ネット上をさまよう炭についての迷信
ネット上には建材メーカーやら建築会社、あるいは森林組合や専門会社などかなり多くの炭を販売するサイトが存在する。
炭を生活に利用することについては私も文句はない。大いに利用すべきだし、とくに、日本の森林の維持からいえば、焦眉の課題となっている竹の駆除のためにも、竹炭などの有効利用はきわめて重要だといえる。
しかし、シロアリについての迷信が堂々とかかれているとなると、私としては黙っていられない。
どのサイトでも共通しているのは、「床下の調湿機能によってシロアリがつきにくい」というものである。これはまったく間違っている。湿気とシロアリとの関 係については、本サイトの他のページで説明してあるとおりで、乾いたからといってシロアリが来なくなったり嫌がったりするものではない。
もっと恥ずかしいのは「炭からマイナスイオンが発生して、これをシロアリが嫌う」というものだ。これについてはシロアリとあまり関係のない分野のある研究者の名前まで出ている。恥ずかしくないのだろうか。せめてなんらかの根拠ぐらい示したらどうか。
私の顧客の中には、床下を大きく掘って大量に炭を埋めた方がいる。いわゆる埋炭というやつだ。各部屋すべてで埋炭されている。浴室の壁もすべて炭だ。しか し、シロアリは見事に生息している。炭の埋まった床下の中央部も、そこからやや離れた布基礎部分も同じように生息している。マイナスイオンが体にどのよう な影響を与えるか知らないが、シロアリにはまったく関係がないのだ。
笑ってしまうのは、ある設計会社のホームページだ。家屋に炭を塗るといいなどといって、新築途中の家に真っ黒に炭の粉だか液だかを塗りつけている。
ところが、それは「防蟻防腐処理」と同じように1メートルの高さまできっかり塗ってあるのだ。つまり、化学物質とまったく異なるものなのに、化学物質とまったく同じ使い方なのだ。たぶん、頭の中は薬剤の大量散布の思想がみなぎっているのだろう。
炭を塗ることで化学物質を吸い取るというのがどの程度かは知らないが、それなら床下をコンクリートにせずに、土壌を露出させたらどうだろう。一方で土壌菌の化学物質分解能力をコンクリートで封殺しておいて、炭ばかりを誉めそやすのはおかしなことである。
こうしたおかしなことは、炭だけでなく、ヒバ油など天然由来の「健康にやさしい」物質についての文章でもよく見られる。
2001/1