第3章 個 人 所 得 税
2006年1月書き下ろし未定稿
松井吉三
はじめに
個人所得税は最低生活費免税を目的とする人的控除、あつらえ税に見られる各種の所得控除、さらに累進税率構造を備えることにより、応能負担の理念に最もかなう租税であると考えられている。日本でも、戦後直後のシャウプ税制改革により、課税ベースの広い、個人所得税中心の税体系が確立した。
しかし高度成長期、その後の長期停滞期をとおして、現代日本の税制は、税体系、個人所得税の双方とも、競争原理・応益課税への指向を強めてきた。1980年代中頃以後、財政が危機的状況を増すにもかかわらず、消費課税の拡充の拡充と引き換えに上位所得層の減税、キャピタル・ゲインの優遇、法人税の大減税が続いた。一方で不況の長期化により、1990年代以後格差の拡大が急激である。2000年代に至っては、二極分化社会が到来したかのようである。このような格差拡大社会を迎えて、われわれは小さな政府を競争原理で支えるのか、それとも公的部門の拡大を国民全体の負担として捉えて個人所得税を中心として応能負担で支えるのか、という選択を迫られている。われわれは後者を選択する。個人所得税中心の税体系の復活を求めるとともに、個人所得税ならではの応能負担の理念に根ざした基本的枠組み、並びに個人の多様性に配慮した個人所得税制の仕組みを再構築することが求められる。
1,
所得税の歴史と理論
(1)
所得税の歴史と特徴
所得税の歴史は意外にも新しい。1842年にイギリスで分類所得税(所得種類ごとに別々の税率で課税)として制定された。創設は1799年であるがその後廃止された経緯がある。アメリカでも19世紀後半に所得税が制定された。しかし、すべての所得を合計した金額に所得に応じた税率で課税する総合課税の所得税が確立したのは第一次大戦(1914〜1918)を契機とする。第一次大戦中の軍事費の殆どが国債によってまかなわれたために、発行された国債の元本の償還と利払いに追われて、第一次大戦後においても歳出は減らず、これをまかなうために間接消費税の増徴だけでは足りず、膨大な税収を必要としたのである。一方で、20世紀初頭以後、所得・富の格差が急激に拡大しており、税制が間接消費課税を主体としていたので、税負担の不公平が明確となった。したがって新しい所得税は、社会主義化を牽制する意味で、所得・富の不平等になんらかのかたちで配慮せざるを得なかった。現代の所得税はこのように蓄積する富あるいは富の増加を牽制する意図をもってスタートしたものといえる。
課税最低限の設定、累進税率の採用などにより、最低生活費の免税や支払能力または給付能力(ability to pay)に応じた課税を実現することができる。この意味で所得税は現在でも最も公平な租税であると考えられている。したがって、大多数の先進国で(フランスを除いて)、主要な税源となっている。日本でも2003年度以後個人所得税は、国税収入の30%前後を占め、依然トップの地位を占めている。
(2)
所得とはなにか?
所得・富の不平等化を抑制する意味で、所得税が確立した。この事情から欧米諸国の税制では、一定期間の間にもたらされた経済力の増加要因が幅広く所得として、申告すべきものとなっている。所得には、収入から必要経費を差し引いたものばかりではなく、資産の値上がり益など、幅広い富の増加が含まれる。富の増加は一般に利益あるいは利得(gain)と呼ばれる。
所得を利益・利得とする考え方は、いまから思えば当然であるように思われる。しかし起源は、19世紀後半のドイツ所得概念論争がきっかけである。当初、個人の富の増加のうち、所得は、確固たる収入源を有した収益であり、循環的に財産を拡大できるものとする考え方が支配的であった(1)。
しかし後進資本主義国ドイツ独自の社会的矛盾の拡大を背景として、所得概念が利得の内容による区分をしないように転換した。シャンツ(Georg Schanz)、ヘイグ(R.M.Haig)によれば、所得は二時点のあいだの経済力の増加である。一定期間に個人に渡った利潤を単に量の違いとして捉えるという視点から見れば、所得を経済力の増加として捉えるのが租税の公平原則にかなうからである。
しかし実際の課税にあたっては、経済力の増加をそのまま所得の定義とするわけにはゆかない。論理上、使われてしまった消費部分に課税すべきか否か不明確である。さらに、経済力の増加あるいは資金の流入をリアルタイムで捉えることは計測上も容易ではないからである。そこで所得とすべき経済力増加を増加・流入面ではなく支出面で定義して、所得概念論争にケリをつけたのがサイモンズ(Henry Calvert
Simonz)の『個人所得税』という書物(1938年)である。支出面でみれば、消費は所得であり、消費されない所得は蓄積されるしかなく、両者の合計として、所得の事後的な評価が容易だからである。
(3)
サイモンズの「総合所得税」
