かねさんは、老舗の女将ということで伝統的な日本の女性をイメージしました。磯さんとは、着ているものも髪型も正反対の雰囲気ですね。
初めて登場した頃は、まだ若い設定だったので紅色の長い羽織を着て、髪も少し柔らかいシルエットにしていました。
その後は、店に立ち、仕事をしていることもあって、シンプルで実用的な髷(まげ)を結っています。髪型自体はおしゃれではありませんが、いつも高級なさし物をしていて、「山長」の裕福さを表現しています。当時、さし物や櫛などの髪飾りは珊瑚(さんご)や翡翠(ひすい)、べっ甲などで作られており高級品だったため、普段から髪を飾っている人は少なかったようです。特に戦前、戦中は世相的にもさし物をしている人はいなかったと思いますが、今回は他の人との差別化をはかるためにも、あえてかねさんはずっと髪を飾っています。
衣裳は、最初から最後まで着物での登場となります。他の出演者の方にも言えることなのですが、今回は、全ての着物を古着で揃えているため、痛んでいるものも多く、補修したり、見えない部分に継ぎを当てたりして、着物を着ていただいています。かねさんの着物は、お召し※1や紗※2、絽※3など高級な素材ものを選ぶことはもちろん、女将としての威厳が表現できるよう、渋めで落ち着いた色目の物が多いですね。柄もはっきりとしていてシャープな印象のものを取り入れています。
※1 絹糸で織られた織物で、お召し物という所から名付けられた。
※2 よこ糸を一本打ち込むごとに、二本のたて糸を交差させる織り方です。シャッキッとした張りがあり、真夏の着物とされる。
※3 搦(からみ)織の一種で、たて糸のからみで透ける織り物です。
談:杉山正英(衣裳担当)、橋本良子(メイク担当)
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