ヤマトシロアリの「待合室」

今年のヤマトシロアリの羽アリは結構勉強になった。
ある2x4の家から「トイレの窓枠から羽アリが出た」との知らせを受けた。確かにヤマトシロアリの群飛の形跡が窓枠にある。居住者によれば、羽アリと白い虫がその穴から顔を出していたのでスプレー剤を吹き付けたとのこと。
トイレの床下は間仕切り基礎もない開放型で蟻道はない。基礎外周には1本蟻道があったが羽アリを出す集団を維持するほどの規模ではない。壁内に雨漏りや結露もなく、基礎の仕上げモルタルも剥がれていない。
一体どこから侵入し、どのように水源とつながっているのか、それがわからない。

そこで、まさかと思ったが窓枠のある壁からやや離れた温水管を疑い、居住者の了解を得てカッターナイフで断熱材を切り取った。そうしたら、案の定そこが侵入路だった。管周りの断熱材を切り取ったところ内部が食い荒らされ、シロアリと羽アリが詰まっていた。

設備屋さんには気をつけてもらいたいところである。とくに、防湿コンクリートやベタ基礎の下から断熱材やそれに似たもので被覆された管を床や壁につなげる場合は、どこかで断熱材のない部分を作るか、取り外し可能にしていただきたい。

一方、ヤマトシロアリの割合強力な集団がいる古い民家を数年前からピンポイント駆除と定期点検をしている。一挙に駆除が完了していないが、木材とのかかわりでは生きていけない状況になっているので、今年は残存集団によって地面から直接羽アリを出すようになっている。
ヤマトシロアリはゲリラのようだと星野伊三雄氏(東海白蟻研究所)はいうが、まさにそのとおりである。とくに過去に大集団であったヤマトシロアリでは、大本営をもつイエシロアリと違って、残存ゲリラが散らばることが多い。
こうしたゲリラが厄介であるのはベトナム戦争やイラク戦争と同じで、どんなに最新兵器を駆使してもうまくいかず泥沼にはまってしまう。できることなら最初からゲリラを敵にまわさないほうが賢明である。
が、それはともかくシロアリの残存集団は基礎石の地際に群飛口を作っていた。しかも、昨年設備屋さんが配管設置のために流したコンクリートの残材の下が羽アリの「待合室」になっていて、羽アリとシロアリがぎっしり詰まっていた。
「待合室」というのは、中国ではタイワンシロアリにおいて円錐形の群飛孔の下に作られる「候飛室」とか「移植室」と呼ばれる土中の空間で、群飛の直前に羽 アリが密集する場所である。ヤマトシロアリやイエシロアリでもやや形は異なるが群飛のための「待合室」は存在するのであるが、今年はそれによく遭遇した。
前記した断熱材の配管も「待合室」となっていたと考えられる。

また別の家では、土間式の浴室の土台と外壁土台との接合部にヤモリが産卵していて、その上に「待合」のための太い蟻道(泥被)があった。蟻道を壊すとおび ただしい数の羽アリが雲の子を散らすような騒ぎとなり、ヤモリには大変な迷惑をかけてしまった。(ワンショットギャラリー参照)

今年のヤマトシロアリの羽アリの群飛は、当地では5月はじめを群飛の山場だとすると20日前後におまけのような「小山」があった。そのために「待合室」に遭遇する機会が大きくなったのだろう。
2007/6