サイモンズの所得概念がきわだっているのは、所得を当期の個人消費と当年度の資産の増加額の合計値と定義見なしたことである。サイモンズは、所得を社会の希少資源の使用に対する支配力の行使であるとして、I(所得)=C(消費において行使された権利の市場価値)+ΔW(一定期間の財産価値の増加)の式で表している。これは、ある人が一定期間の間に得ることができたであろう経済的利得の合計を所得とするものである。このように支配力行使価値の増加を課税ベースと見るのが、サイモンズの「総合所得税」である。
ΔWの内、株式の未実現キャピタル・ゲインについては、算定が困難なこともあって、どの国でも課税ベースに算入することはない。経済力増加という観点からは、相続・贈与による所得移転についても、所得税の課税ベースに入れるべきである。しかし資産価値の純増は、所得税で捕捉されることはなく、多くの先進諸国で、別途相続税(又は遺産税)、贈与税など資産保有課税の対象となっている。しかし他の税にまかせば、その後の改正により、抜け穴も多くなることを指摘したのもサイモンズであった。
総合所得税に最も忠実なのがアメリカの個人所得税である。明確な所得区分がなく、原則として資本所得を含めてすべての所得が総合課税の対象である。日本では、所得税法上の所得の定義の狭さとあわせて、租税特別措置により、資本所得の分離課税が確立しており、総合所得税の実質が崩れかけている。
(4)ミード報告
総合所得税は、未実現の資産価値を課税ベースに含むため、理論的にも徴税技術面でも、困難な問題を含んでいる。さらに資産所得が非課税、低率分離課税となるに及んで総合所得税が不公平だとういう批判を招くことになった。
そこで総合所得税の欠陥を克服するために、投資は控除し、家計が消費した総額に累進課税するという支出税が考案された。ミード報告では、資産の売却収入などは課税ベースに加算、他方資産の取得・貯蓄などは資産の増加にあたるものとして、課税ベースから控除される。申告方式は下記の式で表されるところによる。
C(消費)=Y(所得)−ΔW(資産増加)
その後、資産購入を控除せず、また資産所得を課税ベースに算入しないことによって、上記の支出税の課税ベースと一致させる工夫がなされた。こうなると、支出税は賃金所得税と同じになる。資産所得低率分離課税あるいは非課税の総合所得税は支出税に限りなく近いものといえる。支出税の考え方では、貯蓄はすべて将来消費されるものとみなされる。
(5)二元的所得税
支出税に代わって、今時勢力を得ているのが二元的所得税の考え方である。二元的所得税は、所得を「勤労所得」と「資本所得(金融所得)」に分け、供給弾力性の低い勤労所得には高税率の累進税率を、供給弾力性が高い資本所得には低率比例課税をおこなうという租税理念である。
今日の税制は新自由主義の思想に基づき、効率化への指向をますます強めている。資本主義の危機の一層の深化にともなって、税率のフラットから一歩進み、分類所得税化が進んでいる。現代の応益課税原理は、最適課税論と支出税の考え方を組み合わせていると思われる。
最適課税論を組み入れることにより、供給弾力性の違いに応じて、所得分類ごとの税率を差別化する。勤労所得重課の思想である。ちなみに最適課税論というのは、需要の価格弾力性が大きい商品ほど低税率で課税して、課税による供給減少を避ける議論である。人頭税のような一括税は個人の経済活動から独立して決定されるため資源配分の効率性に照らして「最適」となるとされる。
また二元的所得税は、資本所得に極力課税しないということにより、貯蓄非課税を目指しており、この意味で支出税の考え方にも近い。実行可能性に難のある支出税より使い勝手が良いと見ることができよう。
二元的所得税の考え方は最近の日本の税制改革に大きな影響を及ぼしている。税制の簡素化や資本移動の可能性(金融所得課税の一元化)を評価する見解もあるが、「持つもの」と「持たざるもの」との格差の拡大が懸念される。課税ベース、累進税率構造の双方について、二元的所得税は総合所得税とは対極にある。
2、戦後日本の所得税制
(1)シャウプ税制とその後の崩壊過程
総合所得税の理念を第二次大戦後の日本の税制に忠実に実現しようとしてシャウプ博士を中心にまとめられたのが、「シャウプ勧告」(1949年)であった。シャウプ博士はサイモンズの流れを汲む総合所得税論者であった。シャウプ勧告は1950年の税制改革にその多くが実現された。シャウプ税制改革の主眼は、課税ベースを広くとり、中程度の累進課税をおこなうことにあった。個人所得税の最高税率は75パーセントから55パーセントに下げられた。申告納税制度の確立を含めて、公平・平等な社会を指向するとともに、敗戦後の日本経済の持続的・安定的発展を見据えるものであった。
シャウプ税制改革では、法人税は個人所得税の前取りとみなされ、個人への配分段階で法人税相当分を税額から控除することとされた。株式譲渡については、譲渡段階で株式の値上がり益を課税ベースに取り込んだ。譲渡などとして実現されない部分は富裕税により捕捉するものとされた。
最低生活費免税のあり方も、下位所得層に税の軽減が及ぶように、基礎控除以外の所得控除(扶養控除、障害者控除など)は算出税額から控除すべきものとされた。シャウプ税制改革は、現代の税制に照らして鑑みれば、総合所得税の理想に接近したという意味で、再評価すべきものといえよう。
