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ベタ基礎におけるシロアリの侵入


ヤマトシロアリ、イエシロアリなど土壌性のシロアリの多くは目がなく、蟻道や泥線を環境の形に沿って延ばし、移動や採食活動を行います。
したがって、シロアリにとって形というのはきわめて重要です。
布基礎防湿コンクリートと比べてベタ基礎はその形からシロアリが侵入しにくいものと考えられますが、それでも場合によっては侵入されることもあります。
たとえばイエシロアリでは‥‥


上2枚の写真は
星野伊三雄氏(東海白蟻研究所)提供
これは、イエシロアリがベタ基礎に侵入したところですが、彼らは布基礎における場合と異なり縦方向の構造を見つけにくいようです。
蟻道はコンクリート面に水平に延び、上方向への構造を探しているかのようにも見えます。

この家ではベタ基礎周囲の基礎コンクリート設置時の金具が残っていて、その腐食に伴なってできたわずかな空隙を利用して床下内部に侵入したようです。
しかし、すぐ近くに縦方向の構造があっても、目のないシロアリはそれを認識できずに水平の動きをしています。
イエシロアリのような大規模集団では、このまま蟻道が延びて、やがては縦構造にたどり着き、土台方向へと侵入することが十分考えられます。
もちろん、一般的に言うなら、侵入口の形によっては、いきなりすぐ近くの基礎にとりつくこともあり得ます。また、基礎に断熱材が貼り付けてあれば、一気に上に食いあがります。
たとえばヤマトシロアリでは‥‥
この家では、ベタ基礎に開けられた温水管の隙間からヤマトシロアリが侵入し、蟻道の先端は押入れ内部に達して、蟻土をふきだしていました。
ベタ基礎では、ふつう基礎の金具や配管の穴は、基礎外周にできたコンクリートの打ち継ぎの段差部分にあり、家屋周囲で活動するシロアリはこの段差によって金具や穴に導かれます。
この家では、蟻道のもう一端は基礎の直角部に沿ってさらに横に伸び、先端部はたまたま「抜け節」として落ちていた小さな赤茶色の節にたどり着いて、これをかじっていました。


上2枚の写真は、関東某所で当社が撮影
施工の質も様々。それを誰が管理するのか。


上2枚の写真は
星野伊三雄氏(東海白蟻研究所)提供

左上の写真はヤマトシロアリがベタ基礎の平板部分を貫通したところ。
この場合、明らかにコンクリートの下になにか埋まっている。

左中の写真は上と同じ床下での立ち上がりの蟻道。
これはよく見ると、立ち上がりの接合部だけでなく、立ち上がりの中の気泡などから蟻道が伸びでいる。

左下の写真は水抜き穴から木片に伸びたヤマトシロアリの蟻道。
この状態そのものはとくに問題ないが、近くに断熱カバーのある配管があり、これに入られるとシロアリに勢いがつく。

「ベタ基礎だから安心だ」と設計段階で思い込んでいても、現場ではどんな施工がされるかわかりません。
誰がその管理をするのでしょうか。また、その能力があるのでしょうか。

ベタ基礎はシロアリからみると布基礎防湿コンクリートとは大きく異なり、侵入にはかなりの困難が伴ないますが、それはあくまで他のタイプの基礎との比較の話。ベタ基礎でもおかれた条件によって結果は様々です。シロアリはちょっとした環境を利用して侵入することはまれではないので、ベタ基礎であっても理屈だけで「シロアリは大丈夫」と思い込むのは考えものです。
もちろん、床下のすべてが定期的に点検できる構造なら、こうしたことがあっても対処できるので、直ちに薬剤処理と結びつけることはないのですが、床下を暖める特殊な構造のために床下にもぐれないような欠陥構造の家屋では、ベタ基礎だからといって安心できません。
また、玄関の土間はベタ基礎であっても”蟻道を作らなくても外気に触れずに形に沿って侵入できる構造”となっているので、さまざまな角度からのシロアリ対策は必要です。


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