「害虫」だからといってシロアリがいなくなっていいわけではありません。シロアリの役割、存在意義を考えてみましょう。
シロアリの活動によって土壌が耕され、土の移動とともに菌類が運ばれたり、有機塩類が蓄積されたりして土壌が豊かになり ます。
オーストラリア北部では、シロアリ塚の崩壊した後の土地では植生が一気に豊かになり、赤道直下にもかかわらず砂漠化しな いのはシロアリの活動によるものとされています。
難分解性化学物質を分解する菌類も豊かな土壌には存在しますが、これらの菌類は植物由来のリグニンのある環境で増殖する といいますが、シロアリはセルロースを栄養としてリグニンを糞として排出するものです。
シロアリの羽アリが羽根を落として営巣できる確率は0.01%程です。ほとんどがそのまま死ぬか、他の生物の餌となり、 「巣別れ」というより「リストラ」のようなものです。
シロアリの体の栄養価は高く、単位重量としては牛肉以上のタンパク質を含むし、豊富なアミノ酸も含みます。
だから、他の生物にとってはシロアリの羽アリは、年に一度のボーナスのようなものです。
つまり、シロアリは他の生物が餌にできない木材を栄養に変えて生態系に提供しているのです。
森林では、シロアリによる倒木や落ち葉など不要な植物の分解、弱った樹木の間引きなどを行います。
建物の周囲でも、シロアリは不用な植物の分解者として、健全な地面の「地力」の一端を担っています。