムを採用していて、そのステーションが数メートルのところに埋められています。(付近のシロアリは元気でした)


布基礎+内断熱
空気循環式の建物にできたヤマトシロアリの蟻道。
この場合、床下にもぐれる高さがあり、断熱材の撤去も容易ですので、対処も的確に行えます。


布基礎+内断熱
これも空気循環式住宅。
シロアリのトンネルが断熱材表面に浮き出てきたところ。
これは床下の高さがなく、しかも蓄熱コンクリートが分厚いので、対処は非常に困難です。
「侵入が見えない」というのはまさに致命的な欠陥構造です。


 

被害の特徴

==>被害の露見が建築後5年から8年に集中
 おそらく基礎が完成した直後にはもともと地面に生息していたシロアリが基礎構造に適応し、早い時期に断熱材に生息したものと考えられます。
==>被害規模が異常に大きい
 イエシロアリでは当然にも短期間に家屋の高所に被害が生まれますが、基礎断熱、なかでも外壁に発泡系の断熱パネルがある場合、ヤマトシロアリでもイエシロアリ並みに大規模な高所被害が生まれます。
==>進行が異常に速い
 一旦侵入を受けるとシロアリの進行速度は速くなり、ヤマトシロアリでも築数年で1階の天井付近まで到達します。また水平方向でも同様です。
==>寒冷地方で目立つ
 これまでの経験では、関東以北の寒冷地域で被害が目立ちます。おそらく温度落差がシロアリにとってわかりやすいのかもしれません。
==>基礎と断熱材が密着していても被害は起きます
 「断熱材が基礎と密着しているとシロアリが侵入しない」と書かれた文書が某雑誌に載っていますが、事実は密着していても侵入します。ここであげた写真の多 くは断熱材をコンクリート型枠の内側にいれて隙間のない状態のものです。この論文の研究者は単に実大試験を繰り返して得られた結果のみを根拠にしているだ けで、現場に出るならたちまち覆されてしまう結論です。

断熱推進者や建築側の認識

 いまだに、断熱材が「シロアリの食材でない」とか「木材を乾燥状態に保つことができる」ならシロアリがつかないなどとうそぶく物知らずな基礎断熱推進論者がいますが、これらは事実を直視しない不誠実な態度といえます。
 また、テレビによく出る某建築士は、自著で基礎断熱のシロアリ被害を床下の湿度との関係で説明していますが、基礎の外にある断熱材がどうして床下の湿度と関係があるのでしょうか。無知にもほどがあります。
 工務店の中にも「これまで数多く建ててきたが、当社ではそんな事例は聞いたことがない」という会社もありますが、その場合被害をどうやって調べたのでしょうか。被害の進行が見えないことこそ基礎断熱被害の特徴なのです。
 にもかかわらず裁判ともなると工務店側の弁護士は「施主がシロアリを飼っていてクレームをつけた」などと主張するのです。

被害にあわないためには

==>なによりも基礎断熱をしないことが一番です。
 床下は自然界との緩衝地帯です。どうしても断熱をしたければ床を厚くして断熱し、すくなくとも床下空間は自然界に開放しましょう。
==>基礎断熱を薦められても安易に飛びつかない。
 特殊な構造を薦められた場合、必ずその結果に対する責任の所在(建築士か、フランチャイズの本部か、工務店・ハウスメーカーか)を文書で明確にしておきましょう。
 基礎断熱被害で最も大きな被害を受けるのがまず居住者であり、また「推進本」を安易に信じた地元工務店も被害者であるというのが近年の被害の構図です。
==>一つのシステムに白紙委任しない。
 一つのシステム特有な構造や材料で統一してしまったり、某テレビ番組のような「建築家」にすべて任せてしまうと、後でメンテナンスや改修の自由度が奪われ るなど様々に問題が起きてしまいます。最新の技術は必ずしも完成品ではないのです。アスベストもPCBもかつては夢の材料だったのです。
==>薬剤入りの断熱材とか食害されない断熱材があるが‥‥。
 そうしたものを使用している現場では、断熱材同士の接合部に隙間があって、市販のスプレー式発泡フォームで塞いでいるのをよく見かけます。これでは効果はありません。現場を誰が管理しているかが問題です。
 そもそも、「食害されないから通過されない」「毒性があるからシロアリが死滅するはずだ」というのは現場の生態とかけ離れた結論です。
 また、ウエブ上で主張されている「被害を受けない断熱材」なるものの加害試験は、あいもかわらず現場とかけ離れたわずかな数のシロアリ(なんとたった500頭)で試験されています。こんな土壌性シロアリは世の中にいません。
==>それでも体の弱い方のために基礎断熱が必要だとすると‥‥。
 シロアリに詳しい技術者に相談しましょう。構造的な工夫などそれなりの対策はあります。

ここにあげた写真は限られたもので、他にももっとショッキングな写真や事例もあります。しかし、当事者の事情に配慮して特徴的なものに絞って掲載しました。
できれば全国から具体的な事例が寄せられることを期待しています。

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