私の甥は漫画家の佐野隆である。月刊「少年ジャンプ」(3月からは「マガジンGREAT」)で「打撃王凛(リトルスラッガーりん)」を連載している。弱 小チームに入って強豪チームと戦うというまさに絵に描いたようなスポ根漫画だが、単行本が14巻まで出るほどになっている。 なかにはこういうストーリーを「ワンパターンだ」という人もいるが、ワンパターンは必ずしもその作品の欠点ではない。絵のタッチやワンパーターンのありようしだいで人々をひきつける。 吉本新喜劇もストーリーだけでなく出てくるギャグまでわかっているのに笑うことができる。「ミス・ユニットバス」こと末成由美さんは若い芸人には芝居の 流れを大切にするように指導しているとのことだが、芝居が芝居として成り立っているからこそわかりきったギャグで笑えるのであって、同じ吉本の舞台でも流 行の芸人を主体に寄せ集めた別の番組ではちっとも面白くない。 ワンパターン代表格の「水戸黄門」だって、由美かおるさんの入浴の有無にかかわらずあれだけ長く続くのだから、数ヶ月で消える奇抜な企画番組よりもはるかに大きな人々の支持があるのだろう。 シロアリ対策におけるオーソドックスは、シロアリの居場所(巣)を探して駆除することを常に基本におくことである。これさえ堅持していればどんな種類のシロアリにも多様に対応できるし、予防とか誘殺などの手段にも有効な判断ができる。 「巣を探して駆除する」というのは数百年前からワンパターンのように言われてきたことだが、これを忘れて「より安全な新技術」とか「革命的な駆除法」などに安易に飛びつく傾向はいまだに強い。 しかしここにきて例のアメリカカンザイシロアリ対策、あるいは特殊な構造の建物の対策の必要性が高まる中で、やはりオーソドックスに帰らざるを得ないのである。 シロアリが死滅したり放棄した場所は別として、被害があれば必ずシロアリの居場所がある。これを探知して駆除する。オーソドックスなワンパターンはスポ根漫画にも似ているかもしれない。 最近、若い研究者によって解明された卵保護行動促進物質や羽アリの単為生殖、継承生殖虫(副女王)の単為発生などが矢継ぎ早に新聞で発表されている。 現場サイドから言えばヤマトシロアリの分散性やコロニーの急激な発展が非常に理解しやすくなった点で大変喜ばしいことである。 また、創始女王の死後その代替として副女王が産卵を引き継ぐという従来の説明(副女王=置換生殖虫)に疑問に感じていた我々としては、コロニーの継承と集団的な産卵が明らかになったことも納得がいく。 しかし、こうした研究者的オーソドキシーからいえば、ヤマトシロアリは自ら分裂しないことになっているそうだが現実には分断されて長期間生きている。しかも卵も産めば群飛もするし被害も生ずる。それが遺伝子的に異常だといっても現に生きているのだからしようがない。 すなわち、世の中には分裂していないヤマトシロアリ(正統)と不正常なコロニーとしてのヤマトシロアリ(分派)がいることになるのだろうか。土地が掘り 返され、建物が建てられたときから人間とヤマトシロアリとの関係が始まるわけだから、ひょっとしたら建物内部でのヤマトシロアリ被害(とくに新築直後)の ほとんどが分派によるものといわざるを得ないのかも知れない。 確かにそう考えるとある時点で突然死滅してしまう現象の説明がしやすくなるが、全部いなくならずに小集団として残っている場合が理解しにくくなる。まあ今後の研究発表を待つしかないか。 ただ、シロアリ対策の名のもとに闇雲に野外のヤマトシロアリ(正統)を全滅させるようなやり方に研究が進んでしまわないよう願っている。 ヤマトシロアリ対策では建物内部やそれにかかわるシロアリの駆除だけで十分であり、野外にシロアリがいても人間の生活になんら影響はない。 生物多様性を維持すべき時代に、よく効くからといって安易に素人が使用して意図しない環境変化に結びつくような、いわば核兵器のようなシロアリ駆除剤の開発には賛成できでない。 現在すでに微量で巣の中枢まで駆除できる薬剤はあるし、現に使用されているのだから、あとはこうした「通常兵器」の使い勝手を工夫するだけでいいように 思える。とくに近年では建物の複雑化の中で被害はあっても投薬点がほとんど見つからない現場が増え、これに対応した工夫こそが必要である。 先日の現場も建物の外周ではシロアリはまったく見つからないのに、建物内部で築4年で羽アリが出て蟻土もわずかながら旺盛に吹き出ている。こんな場合に 建物外周から遠隔操作的に薬剤を伝達させようとしても無理があるし、むしろ野外のヤマトシロアリ(正統)ばかりを「駆除」してしまいかねない。しかも素人 向けのベイト(毒餌)が各地で非常にトンチンカンな使い方をされているのを見るにつけ、なんと無駄なことかとあきれてしまうのであるから、もういい加減漫 画のような理屈だけの「システム」は作らないでほしい。 漫画は佐野隆、シロアリにはオーソドックスな駆除、これだけでいいのだ。 2009/4
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