Linuxのすすめ

窓 の外には自由な世界が!

もはや
Windowsにこだわる理由はありません


 私のところでは事務器との相性から1台だけWindows機がありますが、その他の3台はすべてLinuxです。今ではほとんどの仕事 はLinuxで可能ですし、むしろWindowsよりも使いやすいのでこちらが主体です。
 私が日常的に使用するPCは、ネットで2万円ほどで買った中古デスクトップPCです。Intel Core i7 2.93GHz メモリ8GiB、OSなしのマシンでしたが、これに最新のLinuxをOSとしてインストールしたところ、ストレスもなく安定して動いています。
 私がはじめてLinuxに出合ったのはWindows98の頃。本の付録のRedhatLinux7ですが、捨てようとしていた PC(CPU500MHz/メモリ64MB)にインストールしてみたら辛くも立ち上がりました。そして初めて見るLinuxの画面に感動 したものです。
 当然オフィスソフトOpenOfficeは重くてほとんど動きませんが、ブラウザのMozillaは立ち上がりネット上のサイト閲覧は 普通にできました。しかもRedhatプロジェクトからは無料でシステムのアップデートも送られてきました。高いお金をかけたWin98 がアホのように思えたのです。
 その後書店でKnoppix(CDだけで動くLinux)を見つけたときはさらに驚きました。RedHatではCD3枚だったのに、 たった1枚のCDでRedhat並みのことができてしまうのだから。
 しかし、当時のLinuxは日本語の扱いや各種設定などで苦労したし、ソフトウェアも不具合が多かったので、まだまだWindowsの 代わりに使うには不安だらけでした。

よく見れば、あっちもこっちもLinux

 ところが今日ではWindowsとほとんど同じ操作性になっていて、ソフトウェアもほとんどがWindowsにうまく対応・互換しま す。しかも部分的にはWindowsよりも優れたものになっていて、LibreOffice、Firefox、Thunderbird、 Gimpなど多くのLinux出身のソフトがWindows用の人気フリーソフトとして広まりました。
 そしてついに「Linuxはガンだ」と言っていたMicrosoft自身もLinuxの配布を始めるところまで追い込まれています。
 一方、パソコンと言われる分野以外に目を向ければ、世界のスーパーコンピュータのほぼすべて、家電や車への組み込みシステムの多くは Linuxで、スマホやタブレットPCの多くもLinuxの流れをくむものです。こうしてほとんどの人がLinuxの恩恵を受けているの に、これが案外知られていません。
 にもかかわらず、WindowsやWard/Excelでないと使えないと思い込んでいる人はいまだに多く、「Linuxは難しくて一 部の人が使うもの」「最初から覚えなおさなければならない」という偏見も根強いのです。

中高年には利便性の低いWindows

 通常生活でのPCの機能、とくに中高年の方が必要とする機能は、最新のWindowsのものである必要はまったくありません。メールの やり取り、ネット閲覧、文書作成、写真・動画・音楽の整理・編集、報告書など、どれもWindowsのような有料のOSでなくともすべて 可能で、個々の機能でも遜色ありません。むしろ、使い勝手からいえばLinuxのほうがシンプルで使いやすいのです。
 そこでこの際「Linuxという自由で多様な選択肢もあるではないか」と、Linuxを宣伝する側に立ってみようと思ったのです。

 Linuxそのものについてはネット上の百科事典Wikipediaに 詳しく書いてあるのでここでは説明しません。ここでは自分で使ってみてわかったことについて述べます。
 なお、文中で「Linux」と表現しているものは、ほとんどの場合 ディストリビューション(Linuxを核にして各種ソフトウェアをセットした配布形態)を意味します。


Windowsで困ったとき
Linuxとオープンソースで解決を


日常の操作
Linuxならこんなに簡単なのに!

(クリックすると拡大)
 上は私が現在日常的に使用している中古PCのLinuxデスクトップ。
 マシンは中古でも、OSやソフトウエアはすべて最新です。
 Linuxの種類はUbuntu Linuxをベースに操作画面(デスクトップ環境)にKDE-Plasmaを採用したKubuntu。写真は壁紙やカラーテーマをカスタマイズしたものです。
 KDEのファイルマネージャーDolphinはカスタマイズが容易で高機能。当初から動画ファイルのサムネイルやお気に 入りの フォルダ登録や2画面での操作に対応し、Windows7のエクスプローラーよりもはるかに使いやすくなっています。
 全体的に、Windows7やXPの使える人ならほとんど直感的に使える風情です。



