2006年の西表島のシロアリ調査

久しぶりにシロアリ愛好の仲間4人(東海白蟻研究所の星野さん、倉敷白蟻工業の荻野さん、オヤシロアリ技研の尾屋さん、サポート仙北の早坂さん)とともに西表島に行きました。日程としては4月7日から10日までで、実質的には8、9日の2日です。
よほど運がいいのか、天候が変わりやすいこの時期にもかかわらず雨にまったく影響されませんでした。(もしも1日日程がずれていたらセントレアは大変な風雨だったし、欠航にも直面したはずでした)

今回は、初めて参加するシロアリ愛好の若い技術者にできるだけ多くのシロアリを見せ、その採取の仕方、掘り方などを伝えることが一つの目的でもありました。
毎回地権者に断って入らせてもらっている森はかなり荒れていて、タイワンシロアリよりもイエシロアリがやたらに目に付きました。
また、タイワンシロアリの泥線や泥被も一部を除きほとんど見られませんでした。
だから、今回はあまり採取できないと心配し、せっかく遠くから来た初参加者に申し訳ないなと思っていたのです。
ところが、1本の木の洞に割合こじんまりしたタカサゴシロアリの巣が見つかり、さらに、タイワンシロアリの菌園も衰退したものとはいえ掘り当て、腔室の構造なども観察できました。
しかも、すぐ近くで土食い系のニトベシロアリも見つかり、初参加者たちも掘り方のこつを覚えることができました。ただ、この時期にはニンフも落翅虫も見つからなかったのが残念です。
付近からはヤマトシロアリも発見され、羽アリを巣内で見つけました。
一方、ダイコクシロアリをいつも採取する場所は、生息木が衰退してあまり多くを期待していませんでしたが、ここでもすぐ近くにかなり豊富な生息場所を見つけました。しかも、そこはコウシュンシロアリも混在する場所で、シロアリの力強さに驚きました。
ところで、今回特別に興味を引いたのはイエシロアリでした。
ある採取地で星野さんが何気なく上を見たらイエシロアリの分巣がありました。虫はやや小型で、兵蟻が少ない。しかもその兵蟻、乳液をほとんど分泌せず、噛み付いてもすぐ離してしまいます。
「どうも意欲に欠けるシエシロだなあ」と思っていましたが、宿に帰ってから荻野さんが職蟻の歯を分解して大声を上げました。
大顎の様子がヤマトシロアリに近いようなものでした。とんでもないイエシロアリです。
以前ベトナムに行ったとき、タイワンシロアリを採取したはずだったのが、歯をばらしてみたらタイワンシロアリとは似ても似つかぬ「缶きり」のような歯だったことを思い出しました。
そしてそんなことばかり考えていたので、西表島の形がイエシロアリの職蟻の歯のように見え、石垣島がタカサゴシロアリの兵蟻の歯のように見えてしまいました。
一方、タカサゴシロアリでも発見がありました。
枯木から得た巣を調べたら卵が見られましたが、巣の中にかなり分散して集積されていました。しかも副生殖虫(といえるかどうかは別として)も巣の各所に分散し、複数が同じ場所にいました。もちろん副生殖虫は産卵できる状態であり、腹部先端に卵をつけたものもいました。
宿で調べると中胸と後胸背板の幅が個体によって大きく違います。中には横に強く張り出しているものもありました。あとで調べたら翅根(羽根を切り落とした後の三角の付け根)が背板に張り付いていたものだということがわかりました。
ということは、タカサゴシロアリでは、巣の中で羽根を落としたものがそのまま生殖してしまうか、群飛したものが共同して巣を形成するか、ということになります。ちなみにその巣からは以前見たことのあるような特別に腹部の膨らんだ女王は見つかりませんでした。
また、ニンフは多数見られましたが、2001年の6月の夜に星野さんが西表島の隣の小浜島で羽アリを採取しているので、このシロアリの群飛はそのあたりだと思われます。
こうして今回は当初の不安を振り払い、割合多くのシロアリに接することができました。そしてかなり大量の写真も撮影しました。
写真といえばデジタルカメラがここ数年で急速に発達し、以前から私が使用していたデジカメが恥ずかしいくらいでした。
尾屋さんや早坂さんのカメラは数百万画素でしかもマクロ撮影でも優れている。尾屋さんなどはさらにその上に特別レンズを工夫してつけてきたので、現地で直接顕微鏡並みの写真が撮れます。
こうしてみんなの写真を集めたら1ギガバイト近くにもなり、あわてて現地でCD-Rを買って焼き、参加者に分けたのでした。

畑で調査


森で調査


ようやく見つかった
タイワンシロアリの泥被


コウシュンシロアリの兵蟻


コウシュンシロアリのニンフ