その後の税制改正では、富裕税が廃止され、利子・配当・株式譲渡などの資本所得に非課税あるいは低率分離課税が認められ、土地譲渡益についても低率分離課税が認められるようになった。扶養控除などの控除も課税ベースから控除すべきものと変更された。
課税ベースが狭くなるに及んで、税収確保のために、最高税率は引き上げられざるを得ない。1980年代初頭では、最高税率は75%、税率区分は19段階に達した。1970年代までの高度成長期の日本税制は、宮島洋氏をはじめ多くの論者が指摘するように、まさしく「シャウプ税制の崩壊過程」と見ることができよう。
1980年代後半以後は一転して、個人・法人の双方で、所得課税の税率の引き下げが進行した。経済のグローバル化を旗印に、課税ベースの拡大と税率の引き下げ・フラット化というアメリカの税制改革の影響を受けたものであった。総合所得税の理念に立ち返って、公平・公正な課税のあり方を再検討しなければならないであろう。
(2)日本の個人所得税の税額の算定方法
日本の所得税法の特徴は、実現しない所得又は現金で評価できない所得は課税ベースに算入しないということである。すなわち日本の所得税法の所得の定義は利益を採用しておらず、10種類の所得区分ごとに、収入から必要経費を差し引いて、所得区分ごとに「所得金額」を算出する。
納税額算定に至るまでの流れを下記の算式で表すことができる。
所得 = 収入 − 必要経費
※所得=利益(富の増加)という考え方を採用していない。
総所得金額= 利子所得+配当所得+不動産所得+事業所得+給与所得+退職所得+山林所得+譲渡所得+一時所得+雑所得
※
総所得金額の算定にあたって、一時所得や山林所得のような変動性のある所得については、数年間に平準化するような調整がなされる。
課税所得= 総所得 −所得控除(基礎控除・扶養控除などの人的控除+人的控除以外の各種所得控除)
算出税額= 課税所得×税率
※税率は10%から37%までの4段階の超過累進税率。
年税額 = 算出税額−税額控除
納税額 = 年税額−定率減税
※定率減税は2006年分で年税額の10%(上限125,000円)。 定率減税は、2007年分以後廃止。
(3)収入と必要経費
日本の所得税法では、金銭に結実しない所得を課税ベースに含まない。したがって株式の値上がり益などの未実現利益を所得税の課税対象とすることはできない。同様に、法人の社内留保を個人に配賦して課税することもできない。帰属家賃についても、金銭に実現しないことから、課税されることはない。
退職所得、山林所得は分離課税である。利子所得については、貸付金利子を除いて、源泉分離課税であり申告することは殆どない。配当所得も分離課税あるいは申告不要である。土地の譲渡益は1969年以後原則低率分離課税である。株式譲渡益については、1953年以後長い間、非課税であった。2003年度税制改正以後は、金融所得課税一元化により、原則低率分離課税である。現行所得税制の実質は本来の総合課税の姿からかけ離れたものになっている。
必要経費は、収入獲得、維持、保全のために要した支出である。どこまでを費用と認めるかについては税務署との争いが絶えない。利子所得については、必要経費が認められておらず、収入金額が所得となる。借入利子と受取利子の相殺はできない。株式取得のための借入利子は、配当所得算定の際控除できる。
(4)
給与所得控除
必要経費で問題になるのは、非独立的労働の対価である賃金・給与所得である。給与所得にはたして必要経費があるかという問題である。給与所得者の場合は「給与所得控除」が必要経費に当たるものとされる。給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引いて算定される。
給与所得=給与収入金額−給与所得控除
※給与所得控除は最低控除額65万円、給与収入が増加するたびに増加。180万円まで40%、360万円まで30%、660万円まで20%、1000万円まで10%、1000万円超5%である。給与収入360万円では、給与所得控除は180×0.4+(360-180)×0.3=72+54=126万円。給与所得は360−126=234万円、給与所得控除の給与収入に占める割合は35%である。
前身は分類所得税時代の1913年に創設された勤労所得に対する10パーセントの控除制度である。勤労所得を他の所得とは区別してその担税力に配慮した措置であった。シャウプ税制改革でも勤労所得控除は存続し、1953年に給与所得控除制度と改称した後も控除率は引き上げの傾向にあった。「大島訴訟」(サラリーマン税金訴訟)を経て、1987年の改正では特定支出の実額控除が可能となった。しかし対象となるのは通勤費、転勤費、職務に必要な技術または知識を習得するための研修費、職務の遂行に直接必要な資格取得費、単身赴任者の帰宅旅費に限られる。労働者の労働手段は会社からすべて支給されるのが普通である。学者など特定の例外を除いて、給与所得者の必要経費というのは本当に限られた額になる。
