共有家屋の増改築についての税務


 共有名義の家屋への「増築」は避けること。できれば分筆などして「新築」にするのがベター。

1,「住宅取得等特別控除」適用の可否

別の論稿で、「増築」家屋について住宅ローン控除が受けられるのは、増築開始時点で自己所有の家屋が有る場合に限られことを明言致しました。共有の場合も、自己所有になりますので、子供部屋等を増築する場合は、住宅取得等特別控除を受けることについても問題がないでしょう。

しかし、共有家屋にかなり大きい別棟(新築部分が母屋と明確に分離しており、単独で住居として使用できるもの)を増設する場合は、分筆等をして、「新築」の保存登記をすべきです。この部分が銀行借入でまかなわれている場合はなおさらです。住宅取得等特別控除(新築用)、事業用部分の減価償却費の必要経費参入、近い将来の古家の取り壊し、贈与税対策等を考えてのことです。

 この場合も測量等で、余分なお金がかかりますが、今後の種々の問題を考えると、「必要経費」と割り切るべきです。

 なお「新築」で「住宅取得等特別控除」を受けるには、住宅部分が2分の1以上占めていること、50u以上の1棟の家屋であること、建築後6カ月以内に本人が居住すること(住民票あるいは総代さんが証明)などの要件があります。

 2,贈与税に注意

 一般に、共有名義の家屋に子供部家等を増築する場合、贈与税にも配慮する必要があります。

 増築資金が贈与とされる可能性があるからです。例えば親と子供の2分の1共有の家屋に子供が増築して、子供が増築資金を銀行借入金で支払った場合です。

「新築」の登記が難しい小建物の増築の場合で、どうしても贈与という事態を避けたいのであれば、増築部分を増築者の持分として、家全体の持分割合の変更登記を行う必要があります。この場合の持分割合は、一般的には、床面積で按分することとなるでしょう。200uの親の家に、100u分子供が増設する場合は、増築後は親2/3、子供1/3となります。しかし古家が本当に古くて且つ大きい場合、変更後の床面積での按分でよいのかという問題があります。将来、古家建物を取り壊した後でも持分は面積が減ると同じ割合で減ります。いずれにせよ、「増築」の登記をする場合は持分変更登記は必須です。

古家を子供に贈与してから子供が「増築」とする考えもありますが、実際に、増築前に贈与を受けるのでなければいけません。この場合、少額でも贈与税の申告が必要です。

3,古家の改築

離れの増設と一緒に、古家を改築する場合もあるでしょう。共有家屋の古家のリフォーム代金については、共有持分で負担する必要があります。「請求書」を連名でもらって下さい。領収書は古家の持ち主それぞれに交付してもらって下さい。

なお古家の改築費用を考慮して増設変更後の持分割合を決定するのは、古家の再建築価額の見積もりからして困難で、理論的には可能でも実務上は難しいといえます。

4、住宅取得資金贈与の特例範囲の拡大について再言

 平成13年度税制改正で、住宅取得資金贈与の特例範囲のなかに、増改築費用の贈与を受けた場合(工事費用1000万円以上もしくは工事後に50u以上床面積増加)が追加されました。


注:意見にわたる部分は、筆者の考えなので取り扱いには十分留意して下さい。

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