事務所ニュース

請求書等の記載事項についての重要判決(外注と家賃の請求書)

1,外注費として、ある会社が外注先に支払った、「平成3年1月20日請求日付、『金剛東分』4750000円」の記載となっている請求書について、大阪地裁は下記の判決をだしています。

「原告はその業務の一部を稲田電工に外注に出し、『金剛東分』として工事代金を支払っている。しかし、稲田電工が原告に交付した請求書、領収証には品名として『金剛東分』との記載があるだけで、その請求又は領収に係る金員が具体的に何の対価であるかを明らかにする記載や、日付についての記載はない。そうすると、この領収証又は請求書は課税仕入に係る請求書としての記載を欠くものというほかない。」注1

この請求書には、工事品名と納品日付が書かれていないというものです。製造業、建築業等を営まれる場合、下請けから収受する請求書には工事内容、納品の日付または期間、を忘れないよう書いてもらってから受け取って下さい。

2、倉庫の賃借家賃45000円を銀行振込で支払い、振込金受取書を保存している場合、について同地裁は、下記のように判決を出しています。

「しかし、この書面には、送金した金額が何の対価たる性質を有するか、つまり課税仕入の資産又は役務の内容の記載を欠き、資産の譲渡等を行った日も不明である。そうすると請求書等に該当するとすることはできない。」注2

これに対して日税連の見解は、当受取書は振込の事実について銀行が確認したものであるから、契約書とともに保存することで、請求書等に該当するものとしていました。この点について、裁判所の判断は、こちらが相手に代わってやむわえず作成した書類であるならば、請求書の記載事項を付記すべきであるというものです。欄外に「倉庫家賃5年9月分」との表示をいれて下さいというものです。

3、このように、出るところへ出ると請求書等の記載が欠けるということになれば、納税者は圧倒的に不利な立場に立たされてしまいます。というのも、「請求書等及び帳簿等の保存」が通達等ではなく、法律の本法で規定されているからです。


注1:岩下忠吾「平成11年度改正税法のポイント他」東海税理士協同組合、44ページ表より。原表の作成者税士朝倉洋子氏。原表の出所は税理士情報ネットワークシステム税法データベース編集室。

注2:同上書、43ページ。

http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/seikyusho.htm 松井吉三税理士事務所