基礎断熱のシロアリ被害は「違法」が原因?
以前このページでも紹介した基礎断熱の家のシロアリ被害だが、あるサイトでは被害の原因を構造ではなく「違法行為」だと言い張っている。
そのサイトの主張によると、シロアリ被害の原因は建築基準法違反だとして以下のように断罪している。

建築基準法施工令49条2では、木造の安全性を高める為に、地面から1m以内の外壁内主要構造部には、有効な防腐措置をするとともに、シロアリの害を防ぐ 措置をしなければならないことになっている。ところがこのA社では、建て主の健康上のことを考えて、あえて一般的な「防腐防蟻剤」を散布せず、その他有効 な措置を講じなかった。このため築数年後の木造住宅の一部にシロアリの食害が見つかった。・・これが法律違反だが更に、その後の対応も法律違反だ。対応措 置は家の外周部にシロアリ予防剤を散布したことだけ。防腐措置は行なわれていないことだ。

要するに、この主張は規定の防蟻防腐処理を行っていたなら被害は起きなかったのであり、それを報じずに基礎断熱のせいで被害が起きたかのように書いた日経ホームビルダーはけしからんというのである。
たしかに、薬剤処理がされていれば、処理されていない場合よりも一定期間は被害程度に差が出るだろう。しかし、現在の薬剤は長くて5年で劣化するし、もし も規定どおり木材に油剤を処理したなら表面にとどまっている薬剤が少ないので断熱材を食いあがってきたシロアリを阻止することは難しい。これはCCA処理 材でも通過される事実を挙げれば充分である。そして、実際に食害されたのは壁の内部であって、土台のヒバ材は被害を受けていないのである。また、防腐措置 などここではまったく関係ない。むしろあまり意味のない薬剤使用をあえてしなかった建築会社のほうが賢明でさえある。また、法律の「シロアリの害を防ぐ措 置」は何も薬剤処理でなければならないのでなく、その効果の是非は別にしてこの家のようにヒバやベタ基礎の採用も認められているはずだ。
さらに、こうした被害の場合、侵入経路は基礎外周の断熱材だから、効果のほどは別としても外周から処理するしか手はない。いや、はっきり言えば断熱材を撤 去するしかないのだ。なぜなら、床下内部からは経路が特定できないからだ。「防腐措置をしないからけしからん」というのはシロアリ対策への無知と木材保存 との混同を表明しているだけである。とにかく防腐処理をどれだけやってもこの場合まったくシロアリ対策にならないのだ。 そしてすくなくとも、報じられた被害はこれまで各地で部分的に起きてきた断熱材の被害の延長にあるものであり、明らかに構造が原因で被害を受けたのであ り、日経ホームビルダーの記事は何一つ間違っていない。
2002/2