停電時のシロアリ対策

 地震などの災害地域ではシロアリ対策どころではないと思われるが、今東京電力が行っているような「計画的(?)停電」や不慮の電気系統の事故で被災しなかった地域で電気が止まった状態でのシロアリ対策はどうなるのだろうか。

 まず現場で電気が使えない場合はどうなるのだろうか。
 一般的なシロアリ対策で直接電気を使うと考えられるのは以下のとおりである。

 (1)薬剤処理で動力噴霧機を使う場合
 (2)被害部分などに薬剤を入れるための穿孔(穴あけ)
 (3)床下などでのライト(明かり)類
 (4)必要な大工工事(床下への入口を作るなど)の電動工具の使用
 (5)テレビを使った写真説明など
 (6)換気扇など(シロアリ対策ではないが床下産業として)

 電気が使えても使えなくても(6)と(5)は最初から無視できる。
 (4)の内、床板など木材に対するものは手ノコや金槌、充電式のドリルでできるから問題はない。基礎の穴あけ(ハツリ)を行う業者は充電式のハツリ機がほとんどないことからこれはできないと思われるが、私のように基礎に穴をあけない業者は問題ではない。
 (3)のライト(明かり)類も電池式で事足りるので問題ないが、普段電気コードを引っ張っていく業者は臨時に電池式を使う必要がある。最近のLEDの照明器具では電池式、充電式、手回し充電式、車のバッテリー接続式など多様だからかなり柔軟に対応できる。
 (2)は一般に木部穿孔とか土間穿孔と言われる部分。業者によってはこれがやたらに多いが、これを充電式だけで行うのは非常に大変だと思われる。普通の充電ドリルでマニュアル式の穴あけを行えば一部屋だけで電池の交換が必要になりそうである。
 我々のように穴あけを最低限しか行わない場合は充電式で充分である。また、充電すらできない場合でも手回しのギムネでできるし、かつてはそうしていた。
 問題は(1)の動力噴霧機を使う場面である。
 業界団体の「仕様書」どおりに大量に薬剤散布しようとすれば手押し噴霧器ではおぼつかない。新築時の薬剤処理で手押し噴霧器が使える場合でも動力噴霧機と比べて格段に効率が劣る。
 中にはエンジン式の発動機や電源を積んでいく業者もいるかも知れないが、建物が密集している場合は騒音でトラブルにならないように配慮しなければならない。
 私の場合(あるいは私のような業者)は原則として大量散布をしないのだからすべて手押し式のもので工事可能である。というより普段から手押し式が主体で電動は補助的でしかない。
 つまり、直接に電気が使えない場所でのシロアリ対策は、マニュアル通りの処理を行おうとする業者ではかなり問題も起きると思われるが、私のような業者ではとくになにも支障はなく、普段どおりに対応可能である。

 現場に水がない場合はどうか。
 これはたぶんほとんどの業者で問題はないと思われる。現場で水を調達することはほとんどないからだ。
 しかし、現場にも業者の所在地でも水がない場合は、大量散布の業者はかなり困難になると思われる。
 私の場合は多くても20リットルのポリタンクで充分だから、近くの川から調達する。

 ガソリンがない場合はどうか。
 これが一番困ることだと思われる。まず作業車が動かないし、エンジン式噴霧器や発電機も動かないからだ。かなり多くの業者が動けなくなるだろう。
 私の場合でもかなりの制約となる。
 ただ、駆除なら必要なものは大型トランクにおおかた入ってしまうので公共交通手段や近場なら自転車で移動できるし、これまでも一部の遠距離出張ではそうしてきた。とくにイエシロアリの駆除ではまったく液剤を使わなくてもいい場合もあるのでなおさらだ。

 薬剤の供給が止まったらどうか。
 一般的に言うなら、業者のところにストックのあるうちはいいが、それがなくなると保証付きの予防工事や「防除」はできない。
 私の場合はもともと「薬剤に頼らない」といっているわけだし、手に入るもので駆除するから困らない。保証書を出せと言われれば何枚でも出す。顧客に対して供給するものが薬剤ではなく駆除の効果だから当然である。

 こうみてくると、本来的なシロアリ対策というのはエネルギー事情の変化にあまり左右されないことがわかる。

2011/3