もとより賃金・給与には収入の必要経費超過額という所得定義はそぐわない。給与所得控除は、必要経費というよりは、給与所得の小さい担税力に配慮したものといえよう。
(4)所得控除
「所得控除」は最低生活費免税の考え方から出ている人的控除と、個々の納税者の支払能力を個別に斟酌する各種の所得控除から成る。人的控除には、本人控除である基礎控除、妻を対象にする配偶者控除、生計を共にする家族を対象とする扶養控除がある。各種控除は、社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除、雑損控除等がある。
人的控除の趣旨は、生計を共にする同一世帯の最低生活費部分に課税しないということである。同じ所得でも扶養する人数によって各人の担税力は異なる。そこで本人控除(「基礎控除」)のほか、被扶養者の年齢、障害の有無、同居の状況によって、扶養者1人に付き最低38万円を「扶養控除」として本人の所得金額から差引くことができる。控除額は、通常の場合は、本人、配偶者、家族とも1人38万円である。扶養家族が高校生、大学生の年齢に達している場合、控除額は1人につき63万円である。
配偶者については、扶養控除的性格の「配偶者控除」のほかに「配偶者特別控除」が設けられている。配偶者特別控除は配偶者が専業主婦(又は夫)の場合の特別割り増し控除として、家事労働に報いるものとして創設された。控除額は、配偶者の所得が増加するのにともなって、段階的に減少する。2006年現在、配偶者控除と配偶者特別控除の両方を控除することはできない。例えば給与収入が105万円である妻を夫の配偶者控除の対象とすることはできない。その代わり配偶者特別控除として38万円を納税者本人の給与所得などから差し引くことができる。配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額1000万円以下の納税者で、且つ給与収入が141万円未満の配偶者がいる場合に適用できる。
所得控除の租税受益は課税最低限以下の低所得者に及ばない。この点、アメリカでは人的控除は消失控除であり、高所得層は人的控除を受けることができない。低所得者に等しく租税受益が及ぶようにするためには、人的控除に税額控除を導入することも考えられて良い。
(5)
その他の所得控除
人的控除以外の所得控除は、政策的意味合いから税負担を軽減することを主な目的としている。主なものは次のとおりである。
@ 社会保険料控除 健康保険料(又は国民健康保険料)、厚生年金保険料(又は国民年金保険料)、雇用保険料などの社会保険料の年間負担額を控除。支払義務のある社会保険料の公的負担的性格に配慮したもの。
A 医療費控除 治療・出産のための診察・入院・通院費用。通常10万円以上が医療費控除の対象。
B 生命保険料控除 日本独自の控除。民間生命保険の支払額に応じた控除。年間支払額10万円以上は一律5万円の控除である。個人年金の保険料についても、同額の控除が新たに創設され、現在まで引き継がれている。
C 損害保険料控除 民間の損害保険の支払額に応じた控除。控除額の上限は、保険期間が10年以上且つ満期返戻金のあるものが1万5千円、その他は3千円である。
D 寄付金控除 公的機関などに1万円以上の寄付をしたときに認められる。
E 雑損控除 盗難、火災にあった場合など、家事上の損害に配慮したもの。損害額と所得額に応じた控除額となっている。
(6)税率
2005年現在一般の税率は、課税総所得金額330万円までは10%、900万円までは20%、1800万円までは30%、1800万を超える部分は37%である。500万円の課税所得の納税者は、330万円の10%である33万円に、170万円(500-330)の20%である34万円をプラスした67万円が所得税額である。
土地、株式の譲渡などの所得は総合課税の対象になる総所得には入らず、総所得とは分離されて、一般の税率より低い税率が適用される。2005年現在、長期保有土地の譲渡所得の税率は15パーセント(ほかに地方税5パーセント)、株式譲渡については7パーセント(ほかに地方税3パーセント)である。その他の資本所得も原則低率の分離課税とされて、確定申告に及ばなくなっている。総合課税の建前を採用しているにもかかわらず、資本性所得の分離低率課税により、日本の所得税は大幅に税の脱漏が生じている。
(7)税額控除、定率減税
「税額控除」は年税額算出のために「算出税額」から控除するもので、配当控除と、住宅取得の際に要したローンの残高に対する控除(住宅借入金等特別控除)で殆どを占める。税額控除の代表は、住宅借入金特別控除である。向こう10年間にわたり0.5〜1%を最高40万円まで税額から控除できる住宅取得促進税制である。
定率減税は、1999年に「恒久減税」としてスタート、税額控除後の納税額を一律カット(20%、最高25万円)することにより、表面税率を低下させるものである。定率減税については、2007年分から全廃である。
3、所得税の現状
(1)所得分配の格差
