欠陥住宅の追及に詐欺的手法はいらない
10月12日夜に「シロアリ猛食」などとして欠陥住宅に関する番組がテレビで放送された。しかしこれはシロアリに関していえば視聴者を惑わすものだった。
放映された家屋の床をめくった部分に散らばっていた羽アリの羽根は、翅脈(羽根の網目)が明らかに膜翅目(おそらくアリ)のものでありシロアリのものではない。
そしてカビを顕微鏡でのぞいて映し出された虫もシロアリではなくすべてトビムシである。一目見ればわかるはっきりしたものだった。そして、衛生微生物セン ターの研究員は「虫がいます」といっただけなのに字幕では「たしかにシロアリがいた」となった。土が入っているというだけではアリが運び込んだ可能性もあ り、シロアリとは断定できない。
すなわち、この家屋にはカビや腐りあるいはアリの侵入はあっても、シロアリが生息している確たる証拠はないのである。
番組ではことさら湿気とシロアリを結びつけ、湿気があれば必ずシロアリが生息するかのような間違った説明も多かったが、とくに含水率計による断定はきわめて問題がある。
番組では木材含水率の基本数値を8%としたが、これは間違いで日本における気乾状態(空気中の湿気とつりあっている状態)の平均値は約15%である。そして意味もなく濡れた部分に計測器を接触させて「計測不能」と大騒ぎをしていた。
こういうやり方は、たとえ欠陥住宅を追及する場合でも、してはいけない詐欺的手法である。
ここで登場する建築士はかなり胡散臭いものだった。スタジオでの説明でシロアリのつきやすい家として虫がいることや地下室があることをあげていたが、シロ アリとはまったく関係のないことである。はっきりいってこの建築士はシロアリなど生き物については素人であり、解説すべき知識もないのに解説してはいけな いのだ。つまり、欠陥住宅を作るのと同じ手法で解説していることになる。
以前も同様の番組で、ある建築士が欠陥住宅の欠陥に対する費用に「シロアリ防除」を計上していたが、実際はそんな費用は必要ないものだった。欠陥を追及する側が欠陥では困るのである。
もちろん、この番組で取り上げられていた家屋のような土間床構造はシロアリが侵入しやすく、万が一侵入した場合駆除がかなり困難になるなど問題が多いのは事実である。
しかし、欠陥を欠陥と追及する側のあまりの無知さ加減と詐欺的手法は消費者をなめているとしか言いようがない。
2003/10