Tax Information


9/3/10改訂版

1、消費税の改正について

平成9年4月1日より消費税の税率が現行の3パーセントより5パーセント(内地方消費税1パーセント)にアップします。消費税の改正にともない、消費税の仕入れ税額控除の適用要件として、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿の保存に加えて、請求書等(請求書、納品書、領収書等)も併せて保存することとされました。したがって、「帳簿等」の記載についても、課税仕入れの事実を記載しなければならないこととなりました。消費税の「帳簿等」の法定記載事項は消費税法30条8項に規定されており、下記の四つの事項が記載することとされています。 

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 課税仕入れ年月日
  3. 課税仕入れにかかわる資産又は役務の内容
  4. 課税仕入れにかかわる支払対価の額

少額(3万円未満)の取引についても、上記の法定記載事項を記入することとされています。ただし少額の取引については、上記の記載事項がある帳簿の保存があれば、請求書等の保存がなくても、適用要件を満たしているものとされます。

したがって、すべての取引について、上記の四つの事項を総勘定元帳、仕入帳、経費帳、現金出納帳等の「帳簿」のいずれかにに記入することとなります。「帳簿」に基づかない「元帳」への仕入、未払費用の月末一括記入は原則として認められないこととなります。原則として、取引先ごとに仕入れを計上することとなりますので、注意が必要です。今回の改正は、3万円以上の仕入れに関しては、請求書等の保存と帳簿の記載の両方が備わっていなければ、仕入れ税額控除が受けられないという厳しいものです。

そこで、保存すべき「請求書等」には次の事項が記載されていなければならないものとされています。

  1. 書類作成者の氏名または名称
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等の対象となった資産または役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等の対価の額(消費税額等を含む)
  5. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

このように本則課税の事業者にとっては、「請求書等」の完備はもちろん「帳簿等」の記載についても「法定記載事項」の記載を要件としており、記帳の不備があれば仕入れ税額控除を認めないという立場に立たされています。さしあたり事業者にとって重要なのは、元帳、出納簿等に請求書等の内容を1件ごとに要約して記入することと、仕入れ先の氏名を正確に記入していただくことです。

たとえば、「電気代」という記帳ではなく、「4月分事務所電気代中部電力(株)」として記入して下さることが必要です。材料費についても、代表的な品目の名称を記入していただく必要があります。すなわち、「請求書等」をみなくても、「帳簿」により課税仕入れの事実がわかるものでなくてはなりません。外注費については、相手先の氏名の他、取引の内容すなわち工事名称、工事の時期・期間、工事の内容を支払いの都度、帳簿に簡潔に記入して下さるようにお願いいたします。たとえば、出納簿等に平成9年5月1日支払い、4月18日工事分何々邸塗装代金、何々塗装(株)、と表示するのがベターです。個人業者の場合の記載の法定記載要件は氏名なので、「鈴木太郎」と記入しなければなりません。「鈴木様」と書いただけでは、原則として要件を満たさないこととなります。

帳簿への記載は、請求書等の納品項目ごとに行う必要はありません。仕入先ごとの商品の一般的な総称でかまわないという取り扱い(平成8年9月6日)が国税庁より出されています。

ところで仕入税額控除を受けるためには、正規の「請求書等」により、相手先が特定できることが要件ですので、交付を受けた「請求書等」に住所の記載のないものは、仕入税額控除の対象となりません。個人営業の業者と取引する場合、十分ご注意下さい。このように、今回の改正では、「帳簿」と「請求書等」の両方の保存が法定されたのを受けて、「帳簿」にも課税仕入れの取引の事実を記載することが免れなくなったものです。

以上の点、平成9年4月1日の適用開始ですのでよろしくお願い致します。

2、事業者免税点制度の見直し

資本金が1000万円以上の新設法人について、その基準期間がない事業年度、即ち開始1年目、2年目の課税期間の納税義務が免除されなくなりました。そこで、新設法人は「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を速やかに提出しなければならないこととされました。

ちなみに、設立1年目の仕入れの消費税の還付を受けるために、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する場合、提出期限はその課税期間の終了の日です。

3、簡易課税の適用上限額の引き下げ

平成8年度の税制改正により、平成9年4月1日以後に開始する課税期間からは、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が2億円以下(現行は4億円以下)となる課税期間についてのみ、簡易課税制度を適用することとなりました。

4、限界控除制度の廃止

平成8年度の税制改正により、平成8年4月1日以後に終了する課税期間における限界控除が段階的に縮小され、平成9年4月1日以後開始する課税期間(個人事業者は平成10年分、法人は平成9年4月1日以後に開始する課税期間)より、限界控除はすべて廃止されることとなりました。

したがって、平成8年分以後、限界控除制度の縮小、廃止によって、その課税期間の売上が3000万円未満の場合でも、納付税額が生じることとなります。

5、経過措置の適用を受けた旨の通知について

経過措置の適用を受けた工事の請負等については、その相手方に対して書面で通知することとされています。通知にあたっては、書面に次の事項を記載することとなります。通知書の雛形は下記のとおりでよいと思われます。参考にしていただきたいと思います。

       経過措置の適用を受けた旨の通知書

(1)通知をする事業者の氏名又は名称

   自分または自社の住所、氏名又は名称、電話番号を正確に記入して下さい。

(2)経過措置の適用を受けた課税資産の譲渡等に係わる資産又は役務の内容

   工事名称を具体的に明確に記入して下さい。8年10月1日の指定日以後対

   価が増額されたものである場合は、当該増額の前の当初契約の対価の額に

   相当する部分に限りますので注意して下さい。

(3)適用を受けた経過措置に係わる該当法条項   「平成六年十二月二日改正

   消費税法附則第十条第三項」と記入して下さい。

(4)経過措置の適用を受けた課税資産の譲渡等の対価の額(消費税を含む)

(5)通知を受ける者の氏名又は名称

   個人の場合には相手先の氏名を、会社の場合には正確な法人の名称を

   明記して下さい。住所、電話番号も付記して下さい。

ただし、通知が行われなくても経過措置の適用が取り消されることはありません。「請求書等」に消費税額とともに「経過措置の適用により3パーセント」と表示すれば、別に通知書を発行しなくても、大丈夫です。しかし相手方がついうっかり5パーセントで仕入れ税額控除を行い、是正された場合トラブルになりますので、通知をするのが無難です。

参考:改正法附則第10条第3項

事業者が、昭和63年12月30日から平成8年10月1日(以下指定日という)の前日までの間に締結した工事(製造を含む)の請負に係わる契約に基づき、適用日(平成9年4月1日です−筆者注)以後に当該契約に係わる課税資産の譲渡等を行う場合には、当該課税資産の譲渡等(指定日以後に当該契約に係わる対価の額が増額された場合には、当該増額される前の対価の額に相当する部分に限る。)に係わる消費税については、旧消費税法第29条に規定する税率による。

まだまだ、細かい規定がたくさんあります。電話、FAX、メールにてご意見をお待ちしています。                         9/3/10改訂版

                               

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