特定の事業用資産の買換え-10年以下所有の貸付資産でも適用の道あり-


1、「土地等」について、保有期間の制限が撤廃されています。

特定の事業用資産の譲渡をして、事業用の買換え資産を期限内に取得した場合、当該譲渡による収入金額の80%を超える金額に相当する金額の譲渡があったものとされます(譲渡収入金額<買い換え資産の取得価額の場合)。(措置法371項)

特例は、措置法371項の「特定の事業用資産の買い換えが適用できる区域の一覧表」に掲げる要件に該当する場合に適用があります。事業用の「土地等」、「建物」、「構築物」を売却して、事業供用の「土地等」、「建物」、「構築物」又は「機械及び装置」を取得する場合、所謂22号買換えについては、譲渡資産について、10年超保有されていることが明記してあります。

しかしこの10年超の保有期間制限は、「土地等」については、別規定の手当てにより、実質的に、取り払われていることに留意して下さい。

というのも、措置法375項で、保有期間5年以下の「土地等」には事業用資産の買換えの規定を適用しないこととされているからです。裏返せば、原則として、5年超保有の土地等の譲渡については、買換えの規定が適用可能となっているのです。

さらにこの買換え適用の除外規定については、措置法3711項で、平成1011日から平成151231日までの「土地等」の譲渡に限り、適用しないこととされています。従って、「土地等」の譲渡については、保有期間の制限はないこととなりました。

このように、譲渡資産の「土地等」については、継続的に事業の用に供しているかいないかの方が大きい意味を持つようになっているわけです。

2、「特定の事業用資産の買換え」の「事業」には、事業に順ずるものを含みます。

譲渡資産は、所得税で必要経費算入の基準となる「事業」のほか、事業と称するにいたらない不動産貸付等で相当の対価を得て継続的に行なうものを含みます。貸付用の資産については、措置法通達37-3で、減価償却費、固定資産税等の必要経費を回収したあと、なお相当の利益が生ずるような対価を得ているかどうかで判定することとされています。初年度等を除いて、マイナスはいけないが、少なくとも第三者に相場で貸している場合は、マイナスは考えられず、当該土地貸し付けは生計手段の足しになっているはずです。従って、自己目的で使用している場合を除いて、貸し付け用の資産は相当の対価を得ているので、買い換え規定においては、事業用資産となると思われます。空家になっている場合でも、入居者を募集しているのであれば、事業を継続的に行なっていることになります(ただ2年、3年空くと、継続性を疑われることになりかねません)。

同様に取得資産についても、10室未満のアパートでも構わないことになります。ただし、取得の日から、事業供用が1年以内になされなければなりません。

3、このように特定の事業用資産の「事業」は、所得税で必要経費算入の基準である「事業」より広い観念です。この点、保有期間制限の撤廃とともに、意外に知られていないことなので、今いちど確認する必要がありそうです。


注1:税制改正に注意して下さい。上記すべて、筆者の意見です。 

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