私の家内はある団体の広報紙の制作を担当しているので、発行時期になると忙しそうだ。時折、私に制作上の相談をしてくるのであれこれと助言する。そしてそのたびにPCの普及と文書作成とのアンバランスな関係に閉口する。 なんのことかというと、昔は原稿を手書きで書いてこれをタイプライターやワープロで仕上げたのだが、今ではPCが普及したものだから原稿提出者が勝手に複雑な書体を採用したりや変な割付をしたりしてデータで送ってくる。 それをそのまま広報紙にしてしまうとまとまりのないただ賑やかなだけの読みにくいものになってしまい、広報紙の役割を低下させてしまうのだ。 原稿を書く会員にすれば、ようやくワープロに慣れたのだからあれこれやってみたい気持ちもわかる。が、見出しをやたらとねじ曲げてみたり、虹色に着色したり、巻物や木板、紙がめくれたもの、リボンのような囲みに文字を入れたり、吹き出しばかりのバラバラ案内だったり、文字の間に画像が挟まっていたり、爆発したり、膨らんだり、もうむちゃくちゃである。 それだけ見た目が派手なら見出しもさぞ踊っているかといえばその逆で、「○○に参加して」とか「ごあいさつ」「○○開催」などというクソがつくほど地味なものばかり。こういう見出しは「読まなくてもいい」と主張するようなものである。 昔PTAの広報係をやっていた時「手書きの温かみ」を主張して手書きの広報紙を出す学校もあったが、読みづらくてたまらなかった。そのうえ1面トップから校長や会長の「ごあいさつ」が並んでいるのだから読む気も瞬時に消え失せる。写真さえも集合写真ばかりで表情がない。 手書きの温かみを感じられるのは、従来の書体を上回る美しさや内容との一致がある場合だけである。一方、ほとんどの印刷物の基本となっている明朝体は機械的に考案されたものでなく、多くの人の手によって洗練されてできてきたものであって、どこでも違和感はない。せめて本文はこの書体またはこれと似たもので統一すべきである。見出しなら時として流行りの書体もいいだろう。しかし本文まで笑ったようなポップ体にすると、読む前に特定なイメージを読み手に与えてしまう。 広報紙づくりの基本は多くの人に読んでもらうのであって、「見てもらう」のではない。 いかに本文の内容に誘導するかというのが基本である。一旦本文に読者の興味を引気付けられれば、書体はすべて明朝体でいいし、囲みや飾りの形などどうでも良くなる。 「○○に参加して」ではなく何を感じたかを、「ごあいさつ」でなくなにが言いたいのか、これを適切な言葉で見出しとし、必要なら副題として「○○に参加して」とか「ごあいさつ」を小さくつけておけばいいのだ。 本来、組織の広報文書の編集はかなり責任ある人が関わるのであって、その人の権限で文書の体裁や見出し、割付を考えるのであって、そうでなければ文書の統一性が生まれない。見出しも原稿提出者が決めるのでなく、編集者が決めるものである。例えば新聞社では1つの紙面を担当する人がすべての記事の割付から見出し、罫線の1本まで考えてつけている。たとえば、「身を切る」と言いながら莫大な税金を受け取っている政党の記事の横に一杯のうどんも食べられずに餓死した人の記事を配置するのは編集者の権限だが、これによって記事の内容が文章以上に力を持つのである。 ところが小規模な任意の団体では寄せ集めでやってしまうのがいいことのように思われていて編集者がいない。いても権限がない。これでは広報紙ではなく自己満足文書となってしまう。 もしも上記のような仕事をしておられる方がいたら、シロアリの調査も兼ねて、私が懇切丁寧、かつ体系的にお教えするので遠慮なく声をかけていただきたい。そんなことで代金はいただきませんから。 最近ではシロアリの定期点検も兼ねたPC関連の相談事が多くなってきた。 多くは年配者で息子のPCをもらって文書を作っている方からのもので「起動が遅い」「写真の背景の抜き方を教えて」「表の罫線はどうする」「新品にしたいがどれがいい」「ケータイからパソコンに写真を移動したいが」といったものが多い。 それにしてもPCやオフィスソフトなどの説明書はどうしてわかりにくいのだろうか。 考えるに、あれは理工系の文書だからではないだろうか。当面の必要とすることにはなんにも関係のないことが順番に書いてある。こういう文書にとらわれない子どもたちは使う中で覚えるが、律儀な年配者になるほど説明書を頭から読んで自らPCを嫌うようになってしまう。プラモデルだと順番に読まないと後で困るが、PCではほとんど困らないのだが…。 もっと文化系的な説明書がないものだろうか。「ファイル名の成り立ちと現状」とか「こうするとこんなことができる」とか「こういうタイプの人はこんなことが大事」とか「アイコンとはキリスト教のイコンや善光寺の前立本尊と同じで…」というような説明があってもいいような気がする。拡張子は符号といえばいいし、ドラックは「ずらす」、ドロップは「離す」でいいのではないか。キーボードもひらがな打ちのほうが初心者には速く打てる。しかも一本指でいい。そして中身さえ覚えてしまえば言葉は後からついて来る。 2012/12
|