壁内の吹きつけ断熱
基礎断熱の複合被害

基礎外断熱/築16年の被害

バルコニーの下の桁(ケタ)がほとんどヤマトシロアリの巣になり、完全に消失していました。
断熱材を撤去すると外壁の下地板にも広く被害が見られ、シロアリが走り回っていました。
角の柱もかなり被害があるようですがよくわかりません。柱に芯持材が使われていたのでかろうじてバルコニーを支えてはいるようですが、これがかりに集成材の柱だったとすると柱も消失していたと思われます。
火打梁(角の斜め材)は片手で握るだけで折れ、バルコニーの床板裏側の防水シートにも蟻土が広く付着していました。
防水シートの下側の板(吹き付け断熱と直接接着していた板)は跡形もなく消失していました。
比較的初期の被害では、蟻土がわずかに見られるだけで、内部の被害状況はまったくわかりません。。
実際にはこの部分の火打梁は内部がスカスカになっていますが、一見すると健全に見えてしまいます。
桁の接合部もドリルを入れると内部が空洞になっていることがわかります。


なにが問題か…

■軸組を覆い隠すこと


吹き付けることで柱や梁などの構造材が覆われてしまい、その状態を点検できません。柱や土台で建物を支える軸組工法でそれらの構造材が点検できないというのは、万が一シロアリ被害や雨漏りなどによる木材の劣化を発見できず、対応を極端に遅らせてしまいます。
従来の貼り付け型の断熱材なら、接合部を見るだけで異常が発見されやすく、補修の際も簡単に断熱材を撤去できます。
しかし、吹き付け断熱、とくに接着性の強い発泡系の吹き付け断熱では、断熱材を細かく切り取るだけでもかなりの困難が伴います。

■密閉性


断熱材が途切れることなく連続していることで、貼り付け型の断熱材と比べて密閉性が強く、わずかな水分でも保持でき、シロアリや木材腐朽菌の生育に非常に適した状態となってしまいます。
また、長い間にはネズミやその他の生き物が断熱材に侵入することも考えられますが、その場合の対処をも困難にしてしまいます。

■将来の廃棄時に困らないか?


少なくとも分別廃棄は困難といえるのではないでしょうか。発泡系でなく紙などの再生物の吹き付け断熱ではホウ酸が多量に含まれていますが、どのようにホウ酸を取り出すのでしょうか。回収マニュアルはあるのでしょうか。


…たしかに壁内の吹き付け断熱は、基礎断熱と併用されておらずシロアリ対策もきちっと行われていればとりあえず問題はないかもしれません。しかし、建物は地震、台風、増改築等様々な要因で変化するものです。そういう変化がきっかけとなって建物が劣化した場合に対応が遅れることが懸念されます。こういう手段で断熱性を優先させることがいいことかどうか考えるべきではないでしようか。