ユニットバスは「据えればいい」というものではない

 最近たて続けに似たような現場に遭遇した。浴室を土間構造からユニットバスにリフォームする現場である。
 そもそもコンクリートとタイルで固める土間構造の浴室というのは建物に無理を強いている。もともと民家の浴室というのは、別棟の水屋や土間の片隅にあっ て建物の真ん中にはなかった。それが戦後の高度成長の時期から土間と一緒に建物の中に組み込まれてしまった。しかも当初は土壁と土台で仕切られた区画に土 を入れてタイルで仕上げるものだったので木と土が接触し、しかもその部分が密閉されるので、それまで控えめだったヤマトシロアリの被害を一気に増大させ た。
 東海地域では早くから浴室に高基礎(高さ1メートル以上の基礎)が一般化していて、築40年以上の私のボロ家ですらちゃんと高基礎にして土台と土は切り 離されている。私の知り合いの地元建築士など天井付近まで高基礎にしているくらいである。これだと仮に被害が出ても生息部位が割合把握しやすい。
 しかし、地域によっては比較的新しい建物でもいまだに浴室の四周が普通の高さの土台と壁で作られている。1997年の空気循環式の家のシロアリ被害の報告書でも四周が土台のタイル式浴室だった。
 こういう場合浴槽の外壁側の土台(とくに窓下の)が被害を受けると駆除においては厄介なことになる。にもかかわらず某テレビ番組の「匠」は、せっかくの リフォームだというのに浴室をユニットバスや高基礎に改修することなく平気で普通の土台に土を入れてラス・モルタル仕上げの浴室を作っていた。建物に対す る基本的知識を疑いたくなる。

 自分の家のタイルの浴室が高基礎かどうかを知るには壁を上下にたたいてみれば誰でもわかる。たとえば下から順にたたいていくと、高基礎なら下のほうは床 面と同じコンクリートの音だが腰の高さ辺りで音が急に空洞音に変わる。そしてその音の境目が土台の位置になっているはずである。これが下から上まで一様に 床面と異なる空洞音なら高基礎でなく床と同じ高さに土台があって壁全体が木材(土壁も含む)であることになる。高基礎なら浴槽や壁と床との隙間から少々水 が滲みこんでもその下に腐るものはない。しかし、高基礎でないと滲みこんだ水は土台を劣化させてしまう。
 だからもしも高基礎でないとわかったなら、次のリフォームの機会には、是非とも高基礎にするかユニットバスにするようお勧めしたい。

 ユニットバスの普及は戦後の一時期にできた無理な構造を解消し、再び建物全体に床下構造(それ自体がシロアリ対策として機能する)を取り戻すという大きな意味を持つものである。
 つまりユニットバスによって木と土が切り離されることで、シロアリの蟻道を露出させるだけでなく、浴室をメンテナンス可能にし、建物からブラックボックスを解消できるのである。
 であるなら、ユニットバスにリフォームするということは、古い浴室内の床タイルやコンクリートだけでなく、その下の土も他の床下と同じ高さまで撤去して点検可能な床下に戻すべきであろう。
 ところが、こういうことを理解しない工務店がなんと多いことか。古い浴室の改修よりもユニットバスを設置できるぎりぎりのスペースを確保しただけで据え てしまう。その結果再び浴室内はブラックボックスになってしまう。とくに建材販売店から横滑りしたような「工務店」にこの傾向が強く、建物のバランスなど まったく眼中にないようである。ユニットバスは「据えつければいい」というものではないのだ。

 ユニットバスに改修する際に必要なことをまとめると以下のようになる。

・浴室のタイル床の土をすべて撤去し、ユニットバスの下の空間を他の床下同様の高さとする。
・ユニットバスの下を点検できるように基礎に点検口(少なくとも人間の上半身が通過できるもの)を設ける。(「浴槽が取り外せるのでメンテナンスできる」などという工務店はメンテナンスの意味がわかっていない)
・基礎の立ち上がりは表面をしっかりと清掃し、泥などを残さない。
・ユニットと壁の間に断熱材を入れる場合は現場発泡・充填はすべきでない。隙間というのは意味がある。
・温水パイプの保温カバーは地下から連続させない。

 話は変わるが、ある家で夏の暑さ対策と「省エネ」を兼ねて遮熱塗料を屋根に塗ったところ、逆に冬の暖かさを感じられなくなったという話を聞いた。
 建物へのかかわりというものを総合的なバランスで考えるという本来のあり方が忘れられ、個々のモノの組み合わせでしか判断しない傾向が目立つが、これは そういうものの現れだろう。個々の建材は個々に試験しているだけであって、他とのバランスには責任を持つものではないのにそれがわかっていない。前記した 「匠」のリフォームや新築番組の「先生」などもその典型であって、将来の不便さを考えることなく新しい素材や資材に飛びついて勝手気ままに導入してしま う。
 メンテナンスをするというのは建物の基本的要素であるし居住者の権利であるが、これを踏みにじる「匠」がなんと多いことか。
 民放全体が芸能事務所に支配されてお笑い番組化しているなかで、「匠」や「先生」の番組もひょっとしてそういうものかと思えてしまう。家内と毎回笑って見られる数少ない番組であるのは事実だ。

2009/8