(クリックすると拡大)
 上はWinXP時代のノートPC(息子からのもらい物)で使用しているLinuxデスクトップ。PCが古く、さすがに4K動画は無 理ですが、小さな動画や写真・音楽はOK。
 Linuxの種類はDebian Linuxをベースにした超軽量のAntiXに、使い勝手のいいxfceという操作システムを載せたMX-Linux
 オフィスソフトLibreOfficeは普通に動くので、シロアリ関係のセミナーでプレゼンをするときに持っていきます。

 どちらもスタートメニューに各ソフトが分野別に分類されているうえに、ファイルマネージャーの左ペインには、よく使うフォルダが登 録できるので、デスクトップにショートカットアイコンを並べる必要はありません(並べることもできますが)。
 
 こうしたLinuxのOSは、Officeソフトをはじめ多くのアプリケーションがセットされたパッケージとして配布されているの で、インストール直後からほとんどの仕事ができます。
 また、数万の追加ソフトを有する単一のパッケージシステムがあるので、必要なソフトはワンクリックで追加できます。
 そしてこうしたOSやソフトの導入や入れ替え、アップグレードには1円の費用 もかかっていないのです。


*** 導入までの主な流れ ***
・Linuxの配布サイトからOSのイメージファイル(.iso)をDLします。
・イメージファイルをDVDまたはUSBメモリにイメージとして書き込んで、起動メディアを作成。
・インストールすべきPCに起動メディアをセットしてPCの起動ボタンを押します。
・LinuxOSが起動したら、いろいろいじってみて十分試してください。
・気に入ったら、デスクトップにあるインストールアイコンからインストーラーを起動してインストールします。
---細かな点については、ネット上に解説しているサイトが多数あ るので参考にしてください。


■Windowsと同じ部分、代用できる部分

・ファィルやフォルダ操作は同じ。
 むしろWindowsより使いやすい工夫が随所に目立ちます。たとえば、大きなウインドウを移動させるのにタイトルバーを掴まなくても 適当な場所をAit+マウス左で移動できるし、ウインドウの大きさもAit+マウス右で縮小拡大できます。これと同じことを Windows10でやるにはAlt+Spaceで出るメニューから移動を選択するなど複雑です。
 ファイラーはWindowsのエクスプローラーよりもはるかに使いやすいです。Windowsではエクスプローラーの使い勝手の悪さか ら、様々な「使い勝手のいい」フリーソフトが出回っているようですが、Linuxではもともとそういう機能のあるファイラーが一般的。二 画面分割など標準装備です。
 最近のWindowsではファイルのあり方は以前とほとんど同じなのに、それをユーザーに理解させないような特殊な操作になっているの で、初心者は他と互換性のない操作に慣らされてしまいます。
 Ubuntuなど有名なLinuxではmpeg,avi,wmv,rm,flvなどの動画ファイルも以前から標準でサムネイル表示でき ていました。この点ではWindowsの方が遅れていたのですが、ようやくWin7でLinuxに追いついたようです。

・日本語入力や外国語サポートもおなじ。
 しかし、手書き漢字入力はやや認識力に劣るし、標準の外字作成ツールはありません。ただ、Windowsで作成した外字はフォントファ イルをコピーしてLinuxのフォントフォルダに入れれば使用可能。
 また、LibreOffice-DrawやInkscapeを使って既存の文字から外字を自作すれば外字のように文書に組み込むことができます。
 Googleが配布している「Google日本語入力」も使用可能、というより多くのLinuxの標準装備となっています。Linux ではMOZCと呼ばれています。
 
・Windowsとのメールのやり取りは問題なし。
 メーラーはWindows付属のものよりも優れているのでThunderbirdやSylpheedなどLinux出身のメーラーが Windowsでも活躍しています。また、かなり多くのメーラーがスパムメール学習機能を備えています。
LineはLinux用のソフトがありませんが、Wine(Windows用ソフトをLinux上で走らせるツール)を利用すれば Windows用のLineソフトが普通に使用できます。

・ネットの閲覧もとくに問題なし。
 WindowsでFirefoxやGoogleChromeを使っている人ならLinuxでも同じブラウザだから問題ありません。「お 気に入り」なども簡単に移行できます。InternetExplorerしか使ってこなかった人はブラウザを変える必要がありますが、使 いやすさや機能から言えば移行した方が有利です。
平成28年度の国の経済センサス活動調査をネットから回答しましたが、Linux環境のFirefoxで可能でした。
 楽天トラベルなど利用もLinuxで可能ですのでネットの買い物やホテルの予約などに利用できます。
 ただ、一部のサイトで未だにIEを指定するところがあります。