日本の場合、高度成長期を中心として、給与所得者数が激増した。給与所得者数は1955年から2000年にかけて、約5.1倍になり、総人口比でも約3.6倍になっている。2000年の給与所得者数は5,269万人、人口比は41.5%である。ただしその中身を見ると、1980年以後は給与所得者数の伸びが緩慢であり、1990年代以後ではとくに緩慢である。1990年代の給与所得者数の伸びは短期間労働者の増加によるもので、2000年以後は正社員数が減少し続けている。(1)
実際の所得分配の状況も、高度成長期の一定の改善と1980年代以後現在に至る長期停滞期の不平等化、なかでも1990年代の不平等化を指摘しなければならない。不況期が長いということは、それだけ生活上の諸困難、格差が拡大していることを意味する。一方で、1980年代後半以後1990年代前半にかけてのバブル期を中心として、土地長者や株長者の出現が目立っている。1990年代には、上位所得層の地位が落ちずに、一方的に中堅層以下が没落した。
格差という点では、貯蓄の無い世帯の割合や貧困世帯の割合を長期間観察することも有益である。金融広報中央委員会の調査によれば、貯蓄が無い世帯の割合は、1980年に5.3パーセントであったのが、1990年9.0パーセント、2005年現在では実に23.8パーセントに上昇している。(表3−1参照)
各種ジニ係数(2)の推移を見ても、上記の不平等化現象の一端を垣間見ることができる。(表3−2参照)。しかし、総務省の家計調査など勤労者世帯に絞った統計は、社会の上位層と下位層が調査対象から外れてしまうので、実際の格差はそれ以上である。
(2)所得税の負担構造
所得税の最高税率が低下していることと、最低所得税率が10パーセントのままであること、分離課税の温存・税率低下により、1980年代後半以後、所得税の再分配効果は再分配係数の数字以上に低下しているものと思われる。二極分解の上位一極を除いて、所得税負担がフラット化しているということでもある。
まず戦後の所得税の負担水準に目をやると、所得税の収入あるいは所得に占める所得税の負担割合は、一定の水準以上には上昇しないように措置されているようである。なかでも申告所得税に比較して給与所得税の負担水準は低いものといえよう。2003年の所得税の平均負担率は、申告所得者11.7パーセント、給与所得者4.3パーセントである(3)。
平均所得税負担率の低下にともなって、所得税の再分配効果も低下している。再分配係数(課税前後のジニ係数の低下割合。不平等の改善度の指標)の推移を見ても、1980年から2003年にわたって、約3割低下している。給与所得税の負担水準が低いこともあって、給与所得税の再分配効果は申告所得税に比較して低い。給与所得者の所得税の再分配係数は、申告所得者の所得税のそれの約4割程度の水準で推移している。(表3−2参照)
次に所得階級別に申告所得者の所得税負担率を推計すると、最高所得階層でも所得税の負担率は2000年代では25%程度に低下している(表3−3参照)。1990年頃と比較すると約5ポイント程度低下している(表3−2の中の高額申告所得者の所得税負担率の欄参照)。最高所得階層では土地、株式の譲渡所得など、優遇的な分離低率課税が認められている所得が、所得の一大構成部分を成すので、負担水準は土地・株式の譲渡所得の実現が多い年分で大幅に低下している。2004年のデータでは、分離長期譲渡所得は全合計所得の7.9パーセント、株式等の譲渡所得等が3.3パーセントを占めている。(4)
そこで所得階級別データを使って、実際の所得税負担率と、「合計所得」(5)の全部を総合課税した場合の理論上の所得税負担率を推定した(表3−4参照)。著者推計によると低所得階層では両者の差は殆ど無いが、最高所得階層ではかなりの開きがある
(3)忍び寄る大増税と税負担構造
現在、財政赤字の悪化を防ぐために、「簡素な政府」、「小さな政府」を志向して、「広く、薄く」課税する税制改革が進行中である。消費税の税率アップを仕上げに、個人所得税の大衆課税化の仕組みを徹底しようとするものである。
すでに個人所得税では、配偶者特別控除(配偶者控除の上乗せ分)が廃止されている。2005年分からは、老年者控除が廃止され、公的年金控除が縮小されている。公的年金控除と老年者控除はセットであり、65歳以上の最低保障額140万円と老年者控除50万円を廃止するかわりに、65歳以上の最低保障額を65歳未満の最低保障額70万円に50万円を加算して、120万円とするものである。しかし従来は最低保障額140万円のほかに50万円の老年者控除が適用されたので、年金所得者の課税最低限は大幅に低下したことになる。
「恒久的減税」である定率減税については、2007年分から完全に廃止される。定率減税は所得税・住民税で最高29万円が税額から差し引かれていたので、廃止による税負担の増加額は、世帯年収1500万円前後上位所得層である。しかし税負担の増加率で見れば、非納税者以外の低所得層でより大きいこと(所得税20%、住民税2%の各最高増加率)が知られている。配偶者特別控除の廃止と合わせれば、税負担の増加率は、世帯年収500〜600万円の所得層を中心として増加率が前後に下がるという税負担構造になることが知られている。
