新種のシロアリがマンションを襲う?
先日ある報道番組で表題のような番組が放映された。何のことかと思ってあわててビデオ録画の用意をして見てみたら、なんのことはないイエシロアリがマンションを加害するという九州での事例と、関東でのアメリカカンザイシロアリの被害の事例をそれぞれ報道しただけだった。
イエシロアリがマンションの高層階まで被害を与えるというのはかなり昔からあったことで、それほど特殊なことではない。また、当時でもテレビで放映されている。
また、ここで紹介されている専門の技術者によるイエシロアリの説明も妥当なもので、ナレーションの一部を除けばまちがいのない映像であった。
問題は関東におけるアメリカカンザイシロアリである。ここではアメリカカンザイシロアリを新種扱いし、「薬剤を使用しても効果がない」と薬剤に抵抗性があるかのような表現となっていた。
アメリカカンザイシロアリは、もちろん新種ではなく以前から各地で発見されては様々な対策がとられ、私も10年以上このシロアリとかかわっている。そし て、このシロアリへの対処は土壌性のシロアリとは異なるものでなければならないことも本サイトでも最初から強調しているところである。もちろん、薬剤への 抵抗性はまったくなく接触さえすればほとんどの薬剤で死亡する。
ところが番組では、新種だとするだけでなく、家屋の一部に被害が集中して家屋の倒壊に結びつくかのような冷静さを欠いた報道となっていた。
少なくともここで報じられている被害家屋のある千葉県周囲では以前からこのシロアリの発生については確認されていたはずであり、それをいまさら新種だの薬剤抵抗性だのといった大騒ぎはあきらかに正しい態度ではない。
そしてこの番組では、前半のイエシロアリと後半のアメリカカンザイシロアリをごっちゃにして「鉄筋コンクリートを食い尽くしてしまう新種のシロアリ」と語 り、「猛食新種が大繁殖」と脅しをかけていた。こんなに脅しておいて番組の最後に悪徳シロアリ業者による脅しに気をつけろというコーナーがあるというのは どういう了見だろうか。
2000/8