「木は腐るからエライ」!!
愛知県森林協会・三河地域林材業振興促進協議会の『三河材四方山話』というカタログにはこう書いてある。
この言葉は様々な意味合いを一言で表している。そこには資源の循環や材料としてのメッセージだけでなく生き物と家屋の関係についてのテーゼも含まれている。。
すなわち、腐るということはもともと木には木材腐朽菌などの微生物の存在が許容されねばならない。木材腐朽菌は木材に取り付けばたちまち木材を腐らせるも のではない。木材表面にしか生息しないカビ類との力関係もあってうまくバランスが取れれば、木材と長期間共存可能なのである。
木材腐朽菌が化学物質の分解などを行うことは明らかになっているのだから、木材は湿気を調整するだけでなく、こうした微生物との共存によってもっと多くの 役割を家屋に提供しているといえる。これが他の非生物材料との決定的な違いである。さらに土壁などの材料と結合すれば完璧に生き物の世界ができる。だから ヒトも住みやすいのだ。
微生物の生息が許容されるということは他の生き物にも寛容であり、それらの生息をあらかじめ仮定している。
古寺や古民家の材料をよく見ると小さな虫食い穴が数多く見られる。が、それで何か問題があるわけでもない。部分的にひどく加害された場合はそこだけ取り替 えればいい。そして面白いのは虫食いの穴は多くの場合途中で止まっていることだ。つまり、木の家にはいわば「虫の食い代」があり、雨漏りや無理な構造がな ければ「食い代」は必要以上に拡大しない。
現代の家でも建てた瞬間から多くの生き物が家屋に住み着こうとする。生き物が住めば生活の証として「汚れ」や「変色」も起きる。白木は白木でなくなる。白 木でなくなったときに日本の家屋の美しさが生まれる。”自然”ということはそういうことだ。それがいやなら、それが悪いことだと思うのなら、木を一切使わ ない家に住むしかない。
2001/9