他方配当、株式譲渡益については、2003年分から、金融所得一元化の提起により、原則10%の比例課税で、原則申告不要となっている。
さらに今後は、政府税制調査会により、配偶者控除の廃止、給与所得控除の縮小、特定扶養控除の廃止など課税最低限の縮小が示されるとともに、最低税率の倍増(10%から20%へ)による税率幅の縮小が示唆されている。
政府税制調査会の「個人所得課税に関する論点整理」(2005年6月)では、定率幻影廃止、給与所得控除半減、特定扶養控除・配偶者控除廃止が実施された場合の個人所得税・住民税の増加額、増加率が示されている。それによれば税負担の増加率は低所得世帯ほど大きい。年収400万円の世帯(夫婦子2人、片働き)では7.4万円から34.1万円に増加する。増加率で見れば、461%である。他方2000万円の世帯では増加率32%である。
所得税の課税最低限の縮小、定率減税の廃止により、納税者数の拡大による低所得層の税負担増、中間・中堅所得層の税負担の大幅アップが見て取れる。社会保険料についても、大幅な負担増が決まっている。他方法人税については、引き下げという議論はない。今回進んでいる税制改革は税負担を金持ちから中低所得層へ移行することによって、所得税の財源を確保しようとするものといえる。
4 個人所得税の課題
(1)課税最低限
税額が発生する最低の課税所得のことをいう。夫婦と子供2人の世帯で、子供の1人が大学生である場合の課税最低限が財務省より示されている。日本の給与所得者の個人所得税の場合でいえば、325万円が課税最低限とされる。内訳は給与所得控除が115.5万円、基礎控除38万円、特定扶養控除63万円、扶養控除38万円、配偶者控除38万円、社会保険料控除32.5万円の計325万円である。自営業者の場合は、給与所得控除が無いわけであるが、その代わりに青色申告所得者の場合には最高65万円の青色申告控除が容認されている(以上2006年現在)。
諸外国の減税政策が先行していること、2004年以後専業主婦の配偶者特別控除が廃止されたことにより、日本の課税最低限の水準は先進諸国のうちで最低水準になっている。
アメリカでは子女税額控除が17才未満の扶養子女1人につき1000ドル認められている。これは所得控除に変換すると10,000ドルである。子供の内1人が17才未満であるとすれば、人的控除12,400ドル(3,100ドル×4)、標準控除9,700ドル(夫婦合算課税の場合の最低控除)と合わせて、課税最低限は32,100ドルとなる(2004年現在)。邦貨換算レートを1ドル115円と仮定すれば、邦貨換算の課税最低限は369.1万円である。さらに1ドル131円の購買力平価(内閣府が調査した2000年の購買力平価)で換算すると、邦貨換算の課税最低限は420.5万円となり、日本の課税最低限を大きく凌駕する。2004年現在の税法と実勢為替相場により課税最低限を比較すれば、日本325万円、アメリカ369.1万円、イギリス326.8万円、ドイツ491.8万円、フランス386.9万円である(財務省の調査による)。
しかも日本の課税最低限の中身が問題である。給与所得控除と社会保険料控除が入っている。これはアメリカではともに認められていない控除である。課税最低限が低いのにもかかわらず、中堅所得層の実際の所得税負担水準がアメリカより低い原因となっている。アメリカと日本では、税率構造が似通っているだけに、両所得控除による課税ベースの大幅な縮小が日本所得税構造の特徴の一つである。
(2)課税単位
所得がある個人ごとにそれぞれ納税するのか、それとも世帯まるごと合わせて納税するのかという問題である。日本、イギリスでは、個人ベースである。アメリカ、ドイツでは夫婦共同申告、フランスでは世帯単位課税が認められている。夫婦共同申告の場合、夫婦の所得を合算した金額を2で割りその答えを2倍した金額が夫婦の納税額である。具体的な納税額算出にあたっては、ドイツの場合、税率表は1本である。アメリカの場合、単身、夫婦個別、夫婦共同、家長という申告資格に分けて別々の税額表が用意されている。高所得部分で単身申告の場合の税額が一番高い。夫婦個別申告の場合では、10%の税率が適用される最高所得は7,300ドルであるが、夫婦共同申告では14,600ドルである。共同申告の税率のブラケット幅を倍にすることで、夫婦個別申告と夫婦共同申告の負担の公平を期している。片稼ぎの場合の税額と夫婦同額所得の場合の税額は同じである。しかし夫婦両方に所得があり、どちらかが控除をフルに活用できない場合では、夫婦個別申告は明らかに不利である。このために独身時代の単身申告から夫婦共同申告への移行により、「結婚のギフト」といわれる租税便益が生じることが指摘されている。欧米先進諸国では共稼ぎが通常であり、控除のフル活用という観点から、夫婦共同申告を選択することが一般的であると思われる。日本でも妻が正規社員として結婚後も働くケースが増加している。能力に応じた負担からいえば、税負担は生活単位とすべきである。日本でも働きかたや生活様式の多様化にあわせて、選択肢を広げることが必要である。
