水害時のシロアリ対策の考え方
 台風による水害が手が目立つようになりましたが、床上や床下が浸水した場合、シロアリ対策はどのように考えたらいいのでしょうか。
 ここでは主に、日本の約8割を占めるヤマトシロアリのみの地域について考えます。

・湿気とシロアリ被害は関係ありません。

 床下に水が侵入することで木材が湿ってしまい、シロアリが発生するのではないかと心配される向きもあります。しかし、シロアリは湿気に「発生」するものではありません。どんなに湿気があっても、いないところにはいないのです。
 また、シロアリは水を大いに嫌います。彼ら自身でコントロールできない量の水、多すぎる水は彼らにとっては危険物にほかなりません。だから、庭先の雨の当たる地面では、雨に影響されない木の根の裏側、石やコンクリートの下で生息するのです。
 カビもまたシロアリにとっては危険物です。一旦シロアリがいなくなった蟻道や活動空間にシロアリが戻らないのは、彼らがコントロールできない規模でカビが生えてしまうからです。
 したがって、水没した床下ではシロアリの心配はないし、水が引いた後の湿気や泥もシロアリを「発生」させることはありません。
 一時的なカビは木材を腐らせることはない(木材腐朽菌とカビとは異なる生き物)ので、あまり心配することはありません。
 とりあえずは床下の排水と乾燥に全力を上げることが大切ですが、少々水が残ったり湿っていてもシロアリで心配することはありません。
 そして数年後、床下などの状況を点検すれば安心です。

・防蟻剤を撒く必要はありません。

 シロアリ対策としては、乾燥して従来の湿度に戻った後、数年後に床下を点検して、シロアリの兆候がなければ、とくに防蟻剤を撒く必要はありません。 とくにベタ基礎では、その構造自体に防蟻性能がありますのでなおさらです。
 床下浸水となると、過去に薬剤を散布したときのいわゆる「保証」は失効することがあります。しかし、駆除したのなら死滅していなくなったし、もともといないところにはいないのですから、長期間薬剤が存在する必要はありません。また、防蟻剤に消毒効果はないので、消毒は別途に考える必要があります。

・水害はシロアリを動かします。

 地表が水に覆われるとシロアリもまたかなりの規模で死滅します。しかし運良く生き残ったものは環境変化を察知し、建物に関与するかどうかにかかわらず、環境が安定した後に一気に繁殖・増長します。これは新築工事やリフォーム後の動きと同じです。
 ただ、動くと言っても特殊な事情でもない限り、庭先のヤマトシロアリが建物に侵入しようとして移動するとか、隣家からこちらに移動するということはありません。あくまで、直下のもの、基礎周りのものが動くのです。
 そしてヤマトシロアリ地域では、シロアリが動いてから対処しても、必ずしも「手遅れ」にはなりません。
 いずれにせよ、建物の変化の確認も含めて、数年後の点検の意味は大きいといえます。

・今後建物を立てる場合の工夫

 停電で排水ポンプが使えないことを考えれば、容易に水を排出できる床下の構造が必要です。
 最近ではベタ基礎で風窓のない基礎立ち上がりが多くなりましたが、この場合でも基礎立ち上がりとベタ基礎の接点に排水用の穴(普段は栓をしておく)を開けておけば、周囲の水位が下がり次第排水できます。
 また、床下収納庫や点検口の直下にやや深い窪みや集合舛のような穴を作っておけば、そこから大きなバケツで水が汲み出せます。できればベタ基礎表面に導水用のごく浅い溝を作ってそこにつなげておけばなお効果的です。
 合板は一度水没すると一気に劣化が始まります。したがって、せめて一階のフローリング材や壁材は無垢材にしたほうが有利です。