羽アリが飛び立とうとしたらスコールになったのではない。スコールになったとたん飛び出したのである。 我々がシロアリの調査からホテルに帰ってきたとき、猛烈な雨となった。あわてて車から荷物を降ろしていると、上から下への雨筋に逆らうように下から何かが 立ち上っている。よく見るとシロアリの羽アリだ。羽アリはそれほど大きくなく、ヤマトシロアリほどの大きさで、やや色が薄い。 あわてて合羽を着て出所を探ったら、一本の木の横の草むらである。群飛孔があったのかもしれないが雨で流されている。 飛び出した羽アリの行方を追うと、かなりの数が雨で地表に叩き落されている。どうしてこんなタイミングで群飛するのか不思議だった。 中国の文献には海南キノコシロアリ Odontotermes hainanensis が「スコールの中を泳ぐように群飛する」と書いてあるが、私はこれはかなりオーバーだと思っていた。しかし、この群飛を見て納得した。まさに泳ぐように群飛している。 こんなのを見ると、やはりシロアリの羽アリの群飛においては、やはり「分家」は副次的な側面であって、むしろ「リストラ」が本質的な側面だと実感したのである。 この日の夕食後、みんなでどんな羽アリが出るのか観察しようと車のヘッドライトを照らしてしばらく待ったがいっこうに現れなかった。 しかし、群飛は我々の意図しない時間に起きた。みんなが寝付いた深夜の2時ごろ、私がトイレにしゃがんでいると、足もとに割合大型の羽アリが1頭歩いてい た。するとその近くにももう1頭いた。そして、おもむろに後ろを振り向くと、窓枠付近にかなりの数が結集していた。そのうえ窓の外には活発に動き回る多数 の虫が見えた。 私はとるものもとりあえず、出すものも出しえずにみんなの部屋をたたいて回った。 たぶんテングシロアリ亜科であろう大型で茶色の羽アリを最初はムカシシロアリ Mastotermes darwiniensis かと思って、みんな大喜びで採取しまくった。しかし、落ち着いてよく見るとムカシシロアリだけにある臀片 anallobe がない。みんながっかりした。 ところが、翌朝私がカバンの整理をしていると、カバンの隅に一目でそれとわかる大型の羽アリが1頭だけいた。もちろん臀片つきである。なぜそうなったのか、「私の普段の行い」以外に幸運の原因が見つからない。 2002/4
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