(3)少子化対策
少子高齢化社会では、消費税増税などにより負担を分かち合うのが必要であるとの議論がある。
少子化について言えば、将来の教育費負担などを恐れて、子供を増やせない状況がある。税制でやれることは、最低の教育費を課税最低限に折り込んで、教育費の免税枠を拡大することである。現在日本では高校生・大学生にあたる年齢の扶養親族について、38万円の扶養控除に25万円を特別加算した63万円の「特定扶養親族控除」が認められている。本来は初等教育の控除をより増やすべきところである。中等・高等教育にお金がかかる状況を特別に配慮したものである。このことは扶養控除の水準自体が少ないことを物語っている。アメリカでは17歳未満の扶養家族について人的控除とは別に1人1,000ドルの税額控除が用意されている(夫婦共同申告の場合11万ドル以下の所得世帯に限る)。アメリカの高等教育は一部私立大学の例外を除いて、日本よりもおしなべてかなり安い。
中等・高等教育にお金がかかるのにもかかわらず、今般政府税制調査会では、特定扶養親族控除の廃止を求めている。少子化に歯止めをかけるどころか、税負担の増加により、ますます少子化を加速させることにもなりかねない。
(4)政府税調の方向性
ところで定率減税の全廃が政府・与党により提案されている。定率減税は中堅所得層の税額を大きく減らすので、社会全体から見れば所得再分配効果は僅かであるとはいえマイナスである。しかし低所得者の視点で見れば2割の減税は大きい。十把一絡げではなく、多様性に配慮する立場からいえば、定率減税の一律全廃は、消費税率のアップ、社会保険料の料率アップと並んで、中低所得層の世帯の生活水準の引き下げをもたらすので、負担配分の公平性の原則に反するといえる。
配偶者控除の廃止も日程に上がっている。老年者控除については、2005年から廃止された。給与所得控除の縮減も近いうちには実施されるであろう。
(5)税率構造
二元的所得税の立場から、資本所得・金融所得に対する負担軽減と税率の一元化が進んでいる。とりわけ上位所得者への減税政策の行き過ぎに対して、高所得部分に対する一般の税率・分離課税の税率の引き上げが必要である。資本所得については、実質分離課税を原則総合課税に戻すことが求められる。中低所得者については最低生活費免税の立場から、所得控除の増額・再編成が求められる。さらに消費税率の急激なアップが実施される場合などは、税額控除の創設といったところも求められる。
租税原則の立場からは、少なくとも最高税率については、1999年の税率改定前の水準の50パーセントに戻すことが必要ではないか。控除の縮減についてもその必要はない。資本所得の分離課税についても、原則総合課税の制度に戻すべきである。長期保有土地の税率も2003年以前の水準に戻すべきである。定率減税についても全廃ではなく、低所得分について残すべきである。
減税の方法としては、アメリカでスタートして先進諸国に広がっている勤労所得税額控除を紹介しなければならないであろう。アメリカではEITC(earned income tax
credit)として知られている。税法上適格な子供があり且つ仕事をしている低所得者へのインセンティブとして税額控除を与えるものである。控除額は、所得が上昇するにしたがって増加した後徐々に消失する。現在は子供を持たない場合にも控除額は微々たるものであるがいくほどかの控除ができるように拡充されている。税額控除が確定税額を超過する場合はその差額が還付されるのがEITCの特徴である。夫婦共同申告で子供2人を持ち、勤労所得の合計額が11,000〜16,399ドルの場合、控除額は4,400ドル(最高限度額)である。勤労所得が上がるにしたがって控除額が逓減する。アメリカでは2000年代に入り、相次ぐ減税により中堅所得層の負担が大きく緩和されている。
(6)望ましい税体系
格差の小さい社会では累進課税など再分配政策の必要性は少ない。全員が貧乏であれば、憲法上の生存権も意味をなさないであろう。しかし現代は、資本主義の成熟期を過ぎて、少数のお金持ちと没落中間層、高失業で象徴される二極分化社会に到達している。二極分化傾向は日本の2000年代の日本でとりわけ強まっている。それ故に、一般的な格差拡大とあわせて、貧困の多様化に応じた税制を構築することが求められる。
所得税制は、基礎的生活ラインと、別途、多様性が最も強調されなければならない。そのためには、すべての所得者について人的控除を大幅に拡大するとともに、納税者の状況を個別的に配慮する諸控除を充実させなければならない。また高額所得者に対しては、給付能力に応じた負担を求めることである。
給与所得課税については、給与所得控除が必要経費ではなく、担税力に配慮したものであることを明確にすべきである。給与所得を得るにあたっては、必要経費を要する所得者もいる。それらの人は確定申告にて必要経費を控除すべきである。したがって高額給与については、給与所得控除を認めるべきではない。他方労働性所得については、最低生活費免税を給与所得控除よりも、人的所得控除、あるいは税額控除の拡大により、確保することが必要ではないか?
