リフォームや耐震補強が盛んになっていますが、注意しないとシロアリを新たに呼び込み、せっかくの工事が台無しにもなりかねません。にもかかわらず、シロ
アリ対策との兼ね合いがほとんど考慮されずに施工されているのが現状です。そこで、いくつかの注意すべき点について明らかにします。 |
前提としての配慮 --- 環境を変えると生き物は大きく動く
シロアリを含めてあらゆる生物、とくに土壌生物は家屋の構造に変化があるとそれに対応して普段よりも大きく動き、新たな姿を見せます。 |
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耐震補強の注意点 |
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家屋外部に支えをつける場合
堅固な支柱や大型の金具で家屋外部から補強する場合、基礎表面との接合部はシロアリの侵入の可能性が高まります。 |
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基礎に基礎を添える場合
これは基礎断熱と同じく接合部全体が侵入しやすい構造になります。 |
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床下に基礎を増設する場合
この場合は、新しい基礎によって床下が区切られて点検不可能な空間ができてしまいます。 |
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上記の各構造以外でも、地下と家屋とを結びつけるものがあれば同様の対策が必要となります。 |
リフォームでの注意点 |
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すべきこと ・部屋の増築ではその床下を点検可能とする ・既設部分との間の基礎が二重にならないようにする ・隠れてしまう基礎の装飾や仕上げモルタルは撤去する ・ユニットバスの床下は点検可能とする ・土間から床に変えたトイレ等の床下も点検可能とする ・隠れる旧玄関の落とし柱は基礎の上に上げる ・旧上がりカマチのブロックの立ち上がりは撤去する ・天井裏のすべてを点検可能にする ・土間式の浴室等を作る場合は必ず高基礎とする |
やってはいけないこと ・浴室やトイレなどの土間床の上に転ばし根太で床を張る ・床下を点検不可能な高さや構造にする ・配管などの支えとして木杭を打つ ・床下通風孔(人通孔)を塞ぐような束立てや配管など ・基礎や壁などを複雑にする ・乾材シロアリ地域での天井裏や床下のない構造 ・古い土台などをコンクリートで覆う ・土台に土が接するような花壇の設置 ・ポーチの柱などの土間への埋め込み ・上がりカマチの土間への埋め込み ・発泡系断熱材の型枠への転用 ・蟻害材に専門的判断なしに防蟻剤を塗って済ませる |
----- このほか、土壌性シロアリが活発な地域では屋上緑化などは避けたいものです。 |
古民家リフォームでの注意点 古民家では基礎が低く、そのまま防湿コンクリートを流すと土台がコンクリートに埋もれてしまい、「木材を空気にさらす」という古民家の原則が壊されることになります。そしてこれがシロアリ被害の条件となります。 したがって防湿コンクリートを打つ場合は、必ず防湿コンクリートの厚さだけ土を撤去し、コンクリートの仕上がり面が以前の土の高さになるようにしなくてはなりません。 さらに、従来のタタキにコンクリートを打つことが土壌生物の動きに大きな影響を与え、場合によっては長い間建物に関与せずに生息してきたヤマトシロアリの大きな動きを誘うことにもなることを念頭に置くべきです。 また、ステップなどをコンクリートで作る場合や土間床の部屋を新設する場合は、必ず土台などの構造物から離して設置する必要があります。 外周部も従来の低い基礎を露出させるべきで、外壁で覆うとかモルタルで上塗りすべきではありません。ましてや断熱材を基礎に貼り付けるなど論外です。 耐震目的で基礎を増設する場合も、古い土台にコンクリートがかぶさらいようにしないと、シロアリ被害によって逆に耐震性能を低下させることもあります。もちろん床下のメンテナンスができなくなるような構造(根がらみの増設も含めて)は禁物です。 浴室は原則としてユニットバスとし、あえてタイル式(土間式)のものを設置する場合は四方を高基礎にし、入口付近の木材をできるだけ少なくすべきです。 |
![]() 上のように土台にかぶさるような防湿コンクリートを流すと土台がコンクリートに埋もれてしまいます。 この状態で表面から薬剤を吹き付けても、埋もれた土台の底面や土中に生息するシロアリには届きません。 ![]() 上のように本来の土の高さになるように土間コンを打てば、束石や土台の下端も露出し、シロアリ対策やその他のメンテナンスをする上で有利になります。 |
● 耐震補強でもリフォームでも対策の中心はどこかでシロアリを露出させることです。
しかし、そうした点での判断は建築士や工務店で難しい場合も多く、シロアリ被害があってもその部分に素人判断で手近な薬剤を塗って済ませてしまうことがよく見られます。これでは後で困ります。 改修補強の際にはできるだけ駆除経験豊富なシロアリ技術者に相談することが大切です。 |