日本の現行税制は、「シャウプ使節団日本税制勧告書」(昭和24年9月)が基本になつている。新憲法の民主主義や地方自治の原則にかなった税制を確立することを目指した勧告書である。勧告に基づき、昭和25年に実施された税制改革では、1、青色申告制度の導入に見られる申告納税制度の確立、2,所得税の累進税率構造の緩和(それまで20−80%の14段階を10−55%の8段階に緩和)、3,利子配当課税の分離課税を止め、所得税の総合課税を確立)、4,地方財源の職域範囲の確定(住民税、固定資産税の市町村税化、事業税等の都道府県税化、)が実施された。
しかし、その後、利子、配当課税に分離課税に逆戻りして、土地譲渡所得が分離課税となる等、主として資本蓄積、貯蓄増強の政策により、シャウプ税制の総合課税の原則が骨抜きにされたことは、宮島洋氏の著作により知られている。
そのシャウプ博士が消費税導入前の昭和61年に朝日新聞の当時の竹下蔵相との対談で、消費税導入の前提として、所得総合課税が不可決としているので、初心忘れるべからずとのことでここでとくに博士の談話を引用する。消費税が定着したと思い込んでいるいる人も、耳の穴をかっぽじって読んでいただきたいものである。
−直間比率を是正するため、課税ベースの広い大型間接税導入の動きが予想されます。どう考えるべきでしょうか。
「直間比率の適正値にはマジック・ナンバーといったものはない。各国はそれぞれに経済社会構造が違い、税制もそれを反映しているのだから、すべてに当てはまる指針というものもない。個人的には間接税導入はできるだけ控えるべきだと感じるが、どうしても必要だというのなら、まず税の不公平是正や各種租税特別措置の撤廃といった所得税制の改革によって税収増を図る試みをした上での話だ。竹下蔵相の言うように大型間接税の中では多分、EC型の付加価値税が一番洗練されていることは間違いない。ただ、そうした付加価値税のような間接税導入に際しては、歳入を確保する必要性が非常に大きい時までは実施すべきではない。その場合、小幅の税率では意味ない。もう一つ、実施するとしても納税者の理解を得るため約一年間の教育準備期間が必要だ。英国は導入に先だって丸一年を国民の教育期間に充てた。」(1)
日本の場合、消費税の導入に先だって所得税、法人税の一律の税率軽減がなされたが、所得税、法人税制の内部で所得再分配的な改革を実行することはなかった。国民の教育についても、一時金でお茶を濁すなど、とにかく安定財源確保のための「ごまかし」の連続であった。
シャウプ博士の言うべくところの本質は重く、税制では公平性が一番大事だということである。これがなければ、学者としての意味がない。政府の案をそのまま協賛することはたとえ反対意見があっても百害あって一利ない。
だからといって筆者は消費税の歳入面の要請など利点を否定するものではない。問題は環境整備において残された課題が多すぎることを言っているのである。議論を開かれたものにする努力がまったくなされないことが問題である。このことは多くの学者が指摘していることなのだが、いままで全然出来ないのであるから今後も、おそらく大蔵省を民営化しない限り無理であろう。
注
1:朝日新聞1986年1月25日号。