注
2)森裕之(2001)「サイモンズ『個人所得税』」宮本憲一、鶴田寛巳編『所得税の理論と思想』税務経理協会、151頁参照。
1)給与所得者数は、国税庁『税務統計から見た民間給与実態』各年分の1年以上勤続者と1年未満勤続者の合計。人口比は、財務省『財政金融統計月報 租税特集』各年分により著者が計算。
2)下図のA/(A+B)がジニ係数である。所得の低い方から世帯あるいは人員の累積比を取り、下から何パーセント目(累積比)の世帯が全体の何パーセントの所得を得ているかを曲線で描いたものがローレンツ曲線である。ローレンツ曲線と45度線で囲まれた弓形面積の、45度線と累積比線で囲まれた大きい三角形面積に占める割合がジニ係数である。値はゼロから1までの値をとり、値が大きいほど不平等な所得分配である。

3)『申告所得税標本調査結果 平成15年度』
国税庁HP(http://www.nta.go.jp/category/toukei/tokei/h15/sinkoku.htm
総括表1ページ、アクセス日:2005年11月25日)。『民間給実態統計調査結果 平成15年度』国税庁HP(http://www.nta.go.jp/category/toukei/tokei/h15/minkan.htm18ページ、アクセス日:2005年11月25日)。
4)『申告所得税標本調査結果 平成16年度』国税庁HP(http://www.nta.go.jp/category/toukei/tokei/h16/sinkoku.htmアクセス日:2005年11月25日)、8ページ。ここでいう株式等の譲渡所得等とは申告分離課税の株式等の譲渡所得をいい、上場株式等で「特定口座」で取り扱われ、源泉徴収税だけで納税が完結する譲渡所得を含まない。
5)「合計所得」とは事業所得や給与所得などの総合課税適用の総所得に分離譲渡所得(短期・長期)、株式等の譲渡所得等、山林所得、退職所得をプラスしたもの。
6)所得から事業主負担分の社会保障税などの所得調整控除を差引いた所得が調整総所得(adjusted gross income)で、これから人的控除(exemption)や項目別諸控除(itemized deduction)を差し引いて課税所得が算出される。項目別控除の合計が標準控除(standard deduction)よりも少ない場合、標準控除が適用できる。所得が多くなれば標準控除を選択するのは稀である。
参考文献
(1)
森重信樹(2004)「二元的所得税と金融税制一元化」証券税制研究会編『二元的所得税の論点と課題』、231-256ページ。
アメリカでは、人的控除が1人3,100ドル、標準控除(6)が単身の場合4,850ドルであり、独身で単独申告な場合の控除合計は7,950ドルである。購買力平価131円(内閣府発表2000年分の東京円/ニューヨークドル)で円換算すれば約104万円が課税最低限である。一方、その規準でいえば日本は38万円にすぎない。アメリカでは人的控除のほかに、税額控除としての子女税額控除(child tax
credit)が拡充されている。夫婦共同申告の場合では、調整総所得(adjusted gross
income)(6)が11万ドル未満、且つ17才未満の適格な子女を持つ場合、子女1人につき1,000ドル(最高額)の税額控除である。1000ドルの税額控除は所得控除に換算すれば最低約10倍である。日本円では131万円の控除になる。
(4)累進税率の構造
1980年代後半以後所得税の再分配効果は大きく減退した原因は所得控除の引き上げ以上に、総合課税の表面税率の緩和と分離課税制度の定着が大きい。一般の税率の最高税率は75パーセント(1983年)から37パーセント(1999年以後)にまで低下した。税率の刻みも19段階から4段階に減少した。
最高税率が高くても他方で分離課税・非課税制度が定着しているので、所得税の最高税率がイコール実際の負担割合ではない。1969年に長期保有土地に対して低率分離課税制度が創設された。株式等の譲渡所得についても、申告分離課税制度の原則を維持しつつも、源泉徴収税だけで納税が完了する源泉分離課税が多年にわたり措置されている。また利子所得の源泉分離課税、配当所得の源泉選択税率、少額配当申告不要制度などの優遇措置が貯蓄奨励の観点から多年にわたり継続されてきた。2003年度税制改正では、配当所得についてはこれまでの源泉選択税率が廃止となり、総合課税あるいは申告不要制度となり、源泉徴収税率も株式譲渡所得や利子所得と同じ水準に引き下げられた(大口の例外あり)。