耐震対策や耐震金具は冷静に熟考を
静岡県の地震防災センターを見学した。立派な施設であり、いろいろ勉強にもなる。しかし、一つだけ心配な点がある。一部の耐震対策が一面的であることだ。
展示してある家屋の木組みには家屋の外部から補強するための金属の骨組みがつけられている。ところがこれが玄関両側の柱に接するように地面から基礎に沿っている。これだとシロアリを導いてしまう。
せっかく耐震措置を行ったのに土台がシロアリ被害にあったら元も子もない。それ以前に早く地震が来て、この措置のおかげで家屋が倒壊しなかったとしても、シロアリによって弱められてしまえば次の小さな地震で倒壊するかもしれない。
各自治体のパンフで紹介されている耐震対策でも、基礎を丈夫にするために二重に基礎を打つというものもあるが、これもシロアリを導く可能性がある。
また、耐震金物でも地面と土台が金物でつながるようなつけ方だと、やはりシロアリの蟻道は作られやすい。
もちろんここでは耐震措置をするなというのではない。耐震対策においてもシロアリ対策を考慮すべきだというのだ。デザイン優先、機能優先では困るのだ。
防災センターでは薬剤による土台などの腐りやシロアリ対策も紹介されていたが、このやり方ではあまりに心もとない。

一方、インチキに近い耐震金具の設置も見られる。
私の顧客の家は玄関ホールにもぐれない。床下側にも通風孔がない。しかしシロアリの被害はあると予想された。
そこで私は居住者に次のように言った。「基礎を割ってもぐればシロアリは駆除できるかもしれないけれど、基礎は二度と元に戻らない。しかし床板や床組み材 は何度でも復元できる。それなら床板に被害がある程度進むまで様子を見て、修理が必要になったとき処理します。」と。ヤマトシロアリの地域なら当然こうし た柔軟な対応が可能である。
ところがある日、大手訪問販売の耐震金具業者(シロアリ「消毒」もするそうだ)が地震で脅し、耐震金具をつけてしまった。こういう場合、家屋全体からの判 断ではなく、「つけられるところへつける」のであり、その効果については疑問が多い。基礎への設置も片側からビスで付けるだけだし、なかには、つなぎ目の ない根太掛の表面に表札のように貼ってある金具もあるぐらいだ。
しかもこの金具業者、玄関ホールに入ると称して基礎を割ってしまった。よくみると基礎と土台をつなぐアンカーボルトがむき出しになっている。アンカーボル トを効かなくさせておいて効きもしない金具の設置とは詐欺に近い。そして玄関ホールで「シロアリがいた」と大騒ぎをする。
とにかく、地震対策はより冷静であるべきだ。
それとも金具業者が金具をつけても倒れた場合、再建費用を補償するというなら話はわかるが。
2003/9