杉山慎吾氏(杉山技術士事務所)は、木材保存分野で薬剤処理に頼らないという考え方を打ち出した。つまり、樹種の選択や設計での工夫による木材保存である。 もちろん薬剤処理を否定するのではないが、なんでも一律に木材保存と薬剤処理を結び付けるのでなく、どんな木材をどのように使用するかということに重点を据えた考え方である。 一方、吉村剛氏(京都大学)は、シロアリを害虫ととらえるのでなく、生態系での役割を明らかにした上で、薬剤処理のみに頼らない新しいシロアリ対策について論じた。私としても非常に共感できるものだった。 これはどちらも今まで同協会の講習会で聞かれなかった主張であり、非常に画期的だった。 (社)日本木材保存協会(JWPA)といえば、家屋の土台や柱の薬剤注入処理の業界を中心にした団体であり、(社)日本しろあり対策協会と双璧をなす団体である。 木材保存処理は、シロアリ対策と比べれば、工場での加圧注入など薬剤の効果に負うところがはるかに大きい分野であるが、その団体の講習会で薬剤処理に頼らない考え方が堂々と打ち出されたのである。 最近のシロアリをめぐる変化は大きい。一方では、シロアリの生態についてのとらえなおしが進み、ヤマトシロアリが明確に水を運ぶし、体内にその器官をもつことも解明されてきた。また、イエシロアリとヤマトシロアリの違いもかなりはっきりと論議されるようになってきた。 薬剤分野でも、生態に適合した微量処理用の駆除剤が出回るなど、従来の有機塩素モデルからの脱却が始まった。 こうした大きな流れの変化は、かならず従来のシロアリ対策の中での個々の概念(駆除と予防の関係、木材保存とシロアリ対策の関係など)の見直しにつながると思われる。 2002/11
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