・USBメモリやカードリーダーなどの外部記憶装置の自動認識(ドライバ不要)もおなじ。
 差し込むと自動的にアイコンがデスクトップに現れる点はWindowsより使いやすいです。
 Windowsでは新たになにかUSB機器を差し込むと、いちいちドライバのインストールが始まって「使えるようになりました」と案内 されるうっとおしさがありますが、Linuxでは差し込んだ途端に認識されて使えます。デジカメをUSB接続した場合も、USBメモリー として認識されるので、即座にDCIMフォルダにアクセスできます。
 認識されたUSBメモリーはファイラーの左欄に製品名(または、容量別のメディア)として表示されます。WindowsのようにD:と かE:というようなドライブ名ではないのでわかりやすいし、抜くときも直接それを右クリックして安全に抜くための項目を選べばその製品名 が消えるのでわかりやすいのです。

・クラウドもだいたいOK。
 DropboxやGoogleDriveなどとくに困らない程度に使えるので、Windows機とのファイルの受け渡しや知人や顧客に 写真や動画を配布することもできます。
 ただし一部のものではLinux用の同期ソフトがないので、ブラウザを使った操作になります。もっとも、同期ソフトによって自分のHD に同期ファイルを置くのはHDの負担になるので、あえて同期フォルダが必要とはいえません。
EverNoteはLinuxでは動きませんが、NixNoteというLinux用のクライアントソフトがありますので、これでログイン すれば同期できます。しかも本家EverNoteのような台数制限がないので4台以上のPCでも使えます。
  ・フォントの扱いも同じ。
 ただしライセンスの関係で当初入っている日本語フォントは数種のみ。外部フォントの追加は容易です。
 OSにかかわりなくフリーで使える日本語のNotoフォントやIPAフォントなどが配布されているのでフォントで困ることはありませ ん。

・WordやExcelなどのファイルはすべてLibreOfficeなどで読み込み・編 集・同形式での保存も可能。
 マクロの継承でやや問題があるものの、Excelの関数は問題なく継承できます。PowerPointのファイルも多少位置ずれがある ものの実用に問題ありません。
 以前と比べてかなり互換性が高くなっていて、Word文書をLibreOfficeで開いても違和感がなくなりました。
 写真入りのWord文書をLibreOfficeのオープンドキュメント形式で保存すると、ファイル容量は小さくなります。
Libreofficeで作成した文書や表計算は、Libreoffice上でWordやExcel形式で保存することもできます。
 作成した文書をpdfファイルにする機能はMS-Officeよりも早くから取り入れられていましたが、後から編集可能なハイブリッド pdfも作成できます。
 また、スマホやタブレットでもLibreOfficeのファイルを表示・編集・連携できるアプリがあるので、比較的安いAndroid タブレットでも表計算や文書ファイルの持ち出し・編集も可能です。

・PhotoshopやIllustratorもGimpやInkscapeでほぼ代用可 能。
 専門の仕事からいえば違いもあるかもしれませんが、一般の使用ではグラフィックの方面での差はありません。前記したWineというソフ トを使えばPhotoShopも使えますが、Linux付属のGimpやKritaなどで十分代替できます。
拡大してもギザギザにならないベクター図形もInkscapeで無料でできます。また、PhotoShopやGimpなどで作成したビッ トマップ図形・デザインもInkscapeでベクター画像に変換できます。
 書店にもGimpやInkscapeの使い方の書かれた本があります。
 ScribusというDTPソフトがようやく日本語に対応したので、曲りなりに印刷所に入稿できるCMYKファイルの作成も可能となり ました。

・サイト構築もBlueGriffonで充分。
 初心者でもワープロ感覚で文字や写真を配置すればウエブサイトができます。
 LibreOfficeもウエブサイト構築の機能があり、これもワープロ感覚で操作できます。
また、HeTeMuLu-CreatorなどのWindowsソフトもWine経由でインストールできます。

・サイトのアップロードで使うFFFTPもgFTPやKonquerorで代用可能。
 操作性は似ていますが、ミラーリングアップロード機能はありません。
 ただ、ミラーリングアップロード機能のあるFFFTPというWindowsのソフトは上記のWineで動きます。

・写真の焼付けサービスなどネット上のサービスもほとんど問題なく利用できます。
 あっという間にFirefox対応サイトが広がりました。ただ、銀行などでは簡単な残高照会などはLinuxでもできますが、日常的な運用は制約されます。

