原則として How to はありえない
シロアリ対策についての話をす ると「要するになにをどうすればいいのですか。それが聞きたいのです。」とよくいわれる。これは私のシロアリ対策の話の中ではシロアリの生態の話が多くを 占め、いわゆる「やり方」についてはほとんど触れないことへの不満のようである。駆除現場にかかわる人たちの間ではこういう意見は少ないが、対策にかかわ らない業界の人からはよくこういう意見が出る。
しかし、なんといわれようと今後も私は「やり方」について話すつもりはない。というより、話せない。拙著にもそういうことは書いてない。
これまでも何度も述べてきたが、シロアリの動きや強さはまったく一律でなく、しかも家屋という環境も多様である。だから、被害のありようも千差万別であるのは当然だ。
シロアリの活性の強い地域とそうでない地域では当然にも「やり方」は異なるべきだし、いくら被害が大きくても、シロアリの動きがわずかなら、対処も割合小さなものとなる。
どこでもいつでも有効で、しかも誰がやってもできる完璧に近い「やり方」を求めるなら、「防腐防蟻処理」マニュアルのような過剰処理やシロアリ絶滅型のベイトシステムなど20世紀的な発想に行き着いてしまう。
医療の世界で言えば、病気を嫌うあまり過剰に市販薬を多用したり、体の内外の微生物を駆逐してしまうような発想である。
では、シロアリ対策として必要なのは何かといえば、それは技術者による判断である。正しい判断さえあれば、たとえ薬剤を使用してもわずかな量ですむし、安全性も確保される。そのうえ隣家にタクシーで行くような余計なコストはかからない。
ここ数年で急速に顕在化している基礎断熱のシロアリ被害を見ると、まさに素人判断による「やり方」や「データ」の積み上げの末路を見る思いがする。
我々から見るとごくごく単純な対処ですむのに、くだらない部分にバカ丁寧な処置が施されていたり、過去の蓄積された被害に恐れおののいて無駄な費用をかけたりする現場も多い。
一部の建築士やビルダーはよほどプライドが高いのか、素直に現場の技術者の判断を仰げばいいものを、それをせずに素人判断であれやこれやの方式を取り入 れ、さんざん困ってからこちらに名前も言わずに相談してきたりするのが現状である。しかしそれでもなお、ある太陽熱循環システムの推進者のグループなど は、誤謬だらけの創始者(建築士)の素人論文をいまだに公式に否定もせず、部分的な改良(これまた素人判断)でお茶を濁そうとしているが、困ったものであ る。

生き物の生態というのはもともと人間の思い通りにいくようになっていない。「出て行け」といっても出て行かないし、「来い」といっても来ない。「食え」といっても食わないし、「食うな」といっても食う。
たとえば、昨年、ある家から浴室を中心にイエシロアリの被害が出たと相談されて出向いた。被害は浴室付近に集中し、その天井裏に蟻道もできていたがそれほ ど大きな集団ではなかった。しかし放置すれば大きな被害になる。そこで、大体の巣の位置を推測しながらも、家屋の構造上巣への直接処理が難しいことから、 シロアリの活動が見られる浴室の基礎に接する地面に誘殺用の無毒餌を入れたボックスを2個埋めて1年後に処置することにした。ところが今年見に行くと、こ のボックスにはどれもシロアリは侵入していない。やむなく誘殺をあきらめ、天井裏の蟻道構築部から粉剤を微量投与して様子を見ることにした。
この場合、運良くそれだけの処置で集団を死滅できたが、「餌が埋めてあるのだからシロアリが必ず侵入するはずだ」と誘殺法(あるいはベイト法)にのみ頼ったとすれば、被害はますます広がってしまうのである。

2005/7