建物の特殊構造とシロアリの群飛に思う
床下などの構造が特殊な建物では、一般に普通の民家と比べて羽アリの群飛時期が早い傾向がある。
今年もようやくツツジのつぼみが膨らみ、まだ民家での群飛の本番を迎えるのには早い時期に、こうした特殊構造の家からヤマトシロアリの羽アリが出た。
ある民家はいわゆるソーラーハウスで、昨年も一度調査した家だが、今年は昨年とは異なる部分から出ている。別のソーラーハウスでは1月には床下でシロアリ の活発な活動が見られているので、時期が早いのは理解できる。すなわち、床下温度を上げるタイプの家では、シロアリは1年中活動できる。
従来はコンクリート造の店舗や公共施設からの群飛が早いのは技術者の間では常識だったが、民家に特殊な構造が増える中で、民家での群飛が早まっているようである。
もちろん、特殊構造の民家では羽アリの原因となるコロニーの把握ができず、有効な対策がしにくいのはこれまで指摘してきたとおりである。今年調査した家で は、内断熱の断熱材がご丁寧にも二重になっていて、羽アリの群飛孔すら見つけられない。さらに、基礎の下には数十センチの厚さで一枚板状のコンクリートの 層があるものだった。
居住者には「家というものの本質は、生き物世界の中で人が住むための諸配慮ですよ」と説明し、同じ構造が永久に続く以上、こうした家でのシロアリ対策は、慢性疾患と付き合うような覚悟が必要であると納得してもらった。
もちろん、シロアリを放置すれば、慢性疾患どころか家屋にとって致命的な被害が生まれ、家は倒れなくても住めなくなり、まさに「オー、もったいない」状態となってしまう可能性もある。

それにつけても、こうした特殊な構造の床下を推進する側にほとんど反省が見られないのが問題である。ある構造の推進者はこの問題を認めて謝まり、真摯に対 策を始めたようだが、まだ多くの構造の推進者は問題点を認めようとせず、こっそりと構造を部分改良することでお茶を濁そうとしている。いや、逆にこうした 当然の指摘を「悪意あるもの」として基礎断熱一般の是非の問題に横滑りさせようという発言すらある。
悪意というなら、いまだに「シロアリが生息できない」と書かれた冊子を野放しにする方がよほど詐欺的な悪意であろう。少なくともあの文章が間違っていたぐらいは消費者に対して公表し謝罪すべきある。
いずれにせよ、こうした特殊構造で家を建て、生涯にわたってシロアリ被害に悩ませられ続ける消費者が急増するのは事実として明らかになってきている。そし て、初期の被害で羽アリの出るヤマトシロアリでのことだから「慢性疾患」で済むが、羽アリの出たときには大きな被害となっているイエシロアリ地域で被害が 本格化したときには目も当てられない事態になり、まさにこれからの「悲劇の本番」が危惧される。
さらに加えて、他方では柱や土台といった主要な構造材に芯のない(つまり、芯が残って支えられない)集成材が乱用され、しかもそれを点検できない構造が増 えているのだから、ヤマトシロアリ地域ですら「ある日柱がまったくなくなっていた」という被害も日常化しそうである。(現に集成材の多い上がりカマチでは そうなっている)
そしてそこでもまた「豪州ヒノキはシロアリに強い」といった根拠のない説明によって消費者が泣かされるのだろう。
2004/4