化学薬剤が使えない家庭でのシロアリ対策
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シロアリ被害は心配だけれど薬剤を使用すると気分が悪くなるという方からの相談が多くなっています。ここでは、そういう場合のシロアリ対策のあり方について考えて見ます。 |
「安全な薬剤」や「安全なシステム」でなく、現状に対する判断が先決今ではかなり下火になりましたが、以前は「安全なシロアリ対策」というと決まって木酢液だの、ヒバ油だの、柿渋だのと自然素材が強調され、あるいは「薬剤を使わず巣ごと駆除」という「革命的システム」が喧伝されていました。しかし人によっては自然物といえども気分を害することがあります。また、こうしたモノやシステムはほとんどが従来の大量散布やマニュアル処理の延長上に あるもので、ほんのわずかなシロアリ被害や生息状況であっても床下全体に散布したり敷地全体に設置するなど大げさでアバウトな対応となります。それはほと んどの場合居住者にとっては必要以上の出費となります。 あるいは、市販の毒餌のようなものも居住者が大量に買い込んで庭先や被害箇所に置いておいても素人判断のためにシロアリ駆除に行き着かないのが実情で、結局は無駄な買い物になりがちです。 一番大切なことは、まずシロアリが現状でどこにいるのかを明確にし、最低限の方法、あるいは最適な方法として何をすべきかを明らかにすることです。 とくにヤマトシロアリでは、古い被害部や放棄された蟻道があるからといっても、そこに薬剤処理しなければならないわけではありません。 その家に合う方法は多様ですひとことで化学物質に過敏といっても症状が多様であるように、シロアリ対策もその状態に合わせて多様であるべきです。人によっては一部の殺虫剤の使用が許容できる場合もあるし、すべての殺虫剤やその類似物が使用できない場合もあります。 一般にシロアリ対策用薬剤は5年間効力が続くことを目標に濃度や使用量が決められていますが、そうした目標やマニュアルを度外視してシロアリを駆除できる最低限の濃度と使用量で対処すれば微々たる薬剤でシロアリ対策ができます。 とくに駆除に限るなら、5年以上持続する薬剤で駆除しようが数ヶ月で消えてしまう薬剤で駆除しようが結果は同じです。そしてイエシロアリの密度の高い地域を除けば、いったん駆除された部分にシロアリが短期間でもどってくることはまずありません。 たとえば20年間床下の一定方面にシロアリがいなかったとすれば、以後の環境変化がないかぎりこれから先の20年間でもシロアリ生息の可能性は似たよう なものです。こういう部分に薬剤を撒いて「○○年保証」などといってみたところで薬剤が無駄になるだけです。もしも心配なら数年に一度定期点検すればいい のです。 「一度で駆除できるかどうか」や「保証」にこだわる必要はない人間の医療では一度の処置で治癒できたかどうかは問題ではないはずです。医者は患者の体質や症状に応じて投薬をするのであって、一律に「よく効く薬」を 使用しているわけではありません。効果の点では劣っても与えられた情況に最も合う薬(あるいは薬に換わるもの)があるはずです。シロアリ対策においても同じで、たとえ一切の殺虫剤が使用できない場合でも、そこで使用できる手段は何かを判断し、その範囲内で対処すればいいのです。 一度で駆除できなくても、その状況に合った一連の処理で駆除できる見通しを立てることが重要です。 「一度の処理で駆除する」とか「保証」というのは、戦後の薬剤大量散布方式を支える概念であり、状況に合わせて多様に駆除するという立場に立てば意味のないことです。 |
新築・リフォームでのシロアリ対策● 新築では、なによりも構造的な対策が最も大切です。た だし、湿気がなければいいというわけでもないし、ベタ基礎だからいいというわけでもありません。とくに玄関周りなどの細かな配慮など工務店・建築士では判 断できない部分があるので、必ずシロアリ技術者に相談しましょう。● 床下や天井裏のような点検できる構造、いわば自然との「緩衝地帯」を必ず作るようにしましょう。構造を単純化しわかりやすくすることこそ薬剤に頼らないシロアリ対策や昆虫対策の条件となります。 ● 一般に言われる「抗蟻樹種」(シロアリに強い木)とい うものはありません。どんな木材でも被害を受けます。しかし、被害の受け方には違いがありますので適材適所は当然必要です。つまり被害を受けでも大事な部 分の被害が急速に進行しにくい材の配置と工夫が必要です。薬剤を使わないことを前提にするなら、間違ってもシロアリの多い地域で集成材のようなものを構造 材にすべきではありません。いったん加害されると芯がないので丸ごと食べられてなくなってしまいます。 ● ウッドデッキのような木材を雨ざらしにする構造だと、必ず十数年後には腐りやシロアリ被害が生まれます。こうしたことを見越して定期的に手入れするのならいいのですが、そうでないなら少なくとも基本構造は木材ではなくアルミ建材のような金属にすべきです。 ● 乾材シロアリ生息地域では、屋根の破風、窓の飾り枠、外壁材など手の届かないところはできるだけ木材以外の材料にしたほうが無難です。 上記についても具体的にはシロアリ技術者に相談してください。 |