約10年前にも岡崎では水害があったが、どうして床下の排水設備が普及しないのか不思議である。以前の水害のときも床下換気扇などの訪販業者が暗躍したが、そんなものにお金を使うよりもまず排水設備の方が大切である。 私の家は旧東海道の宿場町の真ん中にあるが、水が溜まりにくい丘陵地で裏の川が氾濫してもまず水害にはならない。しかも岩盤が硬く井戸を掘るには大変だが、地震にはきわめて強い。さすがに昔の人が宿場にしただけのことはあるなあと感心する。 ところが私の家から300メートルも東に行くと、同じ街道筋でもかつて新町と呼ばれた土地の低い地域があって、そのあたりは大雨が降るとしばしば冠水する。 家を建てるのに都合のいい場所はそんなに多くはないのだから、それ以外の新しく開かれた土地に住むのならそれなりの覚悟が必要といえる。それなら建築側も 地盤の弱いところに杭打ちやベタ基礎を採用するのと同じように、水害の可能性のある土地では他とは異なるメニューとして特別な排水設備をつけるとか一時的 に濡れてもいい建材などを提案すべきではなかろうか。 床下への水の流入は低地や川沿いだけに限らない。丘陵地に建つ家でもそれより高い場所からいっきに流れ降りてくる水が基礎にぶつかって流れ込むこともある ので注意が必要だ。しかも、上のほうで宅地開発などがされて森林や田んぼがなくなっている場合は常には考えられない大水になりやすい。 これまでの水害や水漏れで明らかになったことは、土間コンクリートに縦方向の水抜き穴をいくら開けてもまったく排水しないことだ。また、布基礎で土の露出した床下ですら一旦水が入ると表面にヘドロのようなものが堆積して水はしみ込みにくくなる。 基礎に風窓があればそれ以上には水は溜まらないからまだいいが、近年多くなってきた風窓のない基礎だと床板の直下まで大量の水が溜まってしまう。 だから、大規模な排水設備は別として水抜き穴は基礎立ち上がりの最下部に横向きに設置しなければ機能しない。そしてできれば各部屋ごとに土間コンに傾斜をつけて排水穴に水を誘導するようにすべきである。 しかし、家々の床下にもぐっていてもそういう工夫のされている床下についぞ出会わないのはどういうことか。横向きの排水穴についていえば新しい家では割合と見るようになってきたが、基礎の仕上げモルタルで塞がれているものが多く、これでは意味がない。 なかには束石が省かれた床下もある。プラ束や鋼製束ならいいが木の束や木のかいものを束石なしでベタ基礎の上に据えると最後の1滴まで吸い上げてしまう。 とくにベタ基礎では布基礎と異なり隣り合った部屋の水が基礎立ち上がりの接合部の隙間でつながっているので最後の数センチの水を抜くのに大変な苦労が必要 だ。束石さえあればわずかな水溜りを残したとしても木材に水は影響しない。 また、床上または床板直下まで水が入ったとき、その部分の木材がムク材ならいいが合板だといっきに劣化する。水害が心配される土地にもかかわらず1階に合板など水に弱い材料を多用するのは問題があろう。 さらに床下に炭や調湿材などがあると撤去が大変。敷きこむときはメーカー直送だが、撤去となると捨て場に困る。床下換気扇も同じ。 排水だけの問題ではない。基礎や床下の構造に限っても全体としてまだまだ歴史が浅く発展途上なんだと実感する。 堆積し続けるホコリ、コンクリートの劣化、想定外の亀裂や傾きなど未解決の問題もある。 身近なこととして例えば、風窓(基礎パッキンでもそうだが)をなぜ夏も冬も同じように開けておくのだろうか。私が「寒ければ冬の間だけ閉めたらどう?」と いうと居住者は「閉めてもいいんですか」と不思議な顔をする。もちろんいいに決まってるのだが、建築関係者のなかには「閉めたら湿気がこもって木が腐る」 とか「シロアリがわく」という人もいるようだが、床下に対する無知も甚だしい。こんな程度で腐るようなら建物の方に問題があるのだ。 富山県五箇山の合掌集落では床下の囲いの板は冬用と窓の開いた夏用があって季節によって取り替える。場合によってはさらに藁や萱などで周囲を囲う。こうい う季節の変化に応じて建物を変化させるのはごく当たり前に先祖が行ってきたことであってとくにおかしなことではない。我が家のようなあばら屋ですら和室の 引き戸は夏用(簾でできた建具)と冬用(ガラスを張った建具)を取り替えて使っている。基礎だって同じだろう。 とくにユニットバスまわりの基礎では、点検時のみ取り外し可能な断熱設備が必要であるが、実際はなにも施されていないのが一般的だ。なかには浴室の基礎に も風窓があってユニットバスの下に寒風がビュービュー通り抜ける家もある。こういうユニットバスでは文字通り「あっ」という間に湯が冷める。 一部の基礎断熱の家では開閉式の風窓が採用されているが、こういうのは普通の家でも必要である。 2008/9
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