もしや、Wordでチラシ作っていいませんか?

 シロアリの定期点検で訪問したついでにPCの質問や相談を受けることが多くなった。多くは年配や主婦のPC初心者からだ。
 ちょっとしたチラシや家族の記録、小グループでの案内状や会報などを作ろうとして苦労しているようだ。

 「画面の途中から文字を打つにはどうするか」
 「写真や絵を入れるにはどうするか」
 「吹き出しや矢印を入れるにはどうするか」
 「飾りの枠はどうしたらいいか」
 ……というようなことが多い。
 ところが、初心者が文書作りで使うワープロソフトMS-Wordが上記の作業を複雑にして初心者を悩ませている。

 自由に文字や写真を入れようとするとテキストボックスを使うしかないが、それを知るまでは入力キーを連打してカーソルを下げたり無理な段組みをしている人がほとんど。
 テキストボックスでうまく写真や文字が配置できるようになっても、文書の前段になにか打ち込むとせっかく配置した文字や写真、吹き出し、矢印、線などが移動してしまう。
 場合によっては、勝手にページが増えて、タイトルや写真などが一斉にそちらに移動して「消えちゃった!」とパニックになる。
 写真のサイズを変えようとしてもメッセージボックスの大きさを変えなくてはならず手間がかかる。
 ちょっと記号を入れて改行すると、いきなり箇条書きスタイルになって困る。
 その他わけの分からない機能が勝手に動作して困る。
 こうして初心者は「パソコンは難しい」という印象をいだいてしまう。

 「Wordはそういう文書を作るのに向いていませんよ」というとみんな一様に驚いた様子。「文書といえばWordでつくるもの」と思っている方が意外に多いのだ。
 似たようなことは表計算ソフトExcelでも行われていて、表計算ソフトの使用法としてはふさわしくない組織図や報告書が、ちょっと触るとスタイルが崩れてしまいそうな微妙なバランスで表の上に書かれていたりする。よほど遠回りが好きな人なのだろうか。

 もちろんWordやExcelでも上記のような文書は当然作ることはできる。専門の説明書にも色々なテクニックが書かれている。しかし、初心者にしてみれば幾多の要らない機能をある程度使いこなさないと単純な文書さえ作ることができないのである。
 要するに、初心者の多くはわざわざその作業に適さないソフトを使って難しく難しく文書をつくっているといえる。

 Wordなどのワープロ専用ソフトは複数ページにわたる長文や多項目の文書を打つには都合が良い。
 勝手にページを増やしたり、中黒(黒い点)を打つと箇条書きモードになるとか、段落とともに画像が移動するのもそのためだ。
 しかし、初心者がつくろうという文書のほとんどはページごとに独立したものである。画像や文字はそのページだけで完結していて、会報のようなページ物でもページ同士のつながりはない。だから似たような文書でも、1ページごとに独立したファイルとして保存されることも多い。
 つまり、こういう文書をWordで作るのは無理・無駄が多いのだ。

 では、初心者の文書作成に適したソフトはなにかといえば、それはドロー(図形描画)ソフトである。
 ドローソフトの特徴は以下のとおりである。

 ・画像はどこでも貼り付けることができ、自由に移動、サイズ変更でき、他の要素によって勝手に移動しない。
 ・文章はすべてテキストボックスで作成し、画像と同様に自由に移動、サイズ変更でき、フォント設定も自由。
 ・グリッド(マス目)を表示させれば写真や文章の位置が簡単にそろう。
 ・ページが固定されていて、勝手に増えることはない。ページの順序を任意に入れ替えても内容に影響しない。
 ・だから、ページさえ分けておけば似たような文書は一つのファイルで保存・管理できる。
 ・ドローで作った図形は拡大してもギザギザにならないベクトル形式。

 ところが買ったばかりのWindowsPCではドローソフトは付いていない。最初から入っている図形描画ソフトといえば「ペイント」だが、これでは文字やページの設定がうまくできない。どちらかと言えば画像加工ソフトの仲間であって文書を作るものではない。

 そこで新たにドローソフト(ドローイングツールともいう)をインストールしなければならない。
 ドローソフトはいろいろあるが、割合単純に使える無料のソフトとしてはLibreOfficeのDrawをおすすめしている。LibreOffice(またはOpenOffice)という総合オフィスソフトをインストールすれば使用できる。
 ふつうPC初心者はネット初心者でもあるので、こういうソフトの存在も知らなかったわけで、使って初めて「なんだ、こんな簡単にできるのか」となるのである。
私もかつてはワープロでパンフレットや顧客への報告書、説明書を作っていたが、Drawで作るようになってからその自由度を実感している。しかもLibreOfficeではどの機能からもPDFやEPS、SVGなどのファィルが書き出せるので都合がいい。

 MS-Officeは各バージョンごとにサポートの期限が決まっていて、それが過ぎるとバージョンアップに費用がかかる。まして年配の方は子供からもらったPCを使っている場合が多いので、最初からOSもOfficeソフトも古い。
 ワープロや表計算を使うにしろ、長く使い続けるためには「サポートが切れるとウイルスが入る」と脅すMS-Officeに頼らない方が賢明。最初から無償でバージョンアップできるLibreOfficeにしたほうが無難である。
 趣味の会やボランティア団体などでも、費用の面で会員同士のOSやOfficeソフトのバージョンをそろえられないMS-Officeではなく、会員のすべて(Windows以外の人も含めて)が無料で使えるLibreOfficeで統一したほうが有利である。「ファイルをもらったが開けない」などということはなくなる。
 世の中の動きとしても、かなり多くの自治体や企業がMS-OfficeからLibreOfficeなどのオープンなOfficeソフトに転換しているので「Wordでなければならない」時代は終わりつつある。

 と、ひとしきりオープンソースの宣伝をしたところでシロアリの話に移る。
 シロアリ対策でも、適切な対応をせずにわざわざ難しくして「駆除」しようという傾向がある。
 一部の業者が行っているアメリカカンザイシロアリなどの乾材シロアリ対策がそれである。
 そもそもマニュアル化できないにもかかわらずマニュアル化しようとするところに無理がある。小さな窓枠に数センチおきに穴をあけるとか、壁に等間隔に穴をあけて処理するというものである。
 こういうことをすると作業量は多くなるので料金は高くなりやすい。80万円という金額を提示した業者もいるようだ。かといってシロアリの生息部分に作用できているかどうかはわからないので、いわゆる「再発」にもなりやすい。そうなるとどうするのだろうか。いわば当てずっぽで処理して「再発」したのだから、さらに当てずっぽで穴をあけるというのだろうか。
 まさにシロアリ被害よりも「ドリルの被害」の方が大きくなってしまう。

2011/7