本来ヤマトシロアリは家屋を倒壊させるシロアリではない。庭先や基礎の外周に生息していても直ちに家屋に被害を与えるものではなく、家屋に侵入しないかぎり駆除の必要はない。むしろ当たり前の土壌生物である。 ではなぜこの家が建て替えになるほどの被害を受けたのか。それは以下の条件が大きく影響したといえる。 1.基礎外断熱構造によって本来家屋に侵入しにくい基礎外周部のシロアリを断熱材経由で導き入れた。 2.断熱構造によって床下温度が周囲の土壌温度に比べて高くなったことからシロアリを誘引した。 3.柱などが材の硬さが均一な集成材であることから被害が材の中まで拡がった。 こうした条件の家は今各地で増えているが、作る側はシロアリとの関係でまともな配慮がなく、いくつかの俗流の知識でシロアリの心配はないと施主には説明してしまっている。 この建て替え被害にあった家の周囲は、研究者の調査ではシロアリの生息密度が高いとされたようだが、実際はこの密度の高さが原因で被害にあったわけでもないし、シロアリ対策を困難にさせているわけでもない。 つまりシロアリが強かったから被害にあったのではなく、ただひとえに家が弱かったのだ。判断を間違えてはならない。 私が毎年床下を定期点検している家の中には周囲のシロアリ密度がかなり高いところがある。山の中の一軒家で、周囲は丸太が転がり、シロアリは常にたやすく 見つけられるほど多いが、薬剤処理していなくても床下にはシロアリの動きはない。最近では点検の間隔も2年に一度にしている。床下にはかつて被害を受けた 切り株も見られるが、まったく活動は停止している。 薬剤に頼らずに定期点検をしているとこれに似たような事例はそれほど稀ではないことがわかる。つまりヤマトシロアリの地域では、家の外のシロアリが多いことと家屋の被害とは別物なのである。 ここ数年、基礎断熱にかかわる被害の相談が急増しているが、多くの場合建築後5年から8年で大きな被害となっている。しかもいきなり1階の天井付近にまで侵入されている。そしてそれらの侵入は途中では察知できない。 ましてイエシロアリにもなれば、築8年で2階の床下に分巣ができてしまった例やすべての断熱材を撤去することになった例もある。「次世代省エネ」どころか ビルド・アンド・スクラップを推進して「次々世代」に大きな負荷を準備しているようだ。現場に行くだびに居住者が気の毒で心が痛む。 先日のテレビでは、性懲りもなく古民家のリフォームで外側に断熱材を貼り付けるというのをやっていたが、基礎の型枠の中に断熱材入れて接着性を保持したも のですら被害が出るのに、後から貼り付ければさらに侵入路は拡大する。暖かな家というものをどうして断熱材でしか考えられないのだろうか。 こうした構造によって最も大きな被害を受けるのはもちろん居住者であるが、販売競争のための売り物として安易に基礎断熱に乗ってしまった地元工務店にとっ ても大いに気の毒なことになる。一体こうした構造を声高に提唱してきた人(している人)たちはどう責任をとるというのだろうか。 2005/11
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