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シロアリ、とくに日本のほとんどの地域に生息するヤマトシロアリの仲間は土壌という希少資源を維持する上で大きな役割を担っている。 彼らはトンネルを掘って土中に空気を持ち込み、好気性の土壌菌を活性化させたり、不用な植物遺体を分解して腐葉土化させる。また、土とともに木材腐朽菌を 運搬したり、蟻道などへ有機塩類を蓄積する。つまり、シロアリは土壌の維持と生産、エネルギー循環を担う重要な昆虫であり、世界的にみてもオーストラリア 北部のようにシロアリの多い地域では、熱帯気候であっても砂漠化していない。 また、毎年決まった時期に羽アリを群飛させ、鳥類や爬虫類などの動物の餌として、臨時の高タンパクを提供し、いわば生態系でのボーナス的な役割を果たしている。 だから、大規模集中型のイエシロアリと違って小規模分散型のヤマトシロアリでは、実際に家屋に被害を与えているコロニーのみその都度部分的に駆除すればよ いのであって、たとえどんなに人間にとって安全な方式であれ、家の周囲のシロアリまで「巣ごと全滅」するのは天に唾するような結果となる。 どうも日本人は個々人の身の回りの自然とうまくやり取りすることを忘れ、なにかの「自然保護運動」や「自然素材へのこだわり」や「田舎暮らし」のようなも のに加担することだけが地球にやさしいと思い込んでいる。一方でわずか数十頭のアリが台所を歩いた程度で業者に相談したりする人が、自然素材の家を自慢す る。自然素材の家に住むということは生き物と同居することを意味することぐらいは知っておいてもらいたい。いや「虫の食い代」すらあるのが自然の家であ る。少々虫の穴があいたぐらいで騒いではいけない。古いお寺など穴だらけでも倒れない。 床下の土壌生物をコンクリートで封殺し、空気も計画換気、高気密で虫も住めない「環境共生住宅」が、政府の肝いりでますます大きな顔をするなかで、虫に理 不尽な植物相を強制する擬似ビオトープがあちこちで作られ、あるいは雑木林を伐採して「里山」が観光用につくられる。エコを看板にしたエゴだ。 植物の発散する化学物質で植物を認識している昆虫たちの目から見れば、地域ぐるみでケナフなどという外国の草が植えられるのは異様な光景である。「炭酸ガ スを吸収するから温暖化阻止に貢献する」ともてはやされるが、一年草というのは枯れて分解するときに吸い込んだ炭酸ガスをすべて吐き出してしまうのだ。 ケナフは繁殖力が強く、成長も早い。繁殖力が弱いという説もあるが、近くの学校あたりのケナフ畑ではろくに世話もしないのにぐんぐん伸びている。 すなわち、ケナフは確実に植物界のブラックバスになる要件を備えている。その上始末が悪いのはブラックバスと違って間違った理屈による確信犯であることだ。 |