・扱うことのできる音楽・画像・動画形式もほぼおなじ。
 市販DVDも視聴可能。ただし動画では別途コーデックのインストールが必要で、いくつかのLinuxでは最初から組み込まれているもの もありますが、そうでない場合でもワンクリックでインストールできます。

・YouTubeやGoogleVideo、ニコニコ動画などネット上の動画も問題なく見 れるし保存も可能。
 FirefoxやGoogleChromeなどブラウザ上でできることはWindowsと同じです。ただ、huluなど一部の有 料動画配信サイトはLinuxでは見られません。
 YouTube専用の閲覧ソフトがLinuxにもあって、これだと広告もなく、検索、閲覧がスムーズです。

・GoogleやAdobeなどの無償配布ソフトもLinux用があるのですべて動きま す。
 PDFファィル閲覧で広く使用されているAdobeReaderもLinuxの各形態にあわせたパッケージが配布されています。また、 PDFファィルの作成機能はLibreOfficeなどに最初からついています。GoogleChromeあるいはSkype、 Lastfmなどもインストール可能です。
 

■Windowsと比べて有利な点

・ライセンスに縛られず、ほとんどが無料の世界。
 ほとんどのLinuxでは、OSはちろんその他のソフトウエアに一切お金は不要です。一般的に使用するほとんどのソフトウェアは Linuxの中に最初から組み込まれています。
 たとえば、オフィスソフトなどを別途に買ってインストールする必要はなく、インストール直後からワープロ、表計算、図の作成、データ ベースなどフル機能のオフィスツールが使えます。しかもそれらはMS-Officeの体裁とほぼ同じなので違和感はありません。
 また、DebianやUbuntu系Linuxには数万の追加フリーソフトも用意されていて、単一の方法で簡単にインストールでき、誰 でも自由にコビーして配布もできます。
 ソフトではLinuxに不足しているものはありません。むしろ「LinuxのこんなソフトがWindowsにもあれば」と思うほうが多 いくらいです。雑誌やネットで「Windowsの定番フリーソフト」「使えるソフト」として紹介されるものの多くがもともとLinuxで 使われているものです。

・慣れればWindowsよりも使いやすい。
 ほとんどすべてのLinuxでは、20年以上前から仮想デスクトップが標準装備で、複数のデスクトップを切り替えて作業できます。
 一つ目のデスクトップで調べ物をしながら、二つ目のデスクトップで文章を書き、三つ目のデスクトップで写真の整理をする、といった使い 方ができるので、個々のデスクトップが乱雑になりません。環境によっては別々の壁紙の設定もできます。
 また、アイコンの工夫がしやすく、色を変えたり、内容によって目印をつけたりできるし、外部のアイコンを使う場合も保存フォルダがわか りやすい場所にあります。
 ソフトを開くときのメニュー(Windowsのスタートメニューに相当)も、ソフトが分野別に分類されているので探しやすく、どの項目 もマウスで触れるだけで説明が出ます。
 ソフトの追加も専用の管理ソフトから選んでインストールボタンを押すだけ。Windowsのようなセットアップウィザードに応える必要 はなく、不要な「推奨ソフト」がこっそりインストールされることもありません。
 しかも、主要なLinuxではインストールされたソフトの情報を記録する機能があるので、OSの再インストールをした場合も、追加ソフ トはまとめてごっそりインストールでき、「お気に入り」や「アドレス帳」など各ソフトの設定もすべて復活します。
 時計などデスクトップやツールバーに置く小道具(ウイジェット)もあらかじめ用意されていてワンクリックで設置できるし、それ以外にも 専用のサイトからダウンロードできます。
 すべてのファイルとフォルダに所有者の権限でセキュリティの設定ができます。たとえば大切なファイルやフォルダを所有者以外に閲覧禁止 や変更禁止にするのも簡単です。
WindowsXPまではzipなどの圧縮ファイルの解凍(展開)機能は標準装備されていませんでしたが、Linuxでははるか昔から標 準装備で、圧縮ファイルを右クリックすれば解凍できました。
 
・強引でないアップデート方式
 Windowsでは何らかのアップデートがあると勝手にアップデートが始まり、電源をすぐに落とせないだけでなく、再起動までしてしま うようですが、Linuxではすべてのアップデートは、通知は頻繁にあるものの任意に空いた時間にまとめて行えます。
 アップデートはソフトのインストールと同じ統合管理システムで行うので、どんなに異なるアップデートやソフトも一つの操作でまとめて アップデートできます。
 また、Linuxではカーネルなどシステムの根幹部を除けば、アップデートで再起動の必要もありません。ツールバーのアップデートマ ネージャーのアイコンをクリックして管理者のパスワードを打つだけです。アップデートの一覧が表示されるので必要のないものを除外するこ とも可能です。

・インストールの容易性
 ダウンロードしたLinuxのイメージファイル(.iso)をDVDやUSBメモリーといったライブメディアに焼いてからPCに入れて立ち上げれ ば、Windowsなど他のOSの入っているPCでも既存のOSやデータに影響することなくLinuxが操作可能です。多くの場合何も設定しなくて もそのままネットにつながります。
 そしてそのままLinux全体をHDにインストールできます。パーテションの切り分けも含め、ほとんどが30分前後でインストール可能 です。有名なものを除けばごく一部にインストーラが日本語化されていないものがあるという事情を差し引いてもWindowsのインストー ルよりもはるかに簡単といえます。
後からソフトをダウンロードして追加する際も、専用パッケージならWindowsでのような解凍・セットアップの操作も不要。ワンクリッ クで最適な場所に依存関係を解決しながら解凍・インストールされ、Windowsのようにいちいちシステムを再起動する必要もありませ ん。
 また、Windowsではよほど注意しないとインストールしたソフトにこっそり紛れるように余計なソフトがインストールされて日本語変 換システムが変わってしまったりしますが、Linuxではすべてのソフトのインストールが単一の管理システムを通じて行われるので、そう いう心配はありません。

・継承の容易性
 一度でも使用したソフトはホームディレクトリ(MyDocumentのようなところ)に設定ファィルが自動的に置かれる(隠しフォルダ として)ので、それらをホームディレクトリごとバックアップしておけば、OSを再インストールしても「お気に入り」やメールデータ、フォ ント、個別のソフトの設定などすべての設定は、それらのファイルを新しいホームディレクトリに戻すことで完全に復元できます。
 そしてどのLinuxもこうした構造は同じなので、異なる種類のLinuxに乗り換えても同じ環境が継承できます。
 後からインストールしたソフトも記録する機能があるので、OS入れ替え後に専用の管理ソフトによって100でも200でも、以前入って いたソフトのすべてがまとめて再ダウンロード/インストール出来ます。
 また、Windowsではバージョンアップで動かなくなるソフトも出てきますが、Linuxではそういう心配はほとんどないし、PCの 能力に依存する部分を除けば同系列のLinuxならどれでも同じソフトが動きます。

・ハードウエアの水準に応じた多様なLinuxが選べます
 Windowsで最新の機能を利用しようと思えば非常に高速で大容量のハードウエアが必要ですが、LinuxではWindows10並 みの巨大なものもあればわずか100メガの超軽量のものもあります。
 壊れてさえいなければWindowsXP時代の中古PCでも最新のLinuxが動くものもあります。ましてWindows7以降のPC なら標準的なLinuxはだいたい動きます。
 そのうえWindowsと異なりデスクトップ環境(操作画面)が独立したソフトだから、おなじLinuxでもハードの環境や好みに応じ たデスクトップ環境を選択できます。3Dデスクトップから超軽量デスクトップまで多彩です。

・使うほどシステムが新しくなります
 WindowsでもFirefoxなどLinux出身のソフトを使っている方はわかると思いますが、新しいバージョンに次々に置き換 わって行く。あれがシステム全体で行われているようなものです。ただし、ハードウエアが対応していないとか相性の問題でアップグレードで きない部分もあります。
 こうしたアップグレードのやり方はAndroidのスマホによく似ています。それもそのはず、AndroidはLinuxの流れをくむものだ から。
 Linuxの主要なものでは、システムを構成するパッケージ(カーネルから個別のソフトまですべて)が毎日どこかで更新されていてそれ が通知される仕組みになっているので、簡単な操作で自分のシステムを常に最新のものに維持できます。ある日いつものソフトを開いたら起動 画面から体裁までが新品になっていたということもあります。
 また、多様なマシンを前提としているため、例えばよく使われるLinuxMintではアップデートの一覧を示して、マシンとの相性から 推奨と非推奨を5段階の色分けで示して選択できます。カーネルのような根幹部を古いマシンで次々に更新するとトラブルのもとですので、 「このパッケージを無視する」という項目が用意されています。
 一方、Windows10ではバージョンの更新をせずにシステムのアップグレートを行うことになりました。これは一部のLinuxで行 われてきたローリングリリースと同じです。しかし、Windowsはまだこれに慣れていないようです。アップデートのたびにトラブルが起 きているようです。
 
・ソフトウェアの使いやすさ
 例えば、画面いっぱいに広がったウインドウの適当なところを持ってずらすとか、大きさを変えることが、Altキーとマウスボタンの組み 合わせでできるます。
 また、タイトルバーを操作すると、画面を巻き上げてタイトルバーだけにすることもできます。これはウインドウをたくさん開いているとき に便利です。
 さらに、テキストの一部を範囲指定するだけでクリップボードにコピーされるので、貼り付けたい場所で中ボタンクリックするだけでよく、 毎度「コピー」と「貼り付け」を押す手間が省けます。
 これらは多くのLinuxの共通機能で、これに慣れるとWindowsでの操作が鬱陶しく思えます。

・セキュリティ
 Linuxのデスクトップを狙ったウイルスがほとんどないので、ウイルス対策もアバウトでいいです。もちろんウイルス対策ツールもある のでインストールすればさらにいいですが、ネット上でおかしなところにアクセスしないかぎり対策ツールなしでも問題ありません。脆弱性や バクなどの情報も各Linuxのサイトからえられるので、該当するソフトをアップグレードしておけばいいです。
 Linuxではすべてのファイルとフォルダに例外なく所有者とアクセス権が設定できるので、他のユーザーが勝手にファイルやフォルダを 開くことができないようにすることもできます。

■Windowsと比べて不利な点

・原則としてすべて自己責任
不具合があった場合はネット上で同様なケースを探して自分で解決するしかありません。付き合いのある電気屋さんに頼んでもWindows以外わからない場合が多いです。た だ、致命的な問題は起きにくく、かりにそうであっても簡単に再インストールしたりLinuxの種類を変更することも容易です。
 一部の人気ソフトではネット上や書店に詳しい解説書がありますが、その他は適当に使ってみて肌で覚えるしかありません。(もっとも Windowsでも解説書やマニュアルも読んだだけではわからないし、直接のサポートを受けても分かりにくいものです)

・初期設定が不完全なことがある
 市販のPCにプリインストールされたOSは、そのPCに合うように調整されていますが、Linuxの多くは多様なメーカーの中古PCに 後からインストールすることを想定して、細かな設定や構成ができていないことがあります。したがって、しばらくの間「ならし期間」のよう なものも必要となります
 インストール当初は、日本語入力ができないとか、音が出ないとか、DVDが見られないなどがしばしばあります。ただ、そういう場合の設 定はごく簡単に設定できることがほとんどで、付属の設定ツールを起動して設定し直すとか、追加のソフトウエアをソフトウエアセンターなど からインストールするだけで解決します。ネット上には解決法が広範囲に出ています。
 DellなどのメーカーからLinuxをプリインストールしたPCが販売されているようですが、こういうものはすでに設定できていま す。

・ネット環境やドライバでの問題
 また、ホテルなどのネット環境では有線なら差し込むだけで問題なくつながります。市販の無線LANカードやPC内蔵のものもほとんど使 えます、非常に古いPCでは対応できないことがあります。
 USBでPCに接続する周辺機器ではLinuxに対応しないとするものが多く見られます。ただ、WEBカメラやUSBメモリのように データを読み込むだけで特殊なドライバに依存しないものなら「Linux対応」と書かれてなくてもほぼ使用できます。また、専用ドライバが必 要なものでもしばらくするとLinux側(個人で公開しているものも含めて)でドライバなどが供給されることもあります。
 個人用のプリンターはLinux用のドライバが各メーカーから配布されていますが、事務用のプリンター・コピー・ファックス兼用機では 別途にPSカードのようなものが必要です。
 カーナビなどとの連携アプリはLinux用はありません。ただしWineや仮想ドライブで動くかもしれません。
 私の場合、CarrozzeriaのHDカーナビに音楽を入れるのに、Linux内に仮想ドライブを作ってそこにWindowsXPを インストールし、Windows専用のカーナビ連携ソフトを使っています。これもWindowsで直接行っていた時と比べると、 Windows独特のあのうっとおしいUSB接続認識過程がなく、つなげてすぐに認識するので、むしろ使いやすくなりました。

・一部ソフトウェアの不完全性
 一般的なオフィスソフトやグラフィック、マルチメディア系、ネット系ソフトはかなり洗練され安定してきて不具合はほとんど感じられませ んが、できて間もないソフトだとバグが多く使用中に突然終了したりフリーズしたりすることはよくあります(システムに影響しないので心配 はありませんが)。また、前記した動画のコーデック以外にも一部プラグインが利用できないこともあります。
 
   

どのような場合にLinuxの導入が適しているか

・PCが複数台ある場合
 とくにWindows専用ソフトにこだわらない場合は、1台をWindows専用として残し、それ以外をLinuxに移行することをお 勧めします。とりあえず1台にLinuxをインストールして、うまくいったら徐々に広げる方法がいいと思います。また使わなくなったPC はその能力にあったLinuxの種類を探してインストールすると見事に生き返ります。とくにネット専用機としては最適です。

・WindowsのPCを処分する場合
 WindowsではPCとOSが同時に古くなり、動作も緩慢となります。しかしそうした古いPCもLinuxに入れ替えれば最新のOS を動かせるのです。とくに重くて動きが緩慢だったWindowsVistaのPCは能力としてはかなり高いものなので、最新で高機能な Linuxが余裕で動きます。
 WinXPのPCでも軽量な最新Linuxでよみがえりますので、捨てる前にLinuxを検討すれば余計なお金を捨てなくて済みます。

・PCの使い道が限定されている場合
 インターネットを見て、メールをやり取りし、文書を作成し、写真やビデオを整理し、古い記録やデータを整理し、スマホなどと連携すると いったごく一般的な目的でPCを使うのなら、Windowsである必要はまったくありません。
 Linuxでほとんどの仕事が代替できるのに、Windowsでないと不安に思うのは、思い込みに過ぎません。

・安くPCを導入したい場合
 新品のPCではOSがインストールされていないものだと価格がかなり安くなっています。Win7が普通に動く能力のPCならどの種類 のLinuxでも問題なく動きます。3DデスクトップのLinuxでもさほど重くありません。
 また、Linuxをプリインストールした機種を売っているところもあります。
 中古PCでは、Win10の入ったデスクトップ機やノートPCが2〜3万円前後で多数出回っているし、Win10が動くものならLinuxにとっては十分すぎる能力です。

・小規模な団体での一般的な使用の場合
 団体として初めてPCを設置したり買い換えたりする場合、とくにWindowsでなければならない理由がなければ、貴重な会費をOSや 有料ソフトに使うのは無駄というより会員への背信行為に近いとさえ言えます。
 共同で使用する場合も、ユーザーの設定やファイル・フォルダごとに権限の設定が容易なLinuxの方が有利です。
 Linuxを標準にすれば、どのOSの会員も無料で対応できます。かりに当面Windowsということであっても、せめてオフィスソフ トなどの基本ソフトは一律に導入できるオープンソースを標準にすべきです。



(クリックで拡大)
よみがえった中古PC

 Windows7がギリギリ・重々で起動する状態で「ハードオフ」に山積み状態だった古い中古 PC(CPU800MHz/メモリ1.44GiB)を2700円で買ってきて、超軽量のAntiXをインストールし たら最新のブラウザやオフィスソフトがスイスイ動くようになり見事に復活しました。仮想デスクトップも2個標準装備 です。
 しかも無線LANもうまく拾ってくれて、他のマシンとの連携も問題ありません。大きな動画を除けば写真、音楽も普 通に楽しめるし、テレビなど外部ディスプレイを繋げばプレゼンもできます。
 軽量なLinuxながらテーマや雰囲気をカスタマイズするのが容易で、今流行りのダークモードもかんたんに設定で きます。
 まだまだ使えるPCが多く捨てられているようですが、LinuxはPCの分野では資源の有効利用に大きく貢献する ものです。

Linuxの導入が適さない場合

 たった1台のWindows機を使用していてその環境への依存度が高い場合や、Windowsでしか動かないソフトに依存している場合 はHDへのインストールはおすすめできません。
 こういう場合はライブCDやUSBメモリにインストールしたものに限定すべきです。ライブCD・DVDの場合、HDにインストールした 場合よりも動作が重いですが、ライブUSBならかなり軽快で、データの保存もできます。PuppyLinuxなどでは一旦メインメモリー に全体をコピーしてメモリーだけで動くものもあり、これだと古いマシンでも軽く動きます。
 ただ、ハードディスク容量やメモリに余裕があれば、HDを分けて1台のPCに異なるOSを共存させたり、VMwarePlayerなど の仮想化ソフトを使ってWindows上でLinuxを動かすという手もあります。また、UbuntuやLinuxMintでは、他のソ フトと同じようにWindowsにインストールして動かせるものもあって、これだと複雑な設定なしで共存させられます。

「デスクトップ環境」が選べる

 前記したようにLinuxではデスクトップ環境(操作画面)は独立したソフトであって、デスクトップ環境なしでコマンドのみでも動きま す。しかしデスクトップ環境がないと私のような素人ではうまく使いこなせません。
 現在、Linuxで最も一般的なデスクトップ環境はKDE-PlasmaとGNOMEです。KDE-PlasmaはWindowsによく似た雰囲気のデスクトップ環 境で、ほとんどWindowsと同じ要領で操作できる多機能なデスクトップ環境です。これと双璧をなすのがGNOMEですが、 Windowsからいきなり移行した場合、慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。
 どちらも多機能ですぐれたデスクトップ環境ですので、ライブCDなどで試してみて肌に合うものを選べばいいのです。また最近では、 WinVistaよりも手の込んだ3D機能も登場し、メモリに余裕がありそれなりのグラフィクボード搭載の機種では動作可能です。
 軽量なデスクトップ環境で多く使われるのがXfceやLXDEで、操作性も見た目も多機能なデスクトップ環境と比べても遜色はありませ ん。
 最も軽量なデスクトップ環境(IcewmやJwmなど)では一部日本語化されていないものもあますが、見た目もきれいで操作上もとくに 困ることはほとんどありません。一部のディストリでは、最初からいくつかのデスクトップ環境がセットされていて起動時に選べるものもあり ます。
 Linuxのデスクトップ環境では、Windowsデスクトップによく見られるような多くのショートカットアイコンは置いてないことが ほとんどです。それはすべてのデスクトップ環境でメニューの中でソフトウェアがすでに整然と分類整理されていて、取出しが容易だからと思 われるからです。だからデスクトップに置かれるショートカットアイコンはファィルやフォルダのものだけで充分なのです。
 また、ほとんどのデスクトップ環境ではかなり以前から標準で仮想デスクトップが採用されていて、いくつかのデスクトップを切り替えて使 えることも従来のWindowsにはなかった工夫の一つです。Windows10からようやく仮想デスクトップが採用されましたが、まだ まだLinuxのような使いやすいものになっていません。
 

Linuxを手に入れるには

・書店などで買う
 人気があるLinuxや注目されているLinuxは、Linux関係の解説書や月刊誌にCDやDVDの付録となってついています。
・ネットからダウンロード
 いくつかのサイトから多くのLinuxが配布されています。外国のサイトが多いですが、今ではどこからダウンロードしたものでも、インストールする際には日本語を選べます。とりあえずいくつかライブCDに焼いておけば、現存するPCで試用できるのだからそれからゆっくりと選べばいいのです。
 なお、ライブメディアを焼くときは、ダウンロードしたLinux(ISOファイル)をDVDやUSBメモリに「イメージとして焼く」必要がある ので、これができる焼付けソフトが必要です。市販ソフトならほとんどその機能がありますが、フリー(無償)のものもあるのでネットで探せ ばすぐ見つかります。イメージとして焼かないと、たんにISOファイルをメディアに保存しただけとなり、それをドライブにいれてPCを起 動してもLinuxは立ち上がりません。
 上記の方法で起動用のDVDから起動する場合、DVDドライブの物理的な能力に依存して動作するので、HDDにインストールした 場合よりも動きがぎこちなく感じられます。だから、CDやDVDからでなくUSBメモリからの起動のほうが動作がかなり軽くなります。起動用のメモリーを作るには専用のソフトが必要になります。
・私に頼む
 それほど多くない数なら私がライブメディアに焼いてあげてもいいです。ただし、多少の時間と多少の手数料をいただくかもしれません。

関連情報の入手法

 書店に行けば代表的なLinuxの説明書が売られています。1冊ぐらいは基本的なものを買っておくとよいいでしょう。しかし、ネット上 でもかなりの情報を得られます。
 前記したWikipediaのLinuxの項目からかなりのサイトが紹介されています。また、各Linuxや個別ソフトの説明や使用方 法もGoogleあたりで調べれば困りません。さらに掲示板・質問サイトではLinuxでの困り事もかなり多く載っています。Linux そのものがオープンなものであるのだから、多くの人々の知恵を少しずつ集めることがいいように思います。また、一つのことを完璧にマス ターしようと思わずに、わかった分だけで実行し、また別の情報を得、アイデアを広く共有することがLinuxの精神にもつながります


Linuxの種類 おもなソフトウェア

Link Linux 初心者の会
「Linuxはそんなに難しいのか」を検証するブログ