大変ひどい話

 聞いてください。結婚して家を建てたばかりだというのに、妻と家庭を奪われました。
 ある日、男二人が暴力的に家に侵入してきて私を殺そうとしたのです。しかしなんとか逃げました。
 襲撃を強行したのは私の同期の阿部と菅井(仮名)です。なんとひどいやつらか。:-(
 阿部と菅井はどちらも陰険なあの顔ですから卒業後いつまたっても結婚できなかったようです。
 そしてとりあえず生きていくために男同士つるんで生活していたらしいのですが、ある日私の家を見つけて突然襲ってきたのです。
 聞くところによれば、その後阿部は菅井を追い出して、あろうことか私の妻との間に子供まで作ってしまったのです。(T_T)
 こんなことって許されるんでしょうか?
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 許されるのだ…、ヤマトシロアリの世界では。
 京都大学の研究グループの昨年の発表によると、群飛したヤマトシロアリの羽アリは羽根を落として営巣しようとするが、メスと出会えなかったオスの羽アリは、オス同士でとりあえず営巣するという。
 これは、外敵から身を守るなど営巣までの生存率を上げるためだそうだ。
 そして近隣にオスとメスのペアの巣があると、これを襲ってそのオスを殺し、巣を乗っ取るのだ。
 しかも、オス同士で営巣していた片方しかそのメスと繁殖できないという。

 しかし考えてもみれば、メスにとってはこの方が良い遺伝子を得られるということなのかもしれない。
 人間では「なんとご無体な」と妻が抵抗するのだが、シロアリではオス同士の戦いに高みの見物を決め込んでいるのかもしれない。その瞬間を見てみたいものである。
 アメリカカンザイシロアリでも形は違うが、木材に潜り込む前にオス同士でかなり喧嘩をし、羽根がかじられて付け根だけになっているものもよく見られる。
 また昆虫全般では、オスをまったく必要としないものまでいるし、交尾したら殺されたり死んだりするオスはやたらと多い。
 オスというのはなんと因果な生き物であろうか。

2017/1