断熱材とアリ
基礎断熱の断熱材にはシロアリだけではなく、アリ(いわゆるクロアリ)やその他の昆虫も侵入する。
なぜかといえば、シロアリの場合と同じく、かじるのに都合のよい硬さだからである。アリもまた、どこかの建築士と違って「栄養でないからかじるのをやめとこう」などと理屈で判断するほど高等でない。
アリの断熱材への侵入は早くから懸念されていて、アメリカではfire-antsというアリが断熱材に営巣した事例もかなり以前に聞いたことがある。そして今年は同業者から営巣の知らせが入ったし、私の知合いの工務店もどうやらそういう状態のようである。
アリは断熱材がなくても、家屋の中に普通に入り込むものだが、とくに壁の中に雨漏りがある場合はそこに営巣することが多い。雨水によって腐り、軟らかくなった木材はアリによってさんざんかじられ、壁の中は茶色の木粉と雑多な材料で作られた巣で満たされることになる。
これが断熱材となると、木材が腐らなくても巣ができてしまう。そして厄介なのはシロアリのように地下からトンネルを掘らなくても、いきなり基礎を乗り越えて高所の壁の中に侵入することが可能なことである。
また、家屋によっては、断熱のためにベタ基礎や土間コンクリートの下全面に断熱材が敷き込まれているものもあるが、こうしたものが知らないうちに巣になることも考えられる。
しかも、一般にシロアリを駆除した後にアリが入り込んで営巣することが多いので、断熱材のシロアリ駆除がアリの侵入の引き金にもなり得る。
こうしたアリを駆除する場合、市販の毒餌を食べてくれたり、直接薬剤処理できればいいが、そうでない場合はかなり困難なことになる。
近年急激に普及した断熱材の多用や従来の建物にない複雑な構造が、周囲の生き物群からどのような解答を受け取るかは、実際に直面しないとならないとわから ないことも多い。しかも、そういう側面から家屋のありようを考える点ではズブの素人に近い人たちが家を設計し施工しているという事実は住まい手としては把 握しておくべきであろう。
いずれにしろ、人間の理屈やデータだけで家を作らない方が賢明である。
近い将来、床下にシロアリ、壁にアリやコウモリが住み、天井からはミツバチの蜜が滴れ、ネズミが走り回るようなにぎやかな環境「共生」住宅が意図せずに実現するかもしれない。めでたし、めでたし、である。
2006/9