そのPC協会がIPM宣言を発した。IPM宣言というのはIBMの子会社になるという意味ではなく、当サイトの「その筋の用語解説」にも載せてあるように「総合防除」とか「総合的害虫管理」と訳されているintegrated pest managementの略である。 宣言では次のようにうたわれている。 1.適正な仕様による適正な薬剤、防除機器の仕様を致します。 1.環境維持管理教育をうけたペストコントロール技術者の育成をはかります。 1.人と環境に配慮し、有効性・安全性・経済性に調和のとれた施工方法を確立します。 かいつまんでいえば、環境との調和を考え、実際の調査に基づいて具体的な対策を立てる。どこでも同じように薬剤散布に頼った処理をするのでなく、現場の条件にあわせて多様な対策を行うということである。 あるいは、薬剤や手段、考え方、対策の根拠を客に開示して、どこからも評価の得られる行動をしようというものである。 たとえば、従来のゴキブリ駆除では室内での残留噴霧や空間噴霧が当たり前であったのを、現場の実情に基づき、毒餌剤だけでやってみようとか、場合によって は物理的な対策も組み入れようとか、さらには、駆除すべき生物を一掃するのか人間生活に害のない程度に数を減らすのかという目標を設定するというような多 様な形になる。 当然にもここでは技術者の判断が最も重要な要素となる。この生きた人間の判断を重視するということがこのIPM宣言の重要なポイントともなっている。 これはシロアリ対策でも同じである。 先日、シロアリがいるという浴室の改修現場に呼ばれていったところ、ユニットバスを組み立てている設備業者が「いまなら処理できるから急いで土台に穿孔注入してくれ」という。 最近ではこういう設備業者でも「穿孔注入」などという言葉は知っているようだが、私が「どう処理するかという判断は私がするのであって、いきなり薬剤処理しろといわれても困る。ひととおり調査してから説明します。」といったのがかなり頭にきたようだ。 さらにユニットの下が改修後は密閉状態になってしまうようなずさんな改修だったので、そのことをきっぱり施主に話したものだから、もうその職人氏のトサカからは湯気が出そうな状態になった。 つまり、調査に基づいて「ここでの最良の方針」が立てられたなら対策の8割は完了したと見てもいい。薬を撒くのは技術ではない。判断するのが技術である。 そして、そうであるならやはり調査は有料とならざるを得ない。逆に言えば、調査をいつまでもサービスとして行っている間は人の判断よりも薬剤散布が主体となっているともいえる。 昨年、私が大阪に出張調査した際、施主の話によると私の調査について他業者が「調査だけでお金を取るなど聞いたことがない」といっていたというが、駆除についての理解はまだまだ浅く一般には薬剤散布請負業的な理解が多い。 シロアリ業者の中ではIPMについて「あれはPCO独特なものでシロアリ防除にはなじまない」という意見もあると聞く。 しかしそれはウソである。もともとシロアリ対策は現場で調査して判断するものだったのである。だからこそ東海地域の生協では「薬剤に頼らないシロアリ対 策」(IPMそのもの)が実行できたのである。しかも東海での経験から言えるのは、このIPM的な発想の業者間での理解度の差が、消費者との関係構築の深 さの違いとなっていることである。定期点検だけを導入してもこのことが理解されないとうまくいかない。 ともあれ、PC協会はIPM宣言を出した。一方、おもに加圧注入などの業界団体である木材保存協会の研修会などでも「薬剤のみに頼らない木材保存」という見解が近年聞かれるようになった。さてシロアリ対策の分野ではいかに‥‥。 すでに時代は薬剤やシステムの安全性のみを売り物にする時代ではなくなってきているようだ。 消費者からいえば、実際に処理をする技術者がどのような話をし、どのように分析し、どのような方針を納得させてくれるか、で業者を選ぶ時代といえる。 2006/3
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