「今日こそ羽アリが出るぞ」と思いながら湖畔の山道を車で走っていると、前方の茂みから煙のように羽アリが立ち上っていた。 陽光に輝いて次から次へと続いて出てくる。さらに進むと突然羽アリの大飛行集団に突入し、あわててワイパーをかけようと思った。 直ちに車を止めて外に出ると、あちこちの茂みや木杭、倒木などから一斉に群飛していた。 わずかな風向きの変化に応じて飛行方向も変わるので、時には私の衣服や頭髪に飛びついてくるものもいる。 家屋の羽アリの場合、群飛のパターンはいくつかあって、その状況から対応を考える必要がある。羽アリの存在と被害のありようをいつも同じように結びつける必要はない。 たとえば、新築間もないころの羽アリの群飛は必ずしも家屋の被害を原因とするものではない。それは、家屋の建築によって地下環境が大きく変わったことへのヤマトシロアリの適応の1つである。 地面の掘り起こしなどによって分断されながらも生き残ったシロアリが、その環境に適応しようと活動した結果、羽アリの群飛という結論を出したのである。場合によってはそのシロアリ集団はそのまま死滅することもありうる。 あるいは、羽アリの群飛によってスリムになった集団がその環境下に居場所を見つけて生き残り、家屋の関与するかどうかは別としても、何らかの形で新しい生活を始めるかもしれない。 これはヤマトシロアリだけではなく、他の多くの生き物も同じである。 家屋の建築は無数の関連を持った生き物世界に人間が大きな変化を生み出すことであって、生き物は家屋が立てられるや否やこれにいっせいに適応しようとする。 昆虫などの小動物や鳥類、爬虫類、両生類、あるいは菌類なども新しい家に侵入しようとする。新築直後ほど虫が目立つのはこのためである。 適応に成功したものはそのまま生息するし、うまくいかなかったものは死滅するか逃げ出す。そして家屋には一つの生き物の関係、生物バランスが形成される。自然に配慮のある家には豊富に、そうでない家にはそれなりに形成される。例外はない。 にもかかわらず、今の人間はあまりにこのことへの配慮がない。 2003/6
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