乾材シロアリ対策の意味

NHKのアメリカカンザイシロアリの番組はかなり多くの人が見たようで、「こういうシロアリがいるよ」というアピールにはなったと思う。
特徴的だったのが一般の方からの問い合わせではなく、建築関係者のものが多かったことである。いち早くブログでこの番組を評した阪神ターマイトラボの水谷さんのところには問い合わせが殺到しててんてこ舞いだったようだ。
「栄養でないから食われない」と基礎に断熱材を貼り、「乾燥していればシロアリは住めない」といって無理な床下を推進したことがまさかのシロアリ被害とな り、これをあれこれの手法で克服したかのような建築業界だったが、「建物のどこにでもつく」、「ほとんどの地域で生息できる」、「誰かが持ち込めば隣から もやってくる」、「駆除困難」という、はたまた想定外のシロアリにさぞ驚いたことと思われる。
しかしとりあえずはご安心あれ。基礎断熱の被害のような強度にかかわる致命的な被害にはなりにくく、今見つかっていない地域では、今後も新築からしばらく は何も起きないと思われる。さらにそれ以降注意していて初期の被害を見つけられれば、かなり単純に駆除できてしまう。だから、「そういうこともありうる」 という建物の構造にしておけばそれほど心配要らない。
ただし、一般的な土壌性シロアリとは駆除の考え方が異なるので、今までのような勝手な判断をせずに、必ず専門の技術者に相談すべきである。

面白いのは、このシロアリの駆除こそはシロアリ駆除の原点ともいえるもので、シロアリのいるところに薬剤を届けるというごく当たり前のものである。一切のマニュアルや形式が存在しない、いわば裸のままの駆除といえる。
建物によって対策の形は千変万化。あるときは微細な処理の連続であるし、あるときは床や壁の改修を伴うこともある。私などはそのために天井や床下の改め口の設置ぐらいは自分でできてしまうようになったほどだ。

PCO(シロアリ以外の害虫駆除の業界)ではIPM(本サイトの「その筋の専門用語」参照)が推進されているようで、きわめて柔軟な現場の対応ができるよ うになってきつつあるらしい(詳しくは知らないが)。一律に薬剤散布するのでなく、その場に応じた最適な手法を依頼者と共有して進めているというのであ る。最近では薬剤に警戒心を抱く人々とも共通の認識を作り上げているようで、すばらしいことだと思う。
アメリカカンザイシロアリ対策は、まさにIPMでなければできないものである。

従来の大量散布思想が残っていると、アメリカカンザイシロアリ対策でも、やれベイトだの、非忌避剤だの、予防だの、保証だのとすぐに楽なほうに流れやすい。しかし現場に行けば行くほどそういう思考方法がばかげていることに気づくのである。
アメリカカンザイシロアリに「とくによく効く薬」はない。何でも効く。が、何でも使っていいわけでもない。製剤と現場の関係、器具と現場の関係、現場の工 夫、こうしたものと組み合わさったとき「いい薬」となる。いいかえれば「いい薬剤」とは様々な薬剤や製剤、器具などのパッケージといえる。

また、こういう対策にかかわると一般のシロアリ駆除でもかなり柔軟な対応ができるようになる。つまり、アメリカカンザイシロアリ対策は、シロアリ対策一般の学校でもあるといえる。
大量散布思想と決別するためにも、是非とも若いシロアリ技術者は、乾材シロアリの現場に出会ったら逃げずに積極的に引き受けてほしい。儲からないかもしれないけれど、真剣に取り組めば必ず得られるものがあるはずだ。

2009/1