発泡系断熱材を
「好んで食べる」という表現について

 断熱材として使用されるポリスチレンフォームやポリウレタンフォームがシロアリに「好んで食べられる」という表現がしばしば使われます。 一方、これに対して「好んで食べるはずがない」とか「そんな根拠がない」という反論もあります。 実際はどうなのでしょうか。



 好みというのは比較的高等な生物における特殊な行動様式です。一定の物質的な情報が蓄積されていることである種の物質に対して好感を持つものであって、 個体ごとの情報に違いがあれば当然にも好みにも違いが生まれます。人間なら一様に牛肉が好きかといえばそうでもないのと同じです。
 下等な動物では遺伝的に受け継いでいる情報によって有益な物質に引き寄せられたり、危険なものには忌避性を示したりします。ところが人間のように五感で 感じたものと知識を総合して判断するのでなく、ある一定の基準(大きさ、形、臭いなど)を満たせば受け入れてしまうことから、本来自分たちに有益であるも の以外にも引き寄せられたり関わりを持ったりしてしまうのです。
 だからある種のシロアリ寄生生物は自らの大きさをシロアリの卵の大きさにし、シロアリの卵保護フェロモンに似た物質を分泌することでまんまと騙してシロアリに自分たちの世話をさせているのです。
 これと同様に木材をかじる時とよく似た信号(感触)を受け取ることのできる物質なら、しかも異物と感じる特別な信号がないなら、シロアリは疑う余地もなく木材としてかじるし食べてしまうのです。

 ある建築士がかつて「断熱材はシロアリにとって栄養でないから食べられるはずはなく、通過に際してかじられるだけ」と言っていました。
 しかし、高等生物である私たち人間ですら、体に有益かどうか判断することなく工業的に合成されたエビ風味のスナック菓子に引き寄せられ「やめられない、 止まらない」となるのではありませんか。まして下等生物のシロアリがいちいち栄養になるかどうかで食べものを区別するなどと考えるのは非常におかしなこと です。
 シロアリにとっては彼らがかじるのに適した硬さ、巣や通路を作るのに適した密閉性と保温性、集団が死なない程度の毒性の低さなどの条件があれば、「通過」とか「かじる」だけでなく木材同様に旺盛に食べてしまうし、生息場所としても利用してしまうのです。
 そしてむしろ木材と比べて均質性、加工性が高いことから木材以上に加害されることになるのです。つまりシロアリは木材でないからいやいや食べているのでなく、木材と同じもの、あるいはそれ以上のものとして積極的に食べているのです。
 これは人間が好んで食べるのとよく似ています。したがって、人間と同じ意味で好んで食べるのではないにしろ、好んでたべるという表現はまさに適切な表現と言えます。
 実際、断熱材の被害の現場では、一様に周辺の木材以上の規模とスピードで加害されています。大きな被害部分では断熱材内部が特別に加工された巣の構造となり、産卵も行われています。
 また、ポリウレタンフォームのように窒素が含まれているなら栄養を得る可能性があるとさえ研究者は示唆しています。
 したがって、ポリウレタンフォームやポリスチレンフォームの被害においては、「かじられるだけ」とか「通過されるだけ」という表現は全く的はずれで事実に合わない表現であり、逆に「好んで食べられる」という表現こそ実態に合った正しい表現といえます。