続・それみたことか
以前『日経ホームビルダー』と いう雑誌で基礎断熱からシロアリが侵入した被害の記事が掲載され、以前から基礎断熱の問題を指摘していた私は「それみたことか」と、このコラムで書いた。 そしてその後、ある基礎断熱推進サイトが的外れの「反論」を掲載するなどといったこともあったが、今回再び同誌が基礎の構造に関連したシロアリ被害を報じ た。
今回は、今流行の土間床という構造でのシロアリ被害だ。土間床はいわば床下のない構造で、コンクリートの土間の上に直にフローリングを張るタイプである。
この土間床には大きく分けて2種あり、ベタ基礎形式のものと布基礎でコンクリートを高く流し込んだものがある。もちろん布基礎タイプのほうがシロアリが侵入しやすいというのはいうまでもない。
今回報じられたのはベタ基礎タイプで、ベタ基礎だからといってシロアリ対策をしなかった。もちろん、ベタ基礎でも被害の可能性はあり、私もすでにこうした家屋の駆除を行っている。
とくに土間床で土間の下に温水パイプなどを入れてコンクリートを温めるタイプだとシロアリを集める結果になる。しかし、床下を温めてはいけないということがまったく理解されていないから困る。
また、とくに厄介なのはこういうタイプの家屋だと、床下でシロアリとやり取りできないだけにターゲットが定まらず、駆除効果にかなりの曖昧さが残る。すなわち、一度の駆除で処理できるかどうかわからないのだ。そのうえ定期点検もままならない。
私が調査したある家屋では、外断熱の基礎で家屋内部に蟻道が活発に伸びでいたが、よく調べると家屋の基礎断熱材全体に生息の兆候があった。こうなると一定期間の駆除が必要になる。
そのうえ、被害の全体像が確認できないので補修費用も普通以上にかかる。今回の記事では200万円かかったというが、ヤマトシロアリでは破格の値段だ。し かしまだよかった。場合によっては、たった一ヶ所の被害で家屋全体の機能が修復不可能にさえなりかねず、家屋の建て直しに直結することすら覚悟すべきだ。
とにかく、安易に床下や天井裏を撤去し、機能優先の余裕のない家を建てると後で大変なことになる時代となったようだ。
以前は民家の原則を無視したアクロバットな建物は、一部の設計士の「作品」でしかなかったが、最近はハウスメーカーもアクロバットに参入を始めた。ひょっとしたら、100年住宅であるはずだった家が、10年でスクラップになるかもしれない。
2003/1