ハウス・ファディズム
先日、中日新聞のサンデー版にフードファディズムの特集があった。
ファドというのは英語で「熱狂的で一時的な流行」という意味で、情報に振り回されて特定の食物の栄養情報を過大に信じたりする傾向をフードファディズムという。
テレビでは「○る○る大辞典」とか○の○んたさん司会の番組あたりがこれをあおっている。
この特集ではフードファディズムの3つのタイプとそれが広がる背景について分析しているが、面白いのはこのフードという部分をハウス(家屋)に置き換えてハウスファディズムとすると、家屋にまつわる現状に一致することである。

紙面の項目に従いフードファディズムの3つのタイプを見ていくと以下のようにハウスファディズムと照応する。

「1.健康効果をうたう食品の爆発的な流行」
ある食品を食べたり飲んだりすることで健康問題がすべて解消するかのようなイメージが作られて流行する。
---(家屋の場合)ある構造を採用することで「健康住宅」とか「環境共生住宅」になるというイメージが作られて流布されている。
「2.食品・食品成分の”薬効”強調」
専門用語やデータを使って食品の中の特定成分の効果がことさら強調される。
---(家屋の場合)特定の仕組みや素材の”効果”が断片的な数値やデータで強調され期待させ、そういうものを採用しないと快適な暮らしが得られないかのような誇張や、はては省エネに敵対するかのような脅しすら行われる。
「3.食品に対して不安をあおり立てる」
食生活を全体としてとらえるのでなく、特定の食品を体に「良い」「悪い」と単純にレッテルを貼り、「普及品には危険がいっぱい」と不安をあおる。
---(家屋の場合)立地条件や地域の環境とのかかわりなしに自社の構造だけが地震に強いかのような言い方をし、他の構造への不安をあおる。あるいは 「○○を含まない建材」とか「××を吸着する」というのが一人歩きしている。「自然物は安全で化学合成物は危険」というのもこれ に含まれる。

つぎに、フードファディズムが広がる仕組みと背景については以下の4点にまとめられている。

・「世界一の長寿国」
長寿社会になる中で健康にかかわる食への関心が高まっている。
---(家屋の場合)介護のしやすい家屋とか健康でいられる家屋への要求が高まり、一部では必要以上の家屋の病院化、リゾート化が進行している。
・「メディアの発達」
健康への関心が高まっているので、健康についての情報やメディアが発達し、中には視聴率本位、興味本位の情報も少なくない。
---(家屋の場合)ほとんど同様で、とんでもない設計・施工がテレビのリフォーム番組や家屋訪問番組で紹介されていて、奇抜なようで実は似たような物だということに気がつかない没個性が拡がっている。
・「食に対する旺盛な好奇心」
ヨーロッパ諸国は概して食に対して保守的だが、日本は積極的に外国の食べ物や料理を取り入れる傾向があり、しかも規制緩和の中でこれに拍車がかかっている。
---(家屋の場合)ほとんど同じだが、わが国では建築士が介在することでさらに拍車がかかっている。とくにデザイン系建築士の外国崇拝や理屈だけの折衷には度し難い愚かさがある。
・「食のタブーがほとんどない」
食に対する宗教的なタブーがなく、外国から次々に入ってくる食材を抵抗なく口にする傾向が強い。
---(家屋の場合)本来職人の間では「やっていいこと」と「してはならないこと」があり、地域ごとに共通する特徴があったが、いつのまにかこれが失われ、外国の構造や思い付きのデザインが流行している。

そしてこの問題については「先進国の中でも食料自給率は40%ときわめて低いが、情報供給量は過剰。世界の中でも特殊な国といえる。」とまとめている。
家屋でも同様に、先進国の中でも木材自給率は20%ときわめて低いが、情報供給量は過剰。世界の中でも特殊な国といえる。

この特集では群馬大学の高橋久仁子教授のメッセージを載せているが、高橋教授は「そこそこの健康、ほどほどの食生活」と題して、アミノ酸、カテキン、ポリ フェノール、あるいはいくつかのサプリメントなどへの過大な評価や盲信を戒め、季節や体調、嗜好に合わせてほどほどに食べ、そこそこの健康を望むことが自 然だといっている。
そしてこれまた家屋でも同じことで、いくつかの機能や数値に踊らされたり、新技術に飛びついてメーカーや建築士のモルモットになることなく、「そこそこの 便利さ」や「ほどほどの快適さ」を求めれば大きな失敗はないだろう。ただ、ハウスファディズムの場合は結果が出るのに時間がかかることがわかりにくさを助 長している。

2005/4