温暖化とシロアリ、そして建築の新工法

4月5日は二十四節気でいう清明(旧暦では3月)である。二十四節気の中でも立春、春分、夏至、冬至などは有名だが清明はあまり聞かれない。沖縄では清明(しーみー)といって先祖の墓前で宴会をする風習があるが、本土で清明といえば陰陽師の名前の方が一般には有名である。
中国ではシロアリの活動について「清明に始まり白露に終わる」といわれてきた。二十四節気の白露とは旧暦の8月で今日では9月8日となっている。
4月初旬から9月初旬までをシロアリの活動時期と古人が認識したことは、従来の気候や環境ではうなづけるものではある。
ところが、今日ではこれは当てはまらなくなっている。温暖化が多くの生き物の活動に変化を与えていることはマスコミなどでも伝えられている。
我が家では毎年セキセイインコの餌に小さな蛾が営巣して困るのだが、従来は冬場になれば蛾が見られなくなる。しかし、今冬は蛾が途絶えなかった。こんなことははじめてである。
気温の上昇もそうだが、家屋の変化も原因となって、今では一年中シロアリは活動していて、清明も白露もなくなっている。
もちろん野外では冬場の活動はかなり低下するが、基礎断熱の中では、あるいは暖かな家では、外気温が氷点下になってもシロアリは動いている。

よく、気温が高いと「今年はたくさん羽アリが出そうですね」といわれるが、温度が高いと羽化が早まるのは確かだが、羽アリの数が多くなるということではな い。羽アリが多くなるか少なくなるかは、その時々のシロアリの集団の状態がそうさせているのであって、温度が主な要因ではない。
ただ、温暖条件が維持されればシロアリの活動時期が延びるので、集団の成長が早まり、羽アリを出す状態に達しやすくなる。羽アリ群飛の先走りが比較的暖かい温度環境の建物(店舗など)に多いのはこれによるものである。
見かけ上羽アリが多い年はある。それは寒暖の差が大きく、ヤマトシロアリなら「雨上がりの風の少ない温暖多湿」という典型的な条件が多い年、あるいは1日毎ではなく周期として気象変化がはっきりしている年は、羽アリが非常に目立つので多いように思われる。
逆に気候変化がはっきりしない日が続く年やうす寒い曇天の続く年は、群飛が分散し、地域格差が大きく、目立たなくなってしまう。
また、立派な政治が続くおかげで庶民の絶対的貧困化がすすみ、羽アリが出ても業者に連絡せずに我慢してしまうか市販の薬剤でその場しのぎをする傾向も強い。ということは電話を受けて羽アリの群飛を知る業者的感覚としては以前と比べて羽アリが少ないようにも見える。

一方、家屋の温暖化(密閉化も)がすすむ中で、多くの生き物が従来と違った形で適応すると思われる。断熱材のシロアリ被害はその一つにすぎない。アリ・ハ チや甲虫類などの昆虫類、ネズミやコウモリあるいはもっと大きい哺乳類、鳥類、ダニやクモ類、カビなどの微生物などが「想定外」の行動を見せるはずであ る。
また、家屋と住まい方の変化によって生き物による被害の内容も変化し、本来被害でないと思われる些細な現象が「被害」や「クレーム」になるし、逆に見えない形で深刻な被害が進行することも考えられる。

家の下に大量の断熱材を埋め込む建築工法があるようだが、残念ながら生き物との関係ではほとんど考慮されていない。その工法の説明書には断熱材がシロアリ 被害にあわないとさえ書かれている。以前、我々の生協の業者会に説明に来たその工法の関係者は、断熱材のシロアリ被害の実物を突きつけられて驚いていた。
つまりシロアリはそういうものをかじるし、シロアリ以外にもネズミ類にとっては格好の住処となるだろう。また、多くの昆虫類の繁殖場所としても利用しやす いものである。こういう物質はある生き物がそれを利用するとその跡を他の生き物が利用するようになる。オーストラリアなどのシロアリの塚のような存在にな るだろう。
ひょっとしたら「床下にビオトープを」のスローガンが、想定外の形で地下に実現されるかもしれない。
床下と異なるのは、床下は点検できるのでコントロール可能だが、地下の「断熱材王国」は人間がまったく知らないうちに繁栄することになるだろう。

ついでにいえば、建て替えの好きな日本にあっては、大量の断熱材(発泡系以外のものも含めて)の処分・廃棄の方策は建てる側の責任として住まい手にあらかじめ説明されなければならない性質のものであるが、そういう廃棄についての手順の書かれた文書を見たことがない。

いずれにせよ、今までにない「新発想」の工法や材料を推進する場合は、推進者がその使用によって生ずる事象について全責任を未来永劫にわたって負うという 文書を出すべきである。でないと裁判になると必ず「当時は知らなかった」と責任放棄することになり、消費者だけが苦しむことになるというのが